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旅行会社が世界に発信する、食を通した日本の魅力

1980年に格安航空券の販売から事業をスタートし、「多くの人に世界に飛び出してほしい」という想いから日本の旅の変革を求め挑戦してきた株式会社エイチ・アイ・エス様。

現在は旅行事業を主軸に、旅のその先にある食に着目した、日本食文化や日本の食材との出会いをエイチ・アイ・エスが進出している世界60カ国のつながりを活かし、積極的に発信されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの、日本の生産者や事業者の海外展開に向けた支援について紹介します。


「食」への支援を通じて地域の活性化を目指す

快適な旅行をサポートしている株式会社エイチ・アイ・エス様。根幹である旅行事業にとどまらず、様々な領域への新規事業に挑戦されています。今回は法人営業本部 HIS FOODグループ 山岡正幸氏に、「食」に係る新規事業の取組についてお聞きしました。

株式会社エイチ・アイ・エス
法人営業部 HIS FOODグループ
山岡 正幸氏

【インタビュー内容】
当社は旅行事業を主軸としていますが、旅行で作り上げたリソースを活用し、「人」の往来だけではなく、「モノ」や「文化」を届ける取組を開始しました。その中で、旅と切り離せない「食」に注目し、生産者や食品事業者、消費者に寄り添いながら、日本の食を未来に繋げたいという想いから、「HIS FOOD PROJECT」を立ち上げました。

「HIS FOOD PROJECT」では、食材を生産過程において事前購入して生産者を支援する『クラウドファーミング』や、地球環境に配慮した畜産を支援する『畜産プロジェクト』、生産者や食品事業者の海外進出を支援する『HAJIMENO IPPO』に取組んでいます。

改めて日本の「食」に注目し、生産者や一次産業そのものを支えることで、販売促進やブランドづくり、課題の解決を通じて地域の活性化、さらには地方創生につなげていきたいと考えています。

クラウドファーミングに出品している商品

日本の「食」を世界へ届ける取組

「食」に関するエイチ・アイ・エス様の具体的な取組についてお伺いしました。

1.アンテナショップから日本の「食」の魅力を発信

【インタビュー内容】
日本の「食」をメインで扱うアンテナショップを、ドイツ、スペイン、イギリス、イタリアの4か国で6店舗展開しています。最初はドイツのベルリンから事業を開始しましたが、オープンまでは課題が多く、毎日が新しい事への挑戦でした。何をどのように仕入れをすればよいのか、手探りの状態から始まりました。また、日本食の輸出入の経験もなく、これまでのネットワークを駆使しながら、様々な問題・課題を一つ一つ乗り越え、進めてきました。現在、2023年9月に7店舗目としてフランスのパリで出店の準備をしているところです。

アンテナショップを始めるにあたり最も注力したのは、エイチ・アイ・エスがなぜ「食」に関する事業をするのか、ということが伝わるように工夫を凝らしてきたことです。例えば、日本食といっても、スーパーやコンビニで購入できるものを置いても意味がありません。当初よりコンセプトについては熟慮を重ね、「Food and Travel」をテーマに、「食」をきっかけに日本の観光地や産地に興味を持ってもらえるような食品や文化を紹介するアンテナショップを目指してきました。

ベルリン(左)とフランクフルト(右)のアンテナショップ

現地での評判は高く、どの店舗においてもお客様の7割以上は現地の方に来店いただいています。ただ小売店としてものを売るだけでなく、風呂敷の使い方や日本食の作り方等を実演したり、お客様が日本文化を知ることができる工夫もしています。

さらに、商品知識を十分に持ったスタッフが、お客様の話をしっかり伺った上で説明を行うということを徹底しています。店舗のスタッフは、元々現地で旅行事業に携わっていた社員のため、食という違う分野に挑戦してもらう必要がありましたが、日本の文化や食に興味のある人が多かったこともあり、今ではお客様が満足していただける情報を提供できるまでになっていると感じています。商品に関しても、例えば日本酒の場合、200銘柄ほどの商品を取り揃えており、お客様からの要望に応えられるようにしています。
これらの地道な取組の結果として、お客様の納得やリピートに繋がっていると思っています。SNSでの発信も行っておりますが、実際は口コミによって広がっている状況で、大変有難いです。

