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一粒のコーヒーからはじまる持続可能な世界の輪[Vol.2]

1957年の創業以来、「コーヒーを、どこまでも。」を企業理念に、コーヒー豆の選定から商品の販売までコーヒー一筋で展開してきた三本珈琲株式会社様。

おいしさと安全品質を追求したコーヒーから、関わるすべてのひとにちょっとした幸せを届けるために、食品ロスの削減やコーヒー豆の副産物を有効活用した製品の開発等、持続的な世界を一粒のコーヒーから創出する取組に尽力されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの、世界の子ども達への支援を通して持続可能なコーヒー事業を目指す取組について紹介します。


コーヒー原産国の発展を支える、学校給食の支援

これまでも持続可能なコーヒー製造を目指した取組をされてきた三本珈琲株式会社様。今回は、製造部門統括本部 サステナビリティ推進室 室長 正木 陽子氏に世界の子ども達への学校給食を支援を行う「SUNSHINE COFFEE PROJECT」について、取組を始められた背景や現在の活動についてお伺いしました。

三本珈琲株式会社
製造部門統括本部 サステナビリティ推進室 室長
正木 陽子氏

【インタビュー内容】
コーヒーに関わる事業者として、コーヒー製造を持続可能なものにするためには、コーヒー生豆の産地国とのつながりや支援は欠かせません。その一つとして、当社では国連WFP協会が行う「レッドカップキャンペーン」に賛同し、途上国の学校給食支援に寄付を行っています。さらに、レッドカップキャンペーンを推進するため、「SUNSHINE COFFEE PROJECT」を立ち上げました。このプロジェクトへの参加を通して、より多くの企業がレッドカップキャンペーンを支援できる、というものです。

当社がレッドカップキャンペーンに賛同するきっかけとなったのは、令和3年度の食品ロス削減推進大賞(主催:消費者庁)の授賞式でした。国連WFP協会と当社が共に賞を獲得したのですが、その出会いをきっかけに互いの活動内容を紹介する機会につながりました。そして、レッドカップキャンペーンが当社の事業と切っても切り離せない関連があることを実感しました。コーヒー産地国の多くがレッドカップキャンペーンの学校給食支援対象国なのです。赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までのコーヒー栽培に適した地帯をコーヒーベルトと呼びますが、その地帯に位置する多くの国が食料不足に苦しんでいる現状を知りました。レッドカップキャンペーンに賛同し、コーヒー産地国の未来に投資することは、同時に当社のコーヒー事業の持続可能性を高めるものであり、取組むべき理由は明白でした。

令和3年度食品ロス削減推進大賞における授賞式の様子(左)と連携先の皆さま(右)

現在、業務用商品の豆500gと粉100gの2種類、小売店用商品の1種類、ホテル等の客室に置く1杯抽出型の1種類を、レッドカップキャンペーンの対象商品として展開しています。レッドカップキャンペーンの対象商品には、味もさることながら、支援対象国の生豆を使用することもポイントとしています。商品が売れることで学校給食支援に繋がるとともに、産地の生豆産業にも貢献できます。
またSUNSHINE COFFEE PROJECTに参加する業務店向けのPB商品も提供しています。このような支援を通じて、これらのコーヒー産出国が発展し、さらにコーヒー事業にも還元されるような、良い循環を生み出したいと考えています。

最近では、社会貢献に対する意識を高く持つホテルやレストランも増えてきており、SUNSHINE COFFEE PROJECTへ興味を持っていただくことが多くなっています。また、各種メディア等のインタビューや記事を見て、商品の導入を検討したいと問い合わせをいただくことも増加しており、確実に支援の輪が広がっていることを実感しています。皆さんの身近にある一杯のコーヒーで、世界に社会貢献の輪が広がるという取組み易さが興味を持っていただく理由の一つと考えています。これによりこれまで全く取引のない業態の企業にも採用されるなど、新しいニーズにも繋がっています。

商品を開発する際には、コーヒー以外にもパッケージのデザインにもこだわりました。実際の写真を使うと印象がきつくなってしまうと感じたため、多様性を尊重しながらも、どんな場面にも合うようにと議論を重ね、現在のイラストのパッケージにたどり着きました。当社の他の業務用商品は、当社のロゴ入りのシンプルな共通デザインのパッケージを使用しているのですが、この商品をお店で使うときにもレッドカップキャンペーンを意識してもらえるよう、イラストを入れた専用のデザインにしています。国連WFP協会の方からもイラストが与える柔らかい印象のパッケージやPOPを高く評価いただいています。

レッドカップキャンペーンのイラストと対象商品のパッケージデザイン

学校給食で未来を創る新たな挑戦

SUNSHINE COFFEE PROJECTで幅広く実施されている、環境やSDGsに関わる活動についてお伺いしました。

1.SUNSHINE COFFEE PROJECTを通じた支援の広がり

【インタビュー内容】
レッドカップキャンペーンについて簡単にご紹介すると、エシカル消費に繋がる取組であり、赤いカップが目印のキャンペーンマークのついた対象商品を購入すると、その売上の一部が企業から国連WFP協会の途上国学校給食支援事業へ寄付されます。食品を主に対象としてきましたが、現在では日用品や旅行等のサービスにも拡大してきています。

