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農業の成長産業への貢献を目指す企業のフードシフトな活動[Vol.2]

農業の成長産業への貢献を目指し、日々活動するカゴメ様。

1899年の創業以来120年にわたり、日本の食を見つめ、新しい食のあり方を提案されてきました。「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」をブランドのありたい姿として、多様化した食のニーズに対応した商品を開発されています。

持続的成長と社会問題の解決を循環させるために、国内においては加工用トマト生産者の減少への対策、最新技術を活用した生鮮トマトの大型施設栽培などにより、農業振興にも貢献されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの地域と一体となった農業への新たな取組について、インタビュー内容を中心にご紹介します。


地元と共に作り上げた「野菜のテーマパーク」

“これまで生産拠点として支えてくれた地元に恩返ししたい”という思いから始まった「カゴメ野菜生活ファーム富士見」(長野県諏訪郡富士見町)※2023年度のオープンは3/23(木)を予定しております※
その開業までの経緯やカゴメ様における役割について、カゴメ野菜生活ファーム株式会社 代表取締役社長の河津佳子氏にお聞きしました。

カゴメ野菜生活ファーム株式会社
代表取締役社長
河津佳子氏

【河津社長 インタビュー内容】
1968年に富士見町の誘致企業第一号としてカゴメ富士見工場を設立して以来、富士見町とは様々な共創を続けてまいりましたので、富士見町と地域の皆さまに対して何らかの形で恩返ししたいと考えていました。この地域は、農業の担い手や後継者不足により、遊休農地の増加が懸念されていましたので、遊休農地にカゴメが培ってきた農業の知見やマーケティングのノウハウを利用して、地域の活性化に貢献できないかと考えました。2012年頃から検討を開始して、2019年4月に、富士見町の魅力を堪能でき、また雄大な自然のなかで野菜に親しむことができる場所として、「カゴメ野菜生活ファーム富士見」(以下、野菜生活ファーム)を開業しました。

昔のカゴメ富士見工場

このプロジェクトは社内での検討だけではなく、地元の方々との議論を
重ねながら進めていきました。特にこのプロジェクトを実現する意義や、コンセプトづくりについては本当に何度も議論しました。会社として初めての挑戦でしたので、農業基盤の整備、農業運営など、常に様々な難しい課題に直面していました。また、カゴメには観光施設を企画して運営するノウハウはありませんので、プロジェクトメンバーが手探りでゼロから調査を始めて、何度も会議を繰り返し、理想のかたちを追求しました。プロジェクトメンバーと経営陣の強い信念があったからこそ完成までたどり着けたと考えています。今ではカゴメの経営戦略上、重要なPR拠点として位置付けられるまでになり、また嬉しいことに多くの企業や地方自治体から見学のご依頼をいただけるようになりました。

このプロジェクトの検討が開始された当時、私はカゴメの広報を担当していましたが、実現性を確認するために富士見町を訪れた時の感動は今でも鮮明に覚えています。八ヶ岳の自然のなかで、収穫したクレソンを食べた時に大変感動して、是非多くの方にもこの感動を味わってもらいたいと感じました。その後、IR部門等への異動を経て、2018年から本プロジェクトに携わることになりました。

野菜生活ファーム周辺の景色

現在、野菜生活ファームでは、野菜の収穫体験や最新技術を活用した野菜飲料の工場見学、生物多様性に配慮した圃場の見学を楽しむことができます。また夏には、約0.6haの畑に地元の小学生と一緒にひまわりを育て、ひまわり迷路を作ります。地域の人気スポットとなっており、県内・県外の多くのお客様に楽しんでいただいています。ファームハウスと名付けた施設では野菜生活ファーム限定品や地元の特産品を販売するショップの他、イタリアンレストランもあります。ぜひおすすめしたいのは、地元でとれた旬の食材を使ったナポリピッツァです。イタリア製の本格的な薪窯で焼いている様子もご覧いただけます。積極的な広告はしていませんが、2022年度は企業や地方自治体からの視察も多く、被災地や遊休農地の再生、農コンテンツによる地域の活性化・事業化、企業による地域連携などのモデルの一つとして参考にしていただいています。開業初年度の2019年は34,000人にご来場いただきました。その後コロナ禍で一時は半分程度に減りましたが、2022年は工場見学を再開したこともあり約31,000人もの多くのお客様にご来場いただくことができました。

ファームハウスのショップとイタリア製の本格的な薪窯

野菜生活ファームはお客様一人ひとりに、カゴメが大切している考えや活動内容を直接丁寧にお伝えして、共感を醸成することで、長期に亘り交流を深めていくことを目指しています。大切にしていることは「活動を通じて、カゴメファン、富士見町のファンづくりに貢献すること」、「カゴメの新たなPR拠点であると同時に、地域活性化のモデルになること」です。

また野菜生活ファームは、カゴメが取組む3つの社会課題「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」を具現化した重要な拠点だと考えています。新入社員には、野菜生活ファームでの研修を通じて、カゴメがお客様に提供したい価値や社会課題に取り組む姿を体感してもらっています。

