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学生が社会貢献型インターンシップで直面する一次産業のリアル!「クラダシチャレンジ」でフードロス削減と地方創生を自分ごととして捉える[後編]

フードロス等、食や農における社会課題の現状を目の当たりにしたことをきっかけに、「もったいない」を価値に変え、日本で最もフードロスを削減する会社を目指して2014年に創業した株式会社クラダシ様。

廃棄されてしまう可能性のある商品を市場に提供する1.5次流通の創出など、様々な角度から社会貢献につながる取組を展開されています。

今回は後編として、社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」(以下、クラチャレ)で今年初開催したピッチイベントの優勝チームへのインタビューと、クラチャレの今後について紹介します。

前編はこちらからご覧ください。


2.優勝はグループ5!クラチャレ後も継続的に地域と関わっていたい、そんな想いを込めた「クラチャレ拠点KCB」とは?

和歌山県すさみ町でスルメイカ漁、京都府京丹波町で丹波栗の収穫作業を体験されたグループ5の皆さん。クラチャレに参加したきっかけや、参加してからの変化、そして未来のクラチャレの参加者に向けたメッセージなどをお聞きしました。

グループ5の皆様
(左から、長谷川 杏奈氏、各務 真帆氏、柳田 宙輝氏、板垣 真夢氏、森 輝氏)

―皆さんは、大学やお住まいも違って、色々な地域から参加しているとのことですが、今回クラチャレに参加されたきっかけについて教えてください。

【インタビュー内容】
柳田氏:自分は、大学ではアントレプレナーシップ(起業家精神)学部に在籍しています。初めて、クラチャレを知ったのは、大学でクラダシの取締役の方と面識がある学生が大学のSNSで告知しているのを見たことがきっかけです。元々大学では、西会津の米を東京でブランディングするという活動を行っているので、生産の現場を知るということは自分たちの活動とマッチしているのではないかと思い、参加を決めました。

長谷川氏:私は管理栄養士を目指して勉強をしているのですが、授業を受ける中で、食材や食品を取り巻く現状を実際に自分の目で見てみたいと思うようになりました。そんな時に、キャリア支援をしてくれる先生からクラチャレについて教えていただいて、応募してみることにしました。

各務氏:私はフードロスとかフェアトレードといった社会問題に感心があって、そうした問題に直接的に貢献できたり、現場を体験できるようなインターンはないかなとインターネットで探していました。それで、たまたまクラチャレを見つけて、応募したのがきっかけです。

板垣氏:自分は今、大学3年生で経済科学部に在籍しています。元々、ボランティア活動などに参加したいという思いがあり、たまたま見つけたクラチャレに応募しました。大学で勉強していることと食や農という分野については、直接的な関わりはあまりないと思いますが、何か新しいことにチャレンジできるような、ワクワクした気持ちもありましたね。

森氏:自分もアントレプレナーシップ学部に在籍しており、普段は食や農とはあまり接点のない、詩を書いたり、小説を書いたりといった創作活動をしています。大学を卒業するにあたって、これまでに経験したことのないことにチャレンジしておきたいと思っていたタイミングで、クラチャレと出会いました。農業や漁業といった、自分とは全く違う分野にチャレンジしてみたいと思ったことが応募への大きな後押しとなったと思います。

―様々なバックグラウンドを持っている皆さんが集まって今回のクラチャレに参加されたんですね。同じグループになったときは、はじめましての方が多かったと思いますが、皆さんどのように交流を深めていったのでしょうか。また、クラチャレに参加して、印象に残っていることがあればお聞かせください。

