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もっちり食パンのパイオニアが目指す国産原料のパン!こだわりぬいた食材で日本の農業を応援![vol.1]

1922年、愛知県名古屋市で和洋菓子製造販売店として、創業したフジパン様。その後「品質のよいおいしい商品を一生懸命作り、真心を込めてお客様にお届けする」という創業当時からの使命のもと、「食」を通じてたくさんの人々においしいパンと笑顔を届けつづけています。「日本の農業を応援したい」との思いから、2022年9月には北海道産小麦や国産原料にこだわった新商品『北海道小麦』を発売。国産原料の消費推進を目指す取組に尽力しています。

今回は、ニッポンフードシフト推進パートナーの国産食材の魅力を伝える取組について、紹介します。


パンを新たな日本の食文化に

100年以上の歴史を持つフジパン様。創業の歴史から成長の経緯について、フジパングループ本社 専務取締役の浮須 裕氏にお聞きしました。

フジパン株式会社
専務取締役
浮須 裕氏

【インタビュー内容】
「これからはパンの時代になる」とパンに可能性を感じた創業者 舟橋甚重が、1922年に名古屋でパン・菓子製造販売の『金城軒』を設立しました。『金城軒』は、名古屋城の天守閣に輝く金の鯱のように、地元に愛される店にしたいという願いを込めて命名されました。しかし、当時の食文化はパンに馴染みが薄かったこともあり、パンだけでは生計が立てられず和菓子の製造も行い、自転車で売り歩いたそうです。

少しずつお客様の信用を得て売上を伸ばしながら設備の増強を行い、ついに1936年には混合機(ミキサー)、煉瓦積みのトンネル式パン焼き窯など、本格的な設備を備えた工場も操業しました。しかし、太平洋戦争によって製パン業者も統制下に置かれ、金城軒も操業停止に追い込まれました。それでも、パン作りへの想いは消えず、1945年に終戦を迎えると「パンを再び世に送り出そう」と家財道具を売って設備を揃え、パンの製造を再開しました。

1950年には、パンを主食とする完全給食の開始と同時に愛知県の学校給食用のパンを供給するようになり、1951年には『富士製パン株式会社』(現フジパン株式会社)を設立しました。そして、ブランド名を『フジパン』として、富士山のように日本一になりたいとの思いから富士山をイメージしたマークとともにパンの販売を開始しました。1952年には日本初のパンの完全自動包装を実現し、安全で衛生的な個包装のパンを発売しました。これはお客様に非常に喜ばれ、製パン業界で完全自動包装が急速に普及するきっかけとなりました。その後、関西や関東にも進出し、広くフジパンブランドを展開してきました。

創業当時と昔の工場の様子
(1922年創業 金城軒 [左上]、1961年豊明工場 [右上]、1951年富士製パン(株)松園工場 [下])

1993年には、フジパンの代表的な商品である日本人好みの食感を追求した『本仕込』を発売しました。フジパンの商品を手に取っていただくには商品力と知名度が不可欠と考え、食パン、食卓ロール市場で評価される他社にない食パンを目指して開発されました。「もっちり」は、今でこそおいしいパンの代名詞ですが、当時は「ふんわり・やわらか」な食パンが人気でした。ブームでは終わらない、本当においしいパンをどう作るのか、全国の食パンを調査し、製法を研究し試行錯誤を重ねた結果、ご飯のようなもっちりとした食感の食パンの開発に成功しました。機械による大量生産では成功しないのが定説だった『ストレート製法』(詳細については後述)を、大量生産でも安定した品質が得られる『本仕込独自のストレート製法』として確立したのです。こうして、今日まで続く『本仕込』が完成しました。

