~ 食料自給率のお話 ~ その④:野菜の自給率
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~ 食料自給率のお話 ~ その④:野菜の自給率

ニッポンフードシフト公式note

1 はじめに

 今回は野菜の自給率についてお話します。野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維等が豊富に含まれた重要な栄養供給源であり、私たちの生活に欠かせない食材です。近年の健康志向の高まりから、野菜の効能や栄養に関心が集まっていますが、その歴史、生産や消費の動向、そして自給率についてご紹介していきます。

2 日本で栽培されている野菜

 現在、日本では様々な野菜が栽培されており、農林水産省の統計で生産量等が把握されているものだけで約90品目にのぼります。ですが、日本原産のものは、やまのいも(自然薯)、わさび、みつば、みずな等それほど多くはなく、私たちが普段食べている野菜のほとんどは、欧米や中国大陸から日本に持ち込まれたと言われています。
 全国的に流通し、特に消費量が多い野菜を例として見てみますと、だいこん、さといも、ねぎ、きゅうり、なすの5品目は縄文から平安時代にかけて渡来したとされ、ばれいしょ、キャベツ、ほうれんそう、トマトの4品目は江戸時代に、にんじん(西洋種)、はくさい、レタス(結球種)、たまねぎ、ピーマンの5品目は明治時代以降に日本に伝わったと言われています。(*1)
 日本に導入された経緯は様々であり、平安時代には遣隋使や遣唐使を介して仏教とともにごぼう、にら、さやえんどう、らっきょうといった中国やインド、ペルシャなどの作物が、戦国時代から江戸時代には南蛮貿易によってセルリー、アスパラガス、スイートコーン、さやいんげん、パセリといったヨーロッパや新大陸産の作物が日本に入ってきたとされています。明治維新以降には、政府がカリフラワー、ブロッコリー、クレソン等の欧米諸国の作物を積極的に導入・普及させました。(*2)
 こうして持ち込まれた野菜は、日本の気候・風土や日本人の嗜好になじむよう品種改良を重ねて栽培が広がりました。品種改良は公的機関だけでなく各地の農家・民間育種家の手によっても行われ、病気に強く味の良い品種が年々改良されることにより、私たちの食卓に様々な野菜が並ぶようになりました。

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3 野菜の自給率

(1)需要面での変化

 野菜の1人1年当たり消費量は、昭和43(1968)年までは増加していましたが、その後減少に転じ、令和2(2020)年にはピーク時に比べて約3割少ない88.5kgとなっています。

(図1)野菜の1人1年当たり消費量の推移

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 品目ごとに見てみると、トマトやピーマンのように、食生活の変化によって1人当たり消費量が昭和40(1965)年の2倍程度まで増加している野菜もありますが、漬物野菜であるだいこん、はくさい、きゅうり、なすは4~6割減少しており、これが野菜全体の消費量(重量)の減少に繋がったと考えられます。

(図2)野菜の消費の変化(昭和40(1965)年=100とした消費量)

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(2)供給面での変化

 国内生産量が多い野菜としては、キャベツ、だいこん、たまねぎ、はくさい、トマト、レタス、にんじん、ねぎ、きゅうりが上位に並びます。国内生産についても、高度経済成長期の1960年代から1980年代半ばにかけて、人口増加による需要の拡大や施設園芸の拡大を背景に生産量が増加しましたが、昭和57(1982)年の1,699万トンをピークに、農業者の高齢化や労働力不足、漬物野菜の需要減少などにより減少の道をたどり、令和2(2020)年の生産量は1,147万トン(ピークに比べて約30%減少)となっています。
 減少の大部分は、漬物野菜であるだいこん、はくさい、きゅうり、なすが占めており、その中でも、だいこん、はくさいは重量野菜で収穫作業の労働負担が大きく、農業者の高齢化等とともに生産量が大きく減少しました。一方で、生産量が増えている野菜もあり、サラダや炒め物に合うブロッコリーや小松菜などは、収穫作業の労働負担も小さく、需要の伸びに応じて生産量が増えてきました。このように、需要が伸びている野菜に生産を転換して収益の向上を図る努力によって、同じ期間(昭和57年から令和2年の間)に野菜の産出額は20%程度増加しています。

(図3)野菜の国内生産量、輸入量、自給率の推移

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 輸入については、食の簡便化などのライフスタイルの変化、円高やデフレの影響により、1980年代以降、スーパー、コンビニ等で販売されるカット野菜や冷凍野菜、外食チェーン店による大量・計画仕入れの業務用野菜の需要が拡大し、輸入量は近年300万トン程度で推移しています。スーパーの野菜売り場に並んでいる野菜はほとんどが国産ですが、加工・業務用野菜では輸入が約3割を占めていると言われています。
 このような生産・消費の変化に伴い、野菜の自給率(重量ベース)は、昭和40年度には約100%でしたが、近年は80%程度で推移しています。