野菜生活100オリジナル 野菜生活ファーム限定パッケージ

「カゴメ野菜生活ファーム富士見」における取組実績

これまでの野菜生活ファームの運営において、重要な取組実績や特徴などについてお聞きしました。

1.地域と一体となった農業・観光への取組

【河津社長 インタビュー内容】
野菜生活ファームの重要な取組の一つは地域との連携です。連携というよりは、むしろ地域の方々に助けていただいているという表現が適切かもしれません。本プロジェクトのきっかけが、地元の方々へのご恩返しであったため、大きなミッションとして地域への貢献を常々考えています。例えば、地元小学生と共にひまわり迷路を毎年作っています。今年はおよそ100名の皆さまにご協力いただき、2万5千ものひまわりの種を植えました。施設の目の前の畑いっぱいに広がるひまわりは圧巻の景色です。さらに迷路づくりに参加した富士見小学校の3年生が『たいようの花』という歌をつくってくださり、野菜生活ファームで地域の皆さまにむけたコンサートを開催してくれました。地域との共生が進んでいることを感じて大変感動いたしました。また、農福連携の取組として、障がいをお持ちの方やご高齢者に加工用トマトの収穫をお願いしており、1トン程度の収穫ができています。他にも、富士見高校の生徒が栽培した野菜を仕入れて、ファームハウスで販売する取組も行っています。

地元の方がいつでも気軽に立ち寄れる、散歩に来てくれる場所になるように運営を続けてきました。先日、私たちが非常に忙しくしているお盆の時期に、地元の方々が何も言わずに、ボランティアで野菜生活ファームの草刈りをしてくださったことがありました。地元の方々の温かさを感じて涙がでるほど嬉しく、これまでの努力が通じたものと実感できました。また、レストランは地元の常連のお客様が多く、4年目になって様々な点で地元から受け入れられていることを感じています。

ひまわりの種を植える様子

2. 循環型農業の実践

【河津社長 インタビュー内容】
野菜生活ファームは、「農業」を担う八ヶ岳みらい菜園、「工業」を担う富士見工場、「観光」を担う野菜生活ファームの三つの事業が隣接することで、様々なメリットが生まれています。特徴的な取組の一つが循環型農業の実践です。カゴメ富士見工場から排出されるCO2や温水を八ヶ岳みらい菜園のトマト施設菜園に送り込み、CO2はトマト生育に必要な光合成の促進に活用し、温水は施設内の暖房に活用しています。
また八ヶ岳みらい菜園の出荷できないトマトや茎・葉を、富士見工場で発生する植物性残渣と合わせて再生可能エネルギーとして活用しています。これにより富士見工場のCO2排出量を年間約20トン削減できます。

野菜生活ファームにある生物多様性のモデル圃場もユニークな取組だと考えています。カゴメの商品は自然の恵みを原料としているため、自然環境の保全は事業継続のために必要不可欠な取組です。そこで、農業における生態系への負荷軽減のため、多様な生物との共生を目指した圃場づくりを広める活動を行っています。そのひとつとして、野菜生活ファームに生物多様性のモデル圃場を設置して、周辺の農家の方も展開できるような試みを行っています。例えば、在来植物への植え替えや害虫を食べる虫・鳥が戻ってくる仕掛けを施すことで農薬の削減を図るといった取組です。
また圃場のまわりには、「畑の生きものクイズラリー」として鳥や昆虫、草花に関する14個のクイズを設置して、生物多様性を楽しく学ぶ機会もつくっています。

「畑の生きものクイズラリー」の様子

3. 野菜の収穫体験

【河津社長 インタビュー内容】
野菜生活ファームの魅力は、やはり野菜の収穫体験です。年間を通じて何度でもご来場いただけるよう、季節ごとの野菜の収穫やワークショップを開催しています。例えば、4月からトマトの定植体験をはじめ、夏にはミニトマトやトウモロコシ、秋にはカラフルピーマンや芋、そして冬野菜と、春から冬まで様々な農業・収穫体験が可能です。

おいしいミニトマトを収穫してその場で食べることで、野菜嫌いを克服できたお子様もいらっしゃいます。さらに、ここのトウモロコシは生で食べられる種類を扱っており、旬の野菜を収穫してその場で美味しさを体験できる貴重な場所となっています。

トマトの収穫体験の様子

地域連携の拡大や植育の場に向けた展開

「カゴメ野菜生活ファーム富士見」の目指す姿に向けて、今後の展望についてお聞きしました。

ファームハウス

【河津社長 インタビュー内容】
まだ野菜生活ファームを知らない方々に来ていただき、豊かな自然のなかで野菜に親しみ、心も体も元気になってもらうことが一番の願いです。また、富士見小学校との取組のような地域との連携を他の学校や施設にも拡大していきたいと考えています。

今年はカゴメが考える食育の新しい取組テーマ「植育から始まる食育」を実践していきたいと考えています。私たちは、野菜を育て、収穫して、調理するといった一連の「植育」を通して感じるよろこびが、食への関心を培い生きる力を養う「食育」の始まりだと考えています。野菜生活ファームに来ていただければ、様々な野菜の植育体験を通じて、日々の食や農について考えることができると思います。
昨年「ファームフレンズ」という、野菜生活ファームの従業員とお客様が一緒に農作業を行うことで心を通い合わせる企画を行いました。土づくりから収穫までを一貫して体験してもらう中で、従業員との時間を共有し、農や食に触れ、野菜生活ファームのファンになってもらう取組です。多くのお客様に「植育」を体験していただけるように、今年も行いたいと思います。


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