もっちり食パンの代名詞となった「本仕込」

使うのは国産原料のみ!国産にこだわった新商品開発への取組

北海道産小麦や国産のバター、砂糖など、こだわりの国産食材を使った商品『北海道小麦』について、お聞きしました。

1.国産原料にこだわった商品ができるまで

【インタビュー内容】
2022年9月、フジパンでは『北海道小麦』食パンを新たに発売しました。
私自身、フジパン歴は44年になりますが、実は10年前から5年間、北海道で仕事をしていました。農家や酪農家の方々が非常に大変な思いをして小麦やバターを生産する姿を目の当たりにし「日本の農業、酪農を守るためにも、国産食材の使用量を増やしていきたい」という思いが胸に沸き起こりました。そして、それを実現することが、自分の責任だと考えたのです。
フジパンは当時、国産食材の使用量があまり高くはありませんでした。近年、SDGsでも「持続可能な原料の使用」が謳われています。フジパンでも、できることから取組んでいかなければと思い、2022年年初に「北海道産の小麦を使ったパンを作る」と決めました。

さらに「せっかく北海道産の小麦でパンを作るなら、その他の食材も国産のものをどんどん使おう」と、これまで手を出していなかった油脂も国内産のものを導入することにしました。日本の酪農家さんたちが大変な苦労をして作り出したバターは、日本人が使わなくては、と。こうして誕生したのが、最初の『北海道小麦』でした。

国産原料にこだわった食パン「北海道小麦」

社内では、こうした取組を「難しいのではないか」と思われていました。国産小麦というと、大量生産する製品の原料としては取り扱いが難しいのではという先入観から「うまくできないよね。品質が一定の外国産小麦の方がいいよね」というような声も正直なところありました。どうしても北海道産小麦を使ったパンを作りたい!との思いは消えず、関連会社である『ロバパン』では、北海道産の小麦を使った食パンをはじめ、菓子パンやさまざまなパンを製造しているのをあらためて知り、「北海道産の小麦を使っても、こんなものができるではないか!」と思ったことを覚えています。

小麦粉については、『きたほなみ』と『ゆめちから』の二種類の小麦を選定しました。『きたほなみ』は北海道の小麦生産量の約7割を占める、最も生産されている小麦の品種です。『ゆめちから』は北海道で初めて生産に成功した、超強力系の小麦。この2種類をブレンドすることで、『きたほなみ』の少しコシが弱い部分を超強力粉の『ゆめちから』がカバーし、食パンに最適な小麦粉ができました。

北海道産小麦の出穂期から成熟後期

次に製造方法ですが、当社が主軸にしている『本仕込』は「ストレート製法」という手法で、非常にもっちりとした食感のパンを焼きあげることができる方法。ただし、このストレート製法、実は大変難しい技術なんです。温度や、時間がちょっとでも違うと品質が落ちてしまう。だから、多くは「中種製法」と呼ばれる手法が採用されています。中種製法の特徴は、焼き上げるパンの品質がとても安定しているということ。そのため、工場で大量に生産する場合に、安定した、高品質のパンを作れるというのが、大きな魅力です。
『北海道小麦』はというと、中種製法を採用しました。では、本仕込のようなもっちり食感ではないのかというと、北海道産小麦の特徴を最大限に活かすことで、中種製法でも非常にもちもちした食感のパンができました。中種製法でもこの食感が実現できる、この発見は商品開発が大きく進むきっかけになりました。

そして、小麦粉以外の素材についても国産を使いたい。例えば、これまで油脂にはマーガリンを使ってきましたが、国産のバターを使えないかと考えました。油脂はパン作りに欠かせませんが、製造時の扱いやすさなどからマーガリンが使われることが多い。でも、バターにすると、生で食べたときはもちろん、トーストしても、本当にいい香りがするんですよね。こうして、北海道産小麦に国産のバター等、国産にこだわった『北海道小麦』ができ上がりました。

「北海道小麦」食パンのアレンジレシピ
(左から、サバサンド、厚焼きたまごサンド、ほくほくポテトサンド)

2.『北海道小麦』を人々に知ってもらうために ~市場への展開

市場への展開を考えたときに課題となったのは『北海道小麦』をいかに大量に、安定的に生産するかでした。それを実現させるための工場のラインテストが、『北海道小麦』一番の難所だったと言えるかもしれません。