(3) カロリーベースの自給率への寄与度が大きい野菜

 野菜は比較的カロリーが低く、例えば葉物野菜のレタスでは100gあたり11kcalしかありません(お米は342kcal、牛肉は約260kcal)。このため、カロリーベース食料自給率37%のうち野菜による寄与度は約2%となっています。
 また、重量当たりのカロリーだけを見ると、にんにく(100g当たり129kcal)やえだまめ(同125kcal)などが比較的高いですが、これらは生産量(重量)がそれほど多くはありません。国内生産量が多い野菜の中で重量当たりのカロリーも高いキャベツ、たまねぎ、だいこん、にんじん等の重量野菜は、カロリーベース食料自給率への寄与度が大きく、これら4品目だけで国内で生産された野菜全体のカロリーの4割程度を占めています。

(4) 生産額ベースの自給率への寄与度が大きい野菜

 一方、野菜は、農産物全体の産出額の約4分の1を占める品目で、生産額ベース食料自給率67%のうち野菜による寄与度は約15%となっています。
 重量当たりの単価(生産者価格)だけ見ると、にんにく、しそ、アスパラガスが1,000円/kgを超えて高いですが、これらは生産量(重量)が多いほうではありません。国内生産量が多い野菜の中で単価も300円/kg前後と高めのトマト、ねぎ、きゅうりや、単価が1,000円/kg超で生産量も一定程度あるいちごが、生産額ベース食料自給率への寄与度が大きく、これら4品目だけで野菜の国内生産額の3割程度を占めています。

(5) 輸入量が多い野菜

 輸入量が多い野菜は、生鮮品では、たまねぎ、にんじん、かぼちゃが多く、たまねぎが全体の3割強を占めます。たまねぎやにんじんは、加工原料用や業務用で多く使われています。
 例えば、カット用のにんじんであれば加工歩留まりが良い大型規格のものが好まれ、国産の大型規格のものが不足しがちになる4~7月の時期に輸入が多くなります。また、たまねぎは比較的長期間貯蔵が行われ保存がきくこと、たまねぎをむく加工などに手間がかかることから輸入の需要が高くなっています。
 その他、加工品として、トマト(ピューレ、ジュース等)、スイートコーン(冷凍、缶詰)、にんじん(ジュース)などが輸入されていますが、食料自給率の計算では、これらも生鮮品の重量に換算して輸入量に計上されています。

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4 自給率向上に向けた取組み

 高度経済成長期の食生活の変化により、野菜の食べ方は、漬物や煮物だけでなく、サラダや炒め物などバラエティが大きく広がりました。その結果、漬物として多くが消費されていただいこん、はくさいなどの需要が減少し、サラダや炒め物などに合うトマト、レタス、ピーマン、ブロッコリーなどの需要が増えましたが、生産者は、こうした変化に対応して消費者に求められる野菜の生産に取り組んできました。
 また、日本で栽培されている野菜の由来について最初にお話しましたが、ロマネスコ、ズッキーニ、パプリカなど、近年まで日本ではなじみのなかった新しい野菜を作るチャレンジは今も続けられており、一方で、日本古来の伝統野菜を作る取組も各地で進められています。こうした生産者の取組によって、色とりどりの美味しい野菜が毎日私たちに提供されています。
自給率という点では、重量野菜であるだいこんやはくさいの生産量が減少したこともあり、重量ベースの野菜の自給率が減少してきていますが、消費者が求める野菜への生産の転換を進めたことで、農業全体の産出額に占める野菜の割合は昭和40年度の12%から25%へと倍増し、野菜は生産額ベースの自給率を支える重要な品目となっています。
 野菜の自給率向上に向けては、需要が拡大する加工・業務用野菜について輸入品から国産品への置き換えを図ってくことが重要です。
 具体的には、加工・業務用に強く求められる供給量と価格の安定に応えるために、南北に長い日本列島の気候差を活用して、国内産の野菜が1年中市場に上るよう複数の産地によるリレー出荷を進めています。また、新技術の導入による機械化一貫体系を導入することで、労働時間の短縮などの低コスト・省力化を図っています。
 このように、消費者や実需者のニーズに対応した野菜を安定供給する産地づくりが野菜の自給率の向上につながるものと考えています。

(出典)
1 板木利隆「からだにおいしい野菜の便利帳」、2010年
 独立行政法人 農畜産業振興機構HP
2 安達巌「縄文~現代まで たべもの伝来史」、1975年
 鵜飼保雄・大澤良「品種改良の日本史 作物と日本の歴史物語」、2013年

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