【インタビュー内容】
柳田氏:このメンバーはオンライン上では一度会いましたが、リアルに対面できたのは、最初のインターンシップ先であるすさみ町でした。みんなとの関係性もあまりない中スタートしたので、現場作業を通してお互いのことを知りながら、チームワークを深めていった感じでした。食に興味があったり、そうではなかったりと、色々なメンバーがいますが、共通して社会課題などに興味があったので、すぐに意気投合できましたね。
体験する中で、楽しかったことは、すさみ町でのスルメイカ漁ですね。実際に漁に出てみて、4時間で3匹しか釣れなかったこともあり、自然を相手にする水産業の難しさを感じました。釣ったスルメイカは、そのまま船上で干していくのですが、干されるイカよりも自分たちの方が船上にいる人数が多い状況もあったくらいです。それと対峙されている漁師の皆さんは、本当に素晴らしいし、こうやって自分たちの食を支えてくれているんだと、現場で体験したからこそ改めて、ありがたさを感じました。
実は、自分たちがお世話になった漁師の方は、5年ほど前にすさみ町へ移住された方なんです。そこで事業を立ち上げられて、東京に未利用魚のシイラなどを卸したりしていらっしゃるのですが、その活動を見ると「僕たちにも何かできそうだ、というか何かできるのでは?」と思わせてくれるような人でした。「いつでもきていいし、僕の家にも好きに泊まっていいからね」と言ってくれるくらい本当に良くしていただいて、今では第二の故郷、第二の家族というほどの存在です。
今も、東京で色々とご一緒できる機会もありますし、そういったご縁があったことが、クラチャレに参加した一番の醍醐味だったと思います。

すさみ町での体験

―インターンシップ先では様々な貴重な体験をされてきたと思いますが、逆につらかった経験などは、何かありましたか。

【インタビュー内容】
柳田氏:一番は、一次産業のリアルな過酷さを痛感したことです。特に、京丹波町での丹波栗の収穫体験では、繁忙期に自分たちが行ったことに加え、ここ数年で一番の大雨にも遭遇し、とっても忙しかったです。それでも、大雨でびしょびしょになりながら毎日栗を拾いました。そういう環境も重なって、ちゃんと作業に向き合えず、生産者さんから「もう来なくていい」と怒られてしまうような場面もありました。中々、休む暇もなく、精神的、肉体的にも疲弊していて、ふと「これを僕たちは1週間やらないといけないのかな?」と思ってしまった瞬間もあって…。クラダシさんや現地でサポートしてくれていた市役所職員の方に、本当にきついと相談したこともありました。でも、「これがリアルだよ」と言われ、自分たちの農作業に対する考えの甘さと同時に、一次産業における現状を思い知りました。
そういった体験をしたことで、「これほど大変な状況なら、逆にわずかな力でも自分たちでできることがあるのでは?」という思いになったんです。そこで思いついたのが、「クラチャレ拠点KCB」です。KCBは、クラダシチャレンジベースの略で、「学生が届ける地域の想いと物語」という意味が込められています。作業の効率化や未利用素材の収益化などに向けて、学生・クラダシさん・地域が三位一体となって、コラボレーションすることで、クラチャレ後も継続的に関われる仕組みの構築などをピッチで提案しました。
生産者さんとも、クラダシさんや市役所職員の方も入っていただいたおかげで、正面から向き合って、自分たちの想いなども伝えながら、お互いに理解を深めることができました。今では、そんな体験も良い思い出になったと思います。

京丹波町での栗の収穫作業

―現場では、楽しかったことも苦労した経験もあったとのことですが、クラチャレに参加する前と参加した後で、食や農に対する意識や行動の変化など、何か感じたことはありましたか。

【インタビュー内容】
森氏:これまで釣りや農作業などは一切経験したことがなく、特にスルメイカ漁では、日差しも強く、船酔いもしてしまいコンディションが最悪でした。ですが、そういった苦労を経験したからこそ、スーパーで目にする食材や、実際に自分が購入する食材に対する視点が大きく変わりましたね。例えば、食材を手に取った時に、このスーパーに並ぶまでには、どれくらいの人たちが関わっていて、その食材に対する価値、労力や、時間などはどれくらいだったのだろうと、食材への想いをこれまでより重く感じるようになりました。