社内においても、当初はダンボールに囲まれて発送業務に追われていたり、どんな事業なのかと懐疑的に見られていましたが、店舗数が拡大し、実績が積みあがってきたことで、武器になる新しい事業だと感じてもらえるようになりました。

現地の人々で賑わっている店内の様子
(左:フランクフルト支店、右:ローマ支店)

2. 海外進出のサポートを通じた輸出拡大への貢献

【インタビュー内容】
アンテナショップを運営する中で、各国で築きあげてきた体制やネットワークの価値を改めて認識し、ヨーロッパでのテストマーケティングをサポートする「HAJIMENO IPPO 」というサービスを開始しました。食に関する知見を強化し、この事業を加速させるために、株式会社テロワール・アンド・トラディション・ジャパン様と共同体「Fooravel & Delivalue」を設立し、推進しています。

大手メーカーと違い、地域の生産者や加工業者が海外で商品を販売しようとしても輸出業務を担う人材や資金等が確保できないという課題がありました。そこで、まずは始めてみようと思ってもらえるよう手頃な価格でサービスを企画しました。やはり一番苦労した点は、サービスの価格設定です。事業の継続性を担保しながらも、お客様の要望に応えられる価格になるよう検討しました。社内でも繰り返し調整を行い、最終的に利用いただきやすい価格でサービスの提供を開始することができました。

「HAJIMENO IPPO」のサービス概要

これまで20商品の支援を実施しており、そのうち15~16商品は食関連です。その他、扇子等の伝統工芸品に関する問い合わせをきっかけに、雑貨も扱い始めました。食品に関しては、海外への輸出となるため賞味期限が3か月以上ある商品を対象としており、お菓子やゼリー等の加工食品、トマトジュース、酎ハイ、リキュール、日本酒等の飲料で活用いただいています。

サービスを利用した商品の中には、当社のヨーロッパのアンテナショップでの販売まで至った商品もあります。目標としては、当社のアンテナショップのみでなく、各地のバイヤーとの取引まで拡大できればと考えています。利用いただいた方からは、競合や価格帯等の詳細なレポートと対面での説明、次のステップに向けた相談等、丁寧な幅広いサービスで満足したというお声をいただいています。また、未知だったヨーロッパを身近に感じていただき、継続して輸出することを検討いただくことが私達の狙いでもあります。お客様から「もっとやってみたい」というコメントをいただくと、私自身も大変やりがいを感じます。

新しい事業のため、まだまだ認知されていない部分も多いと感じています。そのため、当社の旅行事業でのネットワークを活用し、各地でサービス紹介を継続して実施しています。最近では、農林中央金庫様等と連携させていただく機会もありました。今後、さらにサービスを利用いただく方が増え、日本の食の海外輸出に貢献できるよう取組んでいきたいです。

「HAJIMENO IPPO」で支援した商品

更なる拡大に向けた展望

ヨーロッパ、さらには世界に向けた取組に関して、今後の展望をお聞きしました。

【インタビュー内容】
欧州におけるアンテナショップでは、BtoCの小売事業として小さな商流をつくる地道な活動をしています。今年の目標は、BtoBのディストリビューターの領域へ進出することです。レストラン、小売店、ホテル等への展開は、商品の展開も大きく広がり、輸出量の拡大に直結します。まずは、現状の仕組みを着実に構築しつつ、大きな商流に拡大できるよう順次ステップアップを目指しています。まずは、種類の豊富な日本酒について、ロンドンで日本酒の専門家と協業しながら、BtoBへの取組を進めています。後発であるエイチ・アイ・エスから購入したいと思っていただけるよう、工夫を重ねているところです。

また、現在ヨーロッパで活動しておりますが、アメリカやアジア等の新たな地域にも展開を目指します。本業である旅行事業と並行しながら、中長期的に取組んでいきたいです。
失敗を重ねてやっとここまでたどり着いたので、この基盤を最大限に活用しつつ、今後もより多くの日本の生産者や事業者の為になるように拡大・推進していきたいです。

アンテナショップにおける代表商品「日本酒」


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