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農業の成長産業への貢献を目指す企業のフードシフトな活動[Vol.3]

農業の成長産業への貢献を目指し、日々活動するカゴメ様。

1899年の創業以来120年にわたり、日本の食を見つめ、新しい食のあり方を提案されてきました。「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」をブランドのありたい姿として、多様化した食のニーズに対応した商品を開発されています。

持続的成長と社会問題の解決を循環させるために、国内においては、加工用トマト生産者の減少への対策、最新技術を活用した生鮮トマトの大型施設栽培などにより、農業振興にも貢献されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの取組の第3弾として、Z世代社員の現在の業務や、食や農への取組・想いを紹介します。


これまでの経緯や食や農への取組・想い

契約農家とともに加工用トマトの栽培に携わる野菜原料部でフィールドパーソンとして働く林恵理子氏、そして“地産全消”をコンセプトとした野菜生活100の商品開発を担当している商品開発本部 飲料・食品開発部の草場 翼氏に、入社の経緯、現在の業務や食や農への取組・想い等をお聞きしました。

カゴメ株式会社
野菜原料部 フィールドパーソン
林 恵理子氏

【林氏 インタビュー内容】
子供の頃に両親が「カゴメトマトジュース PREMIUM」をよく飲んでおり、その影響もあって、トマトが大好きになりました。トマトの魅力は種類の多さ、色や形の違い、どのトマトを食べても味や食感が異なることなど、飽きがこない点だと思います。
大学では農学部で野菜園芸を専攻し、施設栽培のトマトに発生する芯腐れという病気について、その発生メカニズムや対策を研究していました。大学の研究を通して益々トマトが好きになり、トマトに関わる仕事がしたくて、カゴメに入社しました。

現在は、社内に10名ほどしかいないフィールドパーソンとして、各地の契約農家さんと国産トマトジュースの原料となるトマトの生産に取組んでいます。私は東北地方にいる40名程度の生産者と日々直接コミュニケーションを取りながら、当社のトマトの種苗の提供から、生産オペレーションの管理、営農指導、収穫スケジュール管理、品質のチェック、工場入荷までを一貫して行っています。
カゴメの加工用トマトは露地栽培であるため、環境変動の影響を受けやすいです。大学では施設栽培に関する研究をしていたため、農業というものはある程度栽培環境をコントロールできるものなのだと考えていましたが、現場に出てみて初めて農業の本当の難しさに気づかされました。よいトマトを作るためには、天候や土質など、その土地の環境情報を得て、それにあった指導を行うことが大切です。そのために、生産者のみならず、農協や自治体等とも連携して取り組みを進めています。

カゴメ株式会社
商品開発本部 飲料・食品開発部
草場 翼氏

【草場氏 インタビュー内容】
高校生の頃から食べることが大好きで「食」に興味があり、ゆくゆくは食品の仕事に携わりたいと考えていました。大学では農学部食糧化学工学を専攻し、分析が難しい食品成分の新しい分析方法を研究していました。研究を通して「食」への思いがさらに強くなり、カゴメの会社説明会に参加しました。そこで、農業振興・地方創生や健康寿命の延伸といった社会課題に対する取組に力を入れていることを聞き、これまでの経験・知見を活かして食品や飲料の開発をしながら、社会貢献にも携わりたい、という思いから入社しました。

現在の飲料開発の業務には、1年前から携わっています。具体的には、新商品飲料の開発担当として、商品の配合設計や工程設計などを担当しています。商品組成の開発がメインですが、フレキシブルな社内体制のため、商品の企画から携わることもあり、大変やりがいを感じています。開発担当者が企画から参画することで、チームとしても一体感を醸成して進めることができますし、開発担当者にとっても力の入り方は変わってくると思います。また、企画から開発まで広く経験することで、様々な視点を持つことができ、自分の成長にも繋がっていると感じています。

Z世代社員が取組むそれぞれのフードシフト

これまでの業務において苦労した点や印象的な取組、および個人のフードシフトな取組についてお聞きしました。

1.生産効率を上げる収穫の機械化

【林氏 インタビュー内容】
カゴメの加工用トマトは手収穫が主流でしたが、昨今の農業人口の減少や高齢化に対応するために、2014年から機械収穫の普及に取組んでいます。
特に東北地方では、大規模に米を栽培されている方々がトマトに参入されるケースが多く、大規模かつ効率的に農業を展開したいというニーズとマッチしており、機械収穫の導入件数も年々増えています。しかし、トマトの収穫機械はまだまだメジャーではなく、取り扱いに慣れておられる生産者の方ばかりではないため、私自身が運転方法を教えたり、不備が生じた際は現場に駆けつけて整備サポートまで行っています。
機械を使うことで労働負荷の軽減だけではなく、圃場面積の拡大も可能となるので、国産トマトの収穫量を増やすという意味で、フードシフトな取組にも繋がっていると考えています。

加工用トマト収穫機 
「Kagome Tomato Harvester」

2.味一つで大きな違いを生む世界の難しさ

【草場氏 インタビュー内容】
同じ野菜・果物でも部位によって香りや味が違いますし、また口に含んだ瞬間の味わいと後味は異なります。そのため人間の感覚を踏まえて配合設計を行う必要がありますが、大学の研究で行ってきた客観的な成分分析のみでは解決できない点に苦労しています。