長谷川氏:現在の日本の食事情において、例えばお魚などは輸入に頼っている場面も多いかと思います。体験中に、普段は捨てられてしまう未利用魚のシイラを食べる機会があったのですが、捨てられてしまうお魚なのに、こんなに美味しいんだと驚きました。そこで初めて、国産食材の可能性は無限大なんだということに気づきましたね。元々食に興味があるからこそ、今の食と農の現状や未利用魚の存在など、自分の力で発信していきたい、行動に移していきたい、という想いが生まれました。

各務氏:私はスルメイカ漁の途中で熱中症になってしまったり、京丹波でも髪の毛が絞れるくらい雨に打たれてびしょ濡れになりながら作業をしたのですが、そういう漁業や農業の過酷さをリアルに知れたというのは、大きな経験となりました。
実は、京丹波でのインターンが終わった後に京都市のモンブラン屋さんに行ったら、自分たちが収穫した栗が使われていたんです。高価なモンブランでしたが、どれほどの労力がかかっているのかは、自分が実際に体験したからこそ分かるので、味は格別で、世界で一番美味しいモンブランでした。クラチャレに参加したことで、生産者の方々や食材に対する感謝の気持ちを深く実感し、適正な価格とはどういうことなのか、考える機会となりました。

インターンシップ先での様子
(左:漁師さんからシイラの捌き方を教えてもらっているところ、右:雨の中での収穫作業)

―今後の進路や、挑戦してみたい事など、クラチャレに参加したことによる、変化があった方はいらっしゃいますか。

【インタビュー内容】
板垣氏:自分は経済科学部の3年生なので、ちょうど今後の進路について向き合わなければならないという時期の中でクラチャレに参加しました。これまでは、金融関係などを検討していましたが、すさみ町での経験から、「一次産業に携わりたい」という思いもでてきたんです。やっぱり、一次産業の知らなかった部分を知ることができたことが大きな気持ちの変化につながったと思います。これまでは、生産者の方や漁師の方に食生活を支えていただいている意識や実感がなかったので、今度は自分が支える側に回りたいと思うようになり、食に対しての意識がさらに高まるきっかけとなりました。

柳田氏:僕は、このクラチャレで生まれたリレーションシップや、自分たちがピッチで提案した内容である集大成を無駄にしないように、すさみ町で出会った方と一緒に実際に取組をスタートしています。具体的には、一緒にお茶漬けの開発をしていて、福島県西会津町という地域で関わっている生産者の方とも連携をしながら、すさみ町の魚から取ったダシと、西会津町のお米を使ってお茶漬けを作ったりしているんです。今後は、冷凍のパッケージを作って、ちゃんと物流に乗せられるぐらいのロットを作れるようにしたいと思っています。
そして、自分たちが考えた「クラチャレ拠点KCB」をここで終わらせないためにも、東京にいながら地域交流して他の地域の名産品も巻き込みながら、様々な地域課題の解決につながるような商品を生み出していけたらいいなと思っています。

自治体及び生産者さんと連携して開発したお茶漬け

―今後も多くの学生がクラチャレに参加していくと思いますが、そんな方々へ向けて、最後にメッセージをお願いします。

【インタビュー内容】
長谷川氏:「地方創生」や「インターンシップ」と聞くと難しそうに思うかもしれませんが、少しでもそういった分野に興味があったり、何かやってみたいという思いがあるなら、ぜひトライしてみて欲しいです。もちろん楽しいことだけではないと思いますが、本当に色々な体験がでるので、学生のうちにそういった体験ができるというのは貴重だと思います。

森氏:自分は、専攻している学部もそうですし、好きなことは詩や小説を執筆することなど、食や農という分野とは離れていたので、正直なところクラチャレの参加者として選ばれるとは思っていませんでした。クラチャレは、課題の提出や面接を経て、参加者を選考していくのですが、最初に出す課題では、食や農に遠いからこその視点として、ちょっと変わったことを書いてみたんです。その結果、自分のような別の視点を持っている人間を入れることで、良い反応が生まれるのではないかと期待して選んでくださったみたいなんです。何が言いたいかというと、地方創生に興味がある方はもちろんですが、これまで経験してこなかったことにチャレンジしたい人にも門戸は開らかれているということを伝えたいです。自分自身もとても貴重な経験をすることができたので、これまでにそういった経験がなく、参加への不安を感じる方には特にトライしてみてほしいです。

