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国産へのこだわりから、じゃがいもの新たな価値を創出

1953年の創業以来、日本の「おやつ時間」をもっとおいしく、楽しくするような湖池屋品質にこだわった商品を創造してきた湖池屋様。

持続可能な社会を目指したSDGsへの取組をはじめ、生産するポテトチップスには国産じゃがいもを100%使用し、全国各地の様々な農家と歩み続け、地域創生にも貢献されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの、独自の高付加価値商品で人々の暮らしを豊かにする取組について紹介します。


湖池屋オリジナル商品で暮らしを豊かに

「ポテトチップス のり塩」や「カラムーチョ」など、多くのヒット商品で人々の食を豊かにしてきた湖池屋様。会社設立と成長の経緯、会社のパーパスなどについてマーケティング本部 広報部に所属する小幡和哉氏にお聞きしました。

株式会社湖池屋
マーケティング本部 広報部
小幡 和哉氏

【インタビュー内容】
当社は1953年に創業し、元々おつまみや贈答用のお菓子を販売していました。当時、ポテトチップスはまだ世に広まっておらず、戦後駐留していたアメリカ軍や、高級おつまみとして飲み屋で食べられている程度でした。そもそも米の代用として芋を食べていたということもあり、じゃがいもを美味しく食べようという発想がない時代でした。
しかし、創業者の小池和夫は、初めてポテトチップスを食べた時にその美味しさに感動を覚え、「世に広めたい!みんなに食べてもらいたい!」と思ったことからポテトチップスづくりを開始しました。

創業当時の社屋(左)と手作業でポテトチップスの試作をする様子(右)

じゃがいもは品種や産地によって味や形が異なるため、同じように加工をしても焦げてしまったり、味を均一にできなかったり、ポテトチップスづくりには多くの難しさがあります。そのため、当社は単にアメリカのポテトチップスをまねるのではなく、日本のお客様に喜んでもらえる、国産じゃがいもを使った日本のポテトチップスを作り上げるために、多くのノウハウを培ってきました。試行錯誤の末、1962年に『ポテトチップス のり塩』を発売し、さらに、1967年には国産のオートフライヤーによる量産化を日本で初めて行いました。その後、食生活の欧米化が進むにつれて、ポテトチップスの市場も拡大してきました。

量産化当時の板橋工場(左)と初代『ポテトチップス のり塩』(右)

このような中、1970年代には他の大手メーカーもポテトチップス市場に参入し、価格競争も激しくなりました。当社にとって厳しい環境ではありましたが、他社にはないユニークな商品を作るという原点に立ち返り、小池 孝(現会長)の陣頭指揮の下、新商品の開発に取り掛かりました。そして、辛くて美味しい『カラムーチョ』を発売し、世の中に大きなインパクトを与えました。当時、スナックの先進国であるアメリカ視察時に流行していたメキシコ料理の「辛味」に注目し、そこに日本人に好まれる「旨味」を取り入れたことが、このユニークな商品の開発につながりました。さらに、それまでのポテトチップスとは別ものであるということを印象づけた『カラムーチョ』というネーミングも、ヒットに繋がった要因と考えています。発売当初、辛いお菓子は珍しく、あまり受け入れられませんでしたが、コンビニエンスストアでの採用をきっかけに、若者の間で口コミが広がり、さらには「ポテトが辛くてなぜ美味しい」と訴求したTVCMも相まって、その後の爆発的なヒットに繋がっていきました。

発売当初の各商品

『カラムーチョ』発売後も、独自の商品開発を続け、『スコーン』、『ポリンキー』、『すっぱムーチョ』、『ドンタコス』などのヒット商品を世に出してきました。1990年~2000年頃には、飽食の時代となり、ポテトチップスなどのスナック菓子はあって当たり前のものとなりました。しかし、健康意識の高まりによるスナック菓子のイメージ低下、さらにデフレの影響による価格競争により、当社も苦しい時期を経験しました。
現在、2016年のリブランディングを経て、再び創業の原点に立ち返り、湖池屋の商品だから食べたいと思ってもらえる付加価値のある商品づくりに徹しています。その結果、『湖池屋プライドポテト』が生まれ、『ピュアポテト』、『湖池屋ストロング』などのヒット商品を生み出してきました。

業界内外の環境の変化により、様々な苦難を乗り越えてきましたが、会社のパーパスである「食でくらしをゆたかに。」を実現するために、当社だからできる独自の商品を世に出すことを継続してきたことが、今日の事業を成り立たせていると考えています。

リブランディング後の最新商品

国産じゃがいもにこだわった商品づくり

独自のヒット商品を支える国産じゃがいもに対する取組や、SDGsに関するユニークな取組についてお聞きしました。

1.国産じゃがいも100%へのこだわり

【インタビュー内容】
ポテトチップスの量産化においては、単に生産ラインを機械化するだけでなく、じゃがいも自体の品質が安定しなければ美味しいポテトチップスを生産することはできません。初めて量産化を図った際にも非常に多くの困難がありましたが、一度生産ラインが完成すれば微調整での運用が可能となります。一方、ポテトチップスに適した品質のじゃがいもを、通常通りに市場から仕入れるだけでは安定的に確保することは困難です。そこで、消費者からのニーズも高い国産のじゃがいもを安定的に使うことができるよう、1968年頃から契約栽培を開始しました。現地での生産については各地の生産者にお任せしつつ、当社として契約農家さんのサポートや、モチベーションアップに寄与できるコミュニケーションに徹しています。

