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日本のお茶文化を発展させる企業のフードシフトな取組[Vol.2]

創業以来70年以上にわたり地元の契約農家さんと手を取り合い、日本の文化であるお茶を製造している鹿児島堀口製茶様。

茶の栽培(契約農家を含む約300ha)から荒茶製造、製品販売に至るまでの茶業一貫で経営され、アイデアを生み出す『発想力』と、実際の茶づくりに活かす『行動力』を原動力に、旧来の考えにとらわれず、常に新しい方法をお茶づくりに取り入れ、世界の高みを目指して走り続けていらっしゃいます。

今回は、ニッポンフードシフト推進パートナーのZ世代によるお茶本来の魅力を伝えている日々の挑戦を紹介します。


お茶の新たな価値を伝える機会を求めて

大隅半島のお茶の楽しみ方を味わい、感じられる場所を提案するために始めた「大隅茶全(おおすみさぜん)」。そこで働いていらっしゃる八木翔子氏に、入社、大隅茶全オープンの経緯、店舗運営などについてお聞きしました。

大隅茶全
八木翔子氏

【八木氏 インタビュー内容】
ここ宮崎県都城市は大隅半島ではビジネスの町として人を吸収する力のある地域となっており、そこでTERRASTA(テラスタ)という新しい複合施設が建設されるこことなりました。宮崎の名物である、牛肉、焼酎、お茶の3つをテーマにした店を構えたいというオーナーの意向があり、縁あって弊社に声が掛かかりました。近年日本ではお茶の消費量が減っており、業界含め我々としてどのように新しいお茶の価値を作り出して刺激を与えていくのかが大きな課題となっています。 TERRASTAでの機会は、まさに弊社が課題としていたお茶の新しい価値・新しい消費を模索したいニーズとマッチしたため、大隅茶全をスタートすることになりました。
会社としてはお茶の栽培、製造、販売までを手掛けておりますが、消費者に届くまでの間に人が介在するほど、自分達の思いが伝わりにくいと感じています。例えば、100種類以上のお茶を取り扱っているアメリカの輸入業者に対して、できるだけ化学肥料を使わない環境にやさしい弊社のお茶の価値を十分に伝えることは難しく、課題となっています。そこで、今回の大隅茶全では実際に消費者の方々と直接コミュニケーションがとれ、自分達の思いをダイレクトに伝えられる機会であることも、参画に至った理由となっています。

店内の様子

元々は介護の仕事をしていましたが、大隅茶全で働きたいと思い、昨年の8月に鹿児島堀口製茶に入社しました。小さい頃に、近所の布屋さんがお茶を淹れているのを見て、お茶についている美味しそうなお菓子への興味がきっかけとなり、小学校・中学校と茶道を習っておりました。お茶に興味があったことで、抹茶を扱っている堀口製茶に興味を持ち、また会社のYouTube動画を見て、今までのお茶に対する古いイメージが変わり、オシャレでかわいい商品に興味を持ったことが入社のきっかけとなりました。
最初はお茶に関する知識もなく、店の立ち上げに携わることも初めてだったため、皆さんに聞きながら毎日が新しい挑戦です。お茶の種類の多さや効能を新たに学び、また急須の種類、剪定など今まで知らなかった知識を会社に入ってから学んでいます。お店での主な業務は、お茶の販売とテイクアウトドリンクの提供です。販売業務は初めてだったので、レジ打ちも分からず、慣れるのも苦労しました。また、急須でお茶を入れるのも初めてで、温度によってお茶の味が全くの別物になってしまうため、うまみ・甘みを出すために勉強し、安定して提供できるまでは大変苦労しました。研修中には志布志市の本社にいましたが、分からないことは全て聞いて回り、メモを取り、調べて、それでも分からなければまた聞くことを繰り返し、今ではそれがとても良い思い出です。工場見学を通して、茶葉の種類の違いなどを肌身で感じることができ、現在の接客でうまく説明することができるようになりました。入社、店舗立ち上げ、運営の経験を通して、お茶の事を深く理解できるようになり、お茶のことがより好きになりました。毎朝、お店のメンバーにお茶を淹れることが楽しみとなり、幸せだと気づけたことが、お茶に携わることで発見できたとても大きなメリットです。