柳田氏:ここまでリアルな実践ができるインターンシップって、他にはないと思うんです。多くのインターンシップは、あくまで体験のみという印象ですが、クラチャレは、体験ではなく実践ができるインターンシップだと思います。自分が実際に農家、漁師になって1週間を過ごすっていうプログラムは他にはあまりないと思うんです。地域やその仕事をリアルに経験して、将来を考えるきっかけにしたいと思っている方には、ぜひ参加していただきたいですね。あとは、社会課題など同じような分野に興味がある方が多く参加され、一緒に様々なことを乗り越えるので、大学やこれまでの友達とは違った関係性の同期にも出会えるし、地域の方とのつながりも生まれるので、人生が豊かになるきっかけにもなるんじゃないかと思います。

各務氏:私は、今後社会人になるうえで、様々な視野を広げたいと思っている人に参加して欲しいです。農業とか漁業のリアルな現場や課題などを自分の目で見て、知ることができる機会って、あまりないと思いますし、その地域の方たちからもたくさんの刺激をいただきました。このような貴重な経験ができるインターンシップをぜひ活用してほしいと思います。

板垣氏:自分は農業や漁業に興味のない人に、ぜひ参加してほしいです。過酷さを知ることもいい経験になりますが、それ以上に人間関係が大きく広がるっていうのは、経験して本当によかったと思う点です。農家や漁業の方はもちろん、この5人のグループメンバーも、大学や学部、住んでいる地域も、個性や趣味も全然違う。だからこそ、話をすることで見識が広がったと思います。このような中々できない体験を、このクラチャレを通して経験してほしいです。

グループ5の皆様

クラチャレをきっかけに、学生や自治体様の背中を押し続けたい

今年度のクラチャレは、体験先を1チーム2地域に行ったり、ピッチアワードを開催したり、新たな取組を展開されてきました。その反響や、今後の目標について、クラダシ様にお聞きしました。

【インタビュー内容】
クラチャレは、私たちの想いだけでは開催できるものではありません。自治体の皆さんからのサポートや地域課題の解決に向けた熱意があってこそ成り立っています。
嬉しいことに、クラチャレ終了後も旅行でその地域や体験先に何度も訪れている学生もいますし、関係人口の創出にもつながっているという声を自治体の方からも聞いています。その他にも、クラチャレを実践してみて、他の農業体験やインターンシップにも積極的に取組んでみようと検討している自治体様もいらっしゃったりもするので、この取組を通して「新しいことをやってみよう!」という気持ちを持っていただけたことが、本当に良かったです。

また、今年は100名以上を集めて、ピッチアワードを開催できたことも「やって良かった」と思っています。学生にも人前で発表する機会や、皆が真剣に考えた提案内容を聞くことで、新たな学びを得られる場も作れましたし、貴重な経験となったのではないかと思います。ピッチ後の交流会では、自分たちが体験した地域以外の自治体の方たちとお話する機会を提供できたことも、学生にとって今後の進路の助けになったりなど、有意義な時間となっていれば嬉しいですね。

今後はクラチャレを継続すること、そして今年は新たな取組ができたので、これからも新しい挑戦を続けたいと思っています。ありがたいことに、今年は募集人数数に対して応募者数が2倍だったので、来年度からは5倍くらいの応募がくるようにもっとたくさんの学生さんに興味を持ってもらえるような取組にしていきたいです。それには、学生に様々な貴重な体験を提供できるように、自治体様にも「うちでクラチャレやってよ!」とどんどん言っていただけるような魅力的な、求められるプロジェクトになっていきたいと考えています。

【サービス紹介】

【クラダシチャレンジ】