じゃがいも畑の風景

北海道今金町のじゃがいもを使用した『最高級プライドポテト』や、芋の品種ごとの食べ比べができる『ピュアポテト ブランド芋くらべ』では、じゃがいもの品種の違いによる味や食感を味わうことができ、お客様にも大変好評をいただいています。このような商品づくりも、各地で様々な品種を栽培している生産者の方がいるからこそ実現できます。生産者の方々も、高齢化が進む中で、じゃがいもにも実は多種多様な品種があることを広く知ってもらい、じゃがいも自体の価値を高めることで、魅力的な農作物として若い生産者の方にも興味をもってもらいたいと考えておられます。そのため当社は、品種、産地、育て方など様々な違いによって美味しさにも違いがあることを、ポテトチップスを通じてできるだけ多くの方に伝えるように努めています。

様々な芋の品種を食べ比べできる「ピュアポテト ブランド芋くらべ」

2.ポテトチップスをきっかけとした地域貢献

【インタビュー内容】
2015年、オンラインショップの開設にあわせ、オンラインでしか買えない限定商品として特別なじゃがいもを使った『今金男しゃく ポテトチップス』を発売しました。この商品では、全国で0.3%しか生産されていない、北海道今金町の今金男しゃくを使用しています。デンプン量が多く、甘みとホクホク食感が特徴のじゃがいもです。
元々、今金男しゃくは家庭料理等に使う生食用であり、揚げると焦げやすくポテトチップスには適さないと言われていました。しかし、この非常に美味しいじゃがいもをポテトチップスにすることができれば、お客様に感動していただけるのではないかという思いから、これまで蓄積してきたノウハウを駆使し、今金男しゃくを使用したポテトチップスを完成させました。
お客様からは、じゃがいもの違いによってポテトチップスの美味しさがこんなにも変わるということに、大きな反響をいただきました。当社としても、ポテトチップスを通じてじゃがいもの付加価値を創出できた取組として大変満足しています。また、地域貢献にも繋がる取組としてTV等でも取り上げられ、今金町においても地域おこしの一環として、積極的に協力していただいています。

北海道今金町の「今金男しゃく」(左)と今金町のじゃがいも畑(右)

3.アニメを通じたSDGsへの取組

【インタビュー内容】
ポテトチップスをはじめとするスナック菓子事業において、若い人たちに湖池屋のファンになってもらうことは、将来に渡って新しいお客様を開拓する事に繋がるため、非常に重要です。また、お客様に付加価値を感じてもらうためには、美味しさに加えて、デザインやコミュニケーション、更に社会貢献への意識が重要になってきています。

そこで、社会貢献に対する意識の高い若い人が増える中、一緒にSGDsについて考える「湖池屋SGDs劇場」というアニメのテレビ放送やYouTube配信を2021年より開始しました。お菓子を楽しんでいただきながら、アニメを通じて若い人たちとコミュニケーションをする企画で、現在シーズン4まで制作・放送をしてきました。
「食でくらしをゆたかに。」という会社のパーパスの下、若い人たちとの接点づくりとして進めており、お菓子とアニメという一見関係のないものですが、異種のものを組み合わせると、意外性からインパクトを発揮できるのではという点に着目しました。また、この異種の組み合わせをすることによるインパクトの大きさを、社内で共有することでこの取組を実現できたと考えています。一緒に社会を豊かにしていく取組として、ファンの方々も巻き込みながら、地道に活動を広げています。

視聴者と一緒にSDGsについて考えるアニメ「湖池屋SDGs劇場」

「食でくらしをゆたかに。」の実現に向けて

湖池屋様のパーパスである「食でくらしをゆたかに。」を実現するため、今後取組んでいきたい事についてお聞きしました。

地域の取組に商品を通じて貢献したいという想いから開発された
「プライドポテト JAPAN」

【インタビュー内容】
国産じゃがいもにさらなる付加価値を付けること、そして『プライドポテト JAPAN』の継続した展開、また SDGsのアニメなどを通じた社会貢献を今後も続けていきたいです。
特に『プライドポテト JAPAN』は、生産地域の特徴を生かしながら、美味しい商品を世に出せるユニークな取組です。小豆島、神戸、熊本、京都、宗像、金沢といった各地域の人たちと一緒に『プライドポテト JAPAN』を広めることで、地域の課題解決に寄与できるものと考えています。そして、お客様と多くの接点をつくり、湖池屋の商品だから試したいと思っていただけるようなコミュニケーションを継続していきたいです。

また、ライフスタイルの変化に伴い、食生活も変化しているため、新しい食にフィットする商品も引き続き開発していきます。より簡単に栄養補給できる食品や、主食にも間食にもなる食品など、求められるニーズは時代によって変化しています。これまでと同様に、今までにない商品やあまり馴染みのない味など、独自の商品を世に出し、市場を牽引しながら、食を通じて社会を豊かにしていけるように努めていきます。

湖池屋の歴史や創業以来のこだわりを伝える体験施設
「湖池屋GOGO!ファクトリー(湖池屋九州阿蘇工場 併設)」