接客の様子

お茶を活用したフードシフトな活動

日々の業務や私生活において、「食」に関する考え方や取組についてお聞きしました。

1.お茶の様々な可能性を見出し、お客様にも紹介

【八木氏 インタビュー内容】
業務ではお茶のテイクアウト商品を扱っているため、廃棄する茶殻が多く出ます。そのまま捨てるのはもったいないため、お店のメンバー同士で残った茶殻の使い方などを話し合いながら、良かった方法を共有し、お客様にも紹介するように努めています。私自身も、残った茶殻をフリカケにしたり、炊き込みご飯に入れたり、電子レンジの消臭剤として活用しています。お店に来たお客様には、お茶は1回で捨てるのではなく、2~3回淹れることができることや、使い終わった茶殻は佃煮をはじめ様々な用途に使えることを紹介しています。お客様からは、お茶の活用方法に大変驚かれますが、好評を得られています。このような活用を通じて、大隅のお茶の良さを伝えられるとともに、フードロスの課題解決に少しでも繋がれば幸いです。

大隅茶全で提供されている茶葉

2. 食材や残飯に対する姿勢・考え方の変化

【八木氏 インタビュー内容】
個人的な「食」に対する考え方・活動としては、最近は健康に注意して食材を選び、使うようになりました。特に子供ができてから、子供が食べるものには気を付けて、いままでは通常の油を使っていたものを米油やココナッツ油に変えたりしています。また、この会社に入り、茶殻の有効活用などを考えるようになってからは、通常の食事についても残飯は出さないように調理の工夫をするようになりました。「食」に関する仕事をするようになってからは、日常における自分自身の食にも興味・関心が高まったことは大きな変化だと考えています。

店内の様子

今後のお茶の発展に向けた展開

今の業務やお茶を通じて今後やりたい事についてお聞きしました。

茶畑の風景

【八木氏 インタビュー内容】
私達の世代でお茶を急須で入れて飲んでいる人は少ないため、今後は大隅のお茶を通して、お茶の美味しさや心が落ち着く効果などの魅力を同世代にもしっかり伝えて、多くの方に楽しんでもらえるように努めていきたいです。普段のお茶は苦いというイメージがあると思いますが、急須でいれるお茶は、うまみ・甘味があることを知った時の感動が忘れられず、是非同世代の方々にも同じ感動を味わってもらいたいです。できればこの都城にある素敵なお茶の空間「大隅茶全」に来てもらい、様々なお茶の活用方法などを知り、何かを感じてもらえればそんなに嬉しいことはありません。

また、小学生や中学生など、若い時にお茶の良さを体験してもらえるように努めたいです。この近くには図書館があり、学生の方々も多くいるのですが、近くの塾に通っている中学3年生が大隅茶全のお茶のファンになってくださっています。今ではリピーターとなり、自分のお年玉で1万円の福袋も買ってくれるほどになっています。買った急須で祖母にお茶を淹れてあげたいという話を聞いて、若い方達にもお茶の魅力は十分伝わると確信できました。

個人としては、茶染めを生かした作品作りに興味があります。茶染めは素敵な柄を布に付けられるため、洋服などの形にできれば、お茶の良さを違った形で人々に伝えられると考えています。普段、ミシンで洋服を作ることが好きなので、いつか茶染めをした布でワンピースを作りたいです。

大隅茶全では最近、FacebookとInstagramを開設しました。そこでお茶の種類の多さ、お茶にあったお菓子など、様々なお茶の可能性や魅力を発信していきたいです。多くの世代に伝えていき、機会があれば若い人達にも急須でお茶を淹れて「ほっと一息」ついてもらえると大変うれしいです。

代表商品「抹茶ラテ」

大隅茶全 Instagram