このレッドカップキャンペーンは2011年に開始以降、約70社が参画し約2,000万人以上の子供に学校給食を届けていますが、まだまだ多くの支援が必要とされています。そこで、当社が参画する際、「SUNSHINE COFFEE PROJECT」を発足し、プロジェクトとして参加しました。当社のレッドカップキャンペーン対象商品の購入企業は、このプロジェクトの参加企業となり、商品の売上の一部がプロジェクトを通して国連WFP協会に寄付される仕組みで、こうすることでより多くの企業がレッドカップキャンペーンを知り、支援に加わることが可能です。また、プロジェクトに参加するホテルや喫茶店等に、SUNSHINE COFFEE PROJECTの一員としてレッドカップマークを付けてPOP等を掲示できるようにしました。多くの方が目にするメニューやPOPを使ってレッドカップマークを見てもらえるチャンスが増えることは、レッドカップキャンペーンの普及に貢献できる効果的な方法だと考えています。現在、100社以上の企業にSUNSHINE COFFEE PROJECTの商品を扱っていただいており、取引企業に対し新たな価値を持った商品の提供につながっていると感じています。

「SUNSHINE COFFEE PROJECT」の仕組み(上段)と
賛同企業が展開する店頭POP掲示の様子(下段)
(左から長野電鉄、メルキュールホテル札幌、羽田空港内 POWER LOUNGE、浄土ヶ浜パークホテル)

2.イベントを通したレッドカップキャンペーンの認知拡大

【インタビュー内容】
当社が行う様々なイベントでもレッドカップキャンペーンの紹介を取り入れています。Vol.1でも紹介した日本工学院専門学校蒲田校の学園祭「かまた祭」では、SDGsセミナーや当社の活動として紹介したレッドカップキャンペーンに先生や生徒の皆様に大変共感いただき、昨年に続き今年も学園祭で得た売り上げを国連WFP協会に寄付いただけるようになりました。
また、福島市のダイユーエイトMAX福島店で、子ども向け夏休みセミナーとして「お買い物でできるSDGs」をテーマにイベント開催した際には、レッドカップキャンペーンも含め社会貢献型のマークの付いた商品を子ども達に実際のお店の売り場で探してもらうことを企画しました。その他にも、様々な視点で食を通じた社会貢献に関するセミナーを開催し、取引先と一緒にSDGsに関わる啓発活動を実施していますが、同時にレッドカップキャンペーンの活動を伝えるようにしています。
イオン九州では、レッドカップキャンペーンの啓発活動の一環として、毎年10月の世界食糧デーに合わせて、店舗内にレッドカップキャンペーン参加企業の商品を大陳列するイベントを開催しており、当社も参加しました。
このように、様々な活動を通じて、当社の飢餓撲滅に対する想いを伝える努力を継続しています。

ダイユーエイトMAX福島店での啓発セミナーの様子(左)と
イオン九州レッドカップキャンペーンイベントの様子(右)

SDGs関連のイベントプログラムとして最近の目玉は、麻袋を活用したオリジナルバックつくりや、食品ロスコーヒー豆を使ってオリジナルブレンドをつくる体験です。麻袋を活用したオリジナルバックつくり体験では、専門学校の生徒さんにコーヒーの麻袋を使ったバッグを製作してもらい、子ども達がそのバッグにペイントをして自分だけのオリジナルバックを作ってもらいました。身近な生活で捨てられていた「もったいない」が、ひと工夫することで自分だけの素敵なオリジナル品に変身させることができることを伝える、よいきっかけになると感じます。

これまで紹介してきた中で、初めてレッドカップマークを見たという方でも、イベント後に子ども達がお買い物の際にレッドカップマークに注目して商品を探すようになったという感想をいただくこともあり、自分たちの活動がレッドカップキャンペーンの認知・理解の浸透にもつながっていると実感でき、大変嬉しく思っています。

「かまた祭」でのディスプレイ(左・中)と麻袋ペイント体験の様子(右)

SUNSHINE COFFEE PROJECTの今後

SUNSHINE COFFEE PROJECTの今後の展望についてお聞きしました。

【インタビュー内容】
SUNSHINE COFFEE PROJECTに賛同いただき、社会貢献ができる商品を選ぶ方々が徐々に増え、最近では当社の重要な戦略商品になるまでに至りました。選んでくださるお客様からの評価を感じられていることは、大変有難いです。

また、社外だけでなく、社内への影響も日々感じています。例えば、営業担当者が私よりも熱心にレッドカップキャンペーンをお客様に説明できるようになっているのを目の当たりにした際は、社内でのレッドカップキャンペーンの浸透をひしひしと感じました。今の時代、SDGsに貢献できる商品を提案できることは営業活動には非常に大きな強みであり、またお客様とのコミュニケーションが生まれるきっかけになっているようで、営業の武器として貢献できることは、社内にも大変よい効果だと感じます。

今後は、当社の事業が続く限りレッドカップキャンペーンを応援し、支援の輪を広げることで、貧困国の食べ物に困っている子ども達がゼロになって欲しいと思っています。レッドカップキャンペーン対象商品を当社の武器一つとして磨き上げ、お客様に選んでいただけるような企業努力を続け、レッドカップキャンペーンとともに当社の存在価値も高まっていく、広がっていく、それがコーヒーを扱う企業としてのコーヒー産地国及び世界の未来に対する責任の果たし方の一つの答えだと信じて、これからも取組み続けます。

レッドカップキャンペーンの人気商品
(右から、業務用500g豆、100g粉、小売り用270g粉、業務用一杯抽出型コーヒー)