「野菜生活100 高知和柑橘ミックス」は私自身が主担当で進めたデビュー作です。3つの柑橘を配合する割合の違いで大きく味が変わり、売上にも大きな影響を与えるというプレッシャーの中で、その配合を考えることには、多くのエネルギーを使い、たくさんの苦労もしました。初めての業務やたくさんの困難を乗り越えた分、商品が出荷されて、店頭に並んでいる姿を見た際には、手塩にかけて育てた作品を無事に送り出すことができて嬉しい気持ちが高まりましたが、一方で本当に売れるかどうか心配で、不安な気持ちが入り混じっていました。しかし、この商品を通して生産者が大切に育てた素晴らしい果実を、全国各地の多くの方に知ってもらうことができることを実感したので、今の仕事に大変やりがいを感じています。

「野菜生活100 高知和柑橘ミックス」

3. 業務を通じて変わった「食」への意識

【林氏 インタビュー内容】
入社してから野菜を試食する機会が多く、味覚が鋭くなったと思います。その影響もあって、食べ物にも多様性があることを感じるようになりました。入社前は、野菜はどれも一律の商品に見えていましたが、今は、産地や生産者によって味わいが違うことに気づくようになり、店頭に並んでいる野菜の状態の良し悪しも分かります。農業現場に携わることで、野菜が作られる過程がリアルに想像できるようになり、日常の食生活が、より面白く感じられています。

他には、前よりも積極的にカット野菜、加工野菜を活用するようになりました。自分の食べたいメニューに合わせて食材を無駄なく使うことができるからです。丹精込めて作られた野菜ですので、しっかり食べきりたい!という思いをもって、適切に商品を選ぶよう心掛けています。

色とりどりのトマト

【草場氏 インタビュー内容】
カゴメのものづくりの考え方の中で業務をしてきたことで、価値のある素材を皆に広げていきたいという思いが強くなりました。私が開発を担当している野菜生活100の季節限定シリーズは、日本各地で大切にされている農産物のおいしさや生産者の想い、また地域の魅力を、日本中にお届けする「地産全消」をコンセプトにしています。そのため商品開発では、素材の美味しさを正しく知ってもらうために、味わいの実現に注力しています。それが、素材を大切に育てた生産者の想いを正確にかつ多くの人に届けるうえでの重要なポイントになると考えているからです。
また素材の大切さを実感し、興味も強くなる中で、今まで食べたことの無い素材が沢山あることに気づき、レストランなどへ行った際には聞いたことのないメニューに挑戦するようになりました。特に柑橘類が好きなので、新たな柑橘系の果物にはアンテナを張っています。しだいに食べ物の素材に対して関心が高くなり、またこだわりも持つようになりました。今では、素材を大切にしているレストランや食品メーカーが何を大切にして、どんな価値をお客様に届けようとしているのかが分かるようになりました。

「野菜生活100 季節限定シリーズ」(一部)と地産全消ロゴ

食に関わるZ世代社員の想い

今後の業務において注力したいこと、また同世代のZ世代へ伝えたいことについてお聞きしました。

業務の様子(林氏)とカゴメで栽培しているトマト

【林氏 インタビュー内容】
まずは、生産者に認めてもらえるよう、実力を持ったフィールドパーソンになりたいです。生産に関わる技術力はもちろんのこと、生産者の心配ごとや不安を取り除けなければ一人前とは言えません。相手の話をしっかり聞いて、一緒にトマトを作りたいと思ってもらえるよう、強い信頼関係を構築していきたいです。

当社は食品メーカーではありますが、農業に携わる部署は少ないですし、また男性が多い部署であるため、年代の近い女性から、どのような仕事をしているのか聞かれることもあります。農業に興味を持っている人、挑戦してみたいと思う人は沢山いることを感じております。カゴメで農業を志す方のモデルになれるよう、社内での成果発表会や社内報などを通して、具体的な仕事内容や生産者とのエピソード、難しさ、私の想い、そして女性でも十分フィールドパーソンを担えることを伝えていきたいです。

同世代の皆さんには、やりたい事を明確にして、気持ちをブラさずに、それを実現するために進むことの大切さを共有したいです。私自身、トマトに関わりたいという想いを持ち続けたことで、今はフィールドパーソンとしてトマト栽培に携わり、やりがいをもって仕事に取組むことができています。今後もその思いを胸に農業分野に携わり続け、志を共にできる仲間と日本の農業を支えていきたいと考えています。

業務の様子(草場氏)

【草場氏 インタビュー内容】
これまで多くの野菜・果物に触れてきましたが、その産地では人気があるものの、全国的には知名度が低いものが沢山あることに気づきました。そのような隠れた地域の美味しさをできるだけ多くの人に広めていきたいという思いが強くなっています。そのため、日本各地で大切にされている野菜・果実への関心を更に高めて、素材の特徴を大切にしながら商品化して、魅力を広めていきたいです。利用実績のない野菜・果物を使う際は、新たな工程を導入したり、トラブル対策を検討したりするなど多くの課題をクリアする必要がありますが、お客さまと生産者の方々の喜ぶ顔を見るためにも是非トライしていきたいです。

誰でも美味しい食事には興味があると思いますが、その背景については関心が向きにくいのではないかと思います。自分の開発した商品を通して、素材のおいしさだけではなく、地域の魅力や生産者の想いをお届けすることで、多くの同世代に「食」や「農」に興味をもってもらい、大切さを感じてもらえるように今後も努めていきたいです。