開発自体ももちろん大変ですが、開発室で「ああでもない」「こうでもない」と日々試行錯誤しながら、製品を創り上げところまではできたとしても、そこでようやく誕生した新製品を、工場の大型ラインで量産したときに同様の品質を確保できるかが一番の問題です。これが非常に時間のかかる作業なんです。当社でこの食パンの生産を担当する工場が4つあるのですが、それぞれに足を運んで、製造して、試食して、ダメで、というのをひたすら繰り返す。本当に大変でした。

また、新商品を発売するにあたり、国産素材のアピール方法や、パッケージデザインにこだわりました。「フジパンが、国産食材にこだわっている」というところを一般のお客様や流通企業様にも理解していただき、その姿勢を評価していただけるようにと、2023年9月からは、ニッポンフードシフトのロゴも入れています。ロゴが入るようになってからまだ日は浅いのですが、北海道をイメージさせる白を基調としたパッケージに、赤いロゴがアクセントになっています。

「北海道小麦」のパッケージデザイン

現在『北海道小麦』は6枚切と5枚切、そして6枚切のものを3枚入れたハーフサイズを展開しています。最初は3枚入をおすすめしており、どのような商品か、お客様に体験していただくことが最初の一歩となれば、との想いが込められています。まずは、トーストせずに“生のまま”の『北海道小麦』を、一人でも多くのお客様に食べていただき、しっとりきめ細やかなもっちり食感を楽しんでいただきたいです。

今後の『北海道小麦』認知度アップ大作戦に向けた展開

『北海道小麦』について、これからどのように認知度を高め、お客様に手に取っていただくかが課題と語る浮須氏に、今後の展望についてお聞きしました。

【インタビュー内容】
社内では『北海道小麦』を販売するにあたって、営業の人たちからは「そんな高い食パンは売れるのか」という意見もありました。でも、社内からは「国産原料にこだわる商品を製造しているフジパンって、いいね」「多少高くてもおいしい、そこに価値のある商品を取り扱えるのは誇らしい」という声もありました。賛成と反対が入り混じった状態で、販売をスタートした感じでしたね。実際、価格的には『本仕込』よりも高価格ではありますが、しっかりとファンもついてくださっていると感じています。ニッポンフードシフトの取組のひとつに、適正な価格形成もありますが、まさにそこだと思うんです。高品質の国産食材を使っておいしいパンを作り、そこにファンが生まれるというのは、これからの日本の農業や酪農には欠かせないシステムだと思っています。

『北海道小麦』はまだまだ爆発的に売れているというわけではありませんが、安定して売上を伸ばしています。こうした結果は、私たちの取組姿勢を、お客様が評価してくださった結果だと感じますし、嬉しいです。しかし、品質で正しく評価していただくためには、やはり認知度は必要です。まだ発売したばかりの『北海道小麦』ですから、これからはSNS等を活用し、お客様の反応を確かめながら『北海道小麦』を多くの方に知っていただきたいです。

当社としては、値段が安いことばかりに重点を置くのではなく、おいしいパンをお客様に届けることが使命だと思っています。そのためにもお客様にこの美味しさと理由を知ってもらい、良さを納得していただきたいですね。そこからが、勝負だと思っています。

<ブランド担当の山中氏からのコメント>

フジパン株式会社
ブランド担当
山中 優奈氏

この食パンを初めて食べた時、そのしっとり感とやわらかさに驚き、このまま生食で食べていただける食パンだと直感しました。

パン食はお子様とのお食事で、メニューに取り入れやすく手軽ですが、「パンのミミが硬くて残してしまう」といったママからのお声をいただくことがあります。子育て中の忙しいママやパパに活用していただける食パンを目指してお客様のお声を活かし、生地のしっとりさや、やわらかさをより追求していきたいと考えています。

今後の北海道小麦はミミまでしっとりやわらかい特長を残しつつ、品質の安定した美味しい食パンとして展開いたします。


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