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お米の魅力をもっと発信して、日本の農業を応援!

「明るい豊かな社会の実現」を目指して、地域での課題解決や災害支援、国際的な交流事業など、様々な活動を行っている公益社団法人日本青年会議所様。
その中の社会グループに属する「安全な国確立委員会」では、2024年度は「みんなで考えよう!食卓から始まる国の安全」をテーマに活動されてきました。特に国産米の魅力発信を通じて日本のお米の販路拡大につなげていきたいとの想いから、国内のみならず海外での日本の食に関する情報発信を展開されてきました。
今回はニッポンフードシフト推進パートナーによる、身近な食から安全保障を広く発信する取組の集大成について紹介します。


1.食を切り口とした安全保障の意識の創出

世界の繁栄と平和に寄与することを目的として、幅広い活動を国内外にて展開されている日本青年会議所様。今回は、その中に設置された35の委員会の中の一つである「安全な国確立委員会」の川崎純圓委員長、菅圭市副委員長に、今年度実施した、食をテーマにした活動についてお聞きしました。

日本青年会議所
安全な国確立委員会
委員長 川崎 純圓氏(左)副委員長 菅圭市氏(右)

【インタビュー内容】
日本青年会議所(以下、日本JC)は、“明るい豊かな社会”の実現を理想とし、20歳から40歳までの青年で構成される団体です。70年以上の歴史をもつ日本のJC運動は、現在671の地域に約2万4000名の会員を擁し、全国的運営の総合調整機関として存在します。日本JCは全国的規模の運動を展開して、日本国民と日本JC会員の利益の増進を図るとともに国際青年会議所と協調して世界の繁栄と平和に寄与することを目的とします。今年は能登半島地震の支援や、国際交流においては専門のチームがビジネスマッチングの展開などをしました。学生との連携事業も例年実施しており、国防の最前線を見てもらうことや、国の政策を学生に検討してもらいグランプリを決定する事業などを展開しています。大筋の方策を継続しながらも、年度毎に組織編制を変え、様々な事業を展開しています。
安全な国確立委員会は、日本JCの中に設置された委員会(会議)の1つであり、全国に約40名のメンバーがそろい、
 ①時代に即した安全保障の意識を創出する事業
 ②人々が国防の在り方に関して議論する事業
 ③領土・領海に関する調査、研究
の主に3つの事業を構築し、私たちの住み暮らす環境が充足された状態を持続的に営むため、国際的、経済的に自立し、安定した国を確立することを目的としています。今回の食に関する情報発信は、①の一環として、日本の安全保障の一分野である食料安全保障を通じて、その意識を創出するために、農水省及びニッポンフードシフト(NFS)と連携して取組んでおります。

安全保障というと、国防に関することを思い浮かべる方が多いかと思いますが、防衛白書に掲載されている内容を国民の皆様に理解してもらうのはハードルが高いと感じており、今年は違った切り口で安全保障というものを伝えたいと考えました。そこで、毎日接する食であれば身近に感じてもらえるテーマなのではないかと考え、食をテーマとして日本の安全保障という大きな枠組みを作って事業を進めました。

2024年度における安全な国確立委員会の活動の様子

2.日本の食を取り巻く現状を発信

今年度実施してきた具体的な事業についてお聞きしました。

(1) 食の安全を考えるきっかけづくり

【インタビュー内容】
食料安全保障に関する情報発信は、主に3つ実施しました。
一つ目は、食料安全保障を始めとする安全保障について、小野寺五典元防衛大臣と「2ちゃんねる」開設者のひろゆき氏に対談してもらい、1~6月 まで全6回の動画をSNSで発信しました。様々なテーマで二人に対談いただき、多くの方に視聴いただきました。
二つ目は、6月にカンボジアで開催されたASPAC(日本JCが所属するアジア・太平洋地域会議の通称)のアジア大会にて、日本の食の魅力を発信するために、ブースを出展しました。NFSの取組テーマの1つでもある「おにぎり」を取り上げ、日本人のみならず海外の方々に向けて日本の食に関する情報発信を行いました。
三つ目は、毎年夏に横浜で行っているサマーコンファレンスで、動画にも登場いただいた小野寺五典元防衛大臣を招き、食料安全保障を始めとした最新の安全保障に関する講演内容について情報発信を行いました。あわせて、「日本を食べるのはあなただ!」というSNSのキャンペーンを行い、ハッシュタグを付けて国産の食材または国産食材を使った料理をインスタグラムに投稿してもらいました。最も「いいね!」が付いた方には福井県産のこしひかりをプレゼントする企画となっており、キャンペーン参加者を募り、国産食材の魅力を拡散する事業となりました。

SNSで配信した動画(上)と
インスタグラムの投稿企画「日本を食べるのはあなただ!」(下 )

当委員会としては国防に関する事項を広く網羅して情報発信することとされていますが、食料安全保障をテーマにすると、食に関する取組に偏ってしまうため、当委員会の活動としてバランスを図ることに苦労しました。例えばサマーコンファレンスでは、テーマや質問を幅広いものにするよう工夫して、できるだけ食のみに偏らないように努めました。また、食に関する情報は幅広い国民の方が目にすると考え、発信内容についてはできるだけわかりやすいコンテンツとする工夫を施しました。

結果として、これまで日本JCのYouTubeチャンネルでは1万再生を超える動画が少ない中で、今回の全6回の配信での総再生数は合計約10万再生となり、予想を大きく上回る結果を得る事ができました。発信力のあるインフルエンサーを通して、国民の方々へ効果的に訴求を行うことができたと考えています。動画視聴後に回答してもらうアンケート結果を見ると、一般の方々にも多く視聴いただいていました。日本の食を取り巻く状況について知らなかったという意見が多く聞かれ、国民の方々へ食を通じて安全保障の意識を創出できたと感じています。

「食料安全保障を始めとした最新の安全保障に関する講演」を行ったサマーコンファレンスの様子

(2) 日本のお米を世界に発信

【インタビュー内容】
先ほど二つ目の取組として紹介したASPACでのブース出展では、日本の食の魅力を海外に発信するため、日本の名産品や食品などを紹介する「ジャパンナイト」というセクションで、「おにぎり」を提供しました。

「おにぎり」が候補になったのは、NFSの取組テーマとして、日本の伝統食でもあり日本各地の特産品や地域の食文化との結びつきがある、身近なおにぎりを通して日本の食について考えてもらうきっかけづくりとなる情報発信をしていると聞いたことがきっかけです。シンプルながらも日本の食料事情を垣間見ることができるおにぎりを題材に発信していくことは、日本そして日本食の魅力をもっと世界の方々に知ってもらいたいというテーマとしてはぴったりだと考えたのです。また、過去に、日本JCでもおにぎりに関連した運動をしたことがあり、その時の担当者が同じグループにいたことも相まって、ブース出展が決まった際に、おにぎりが第一候補に挙がりました。食料安全保障の観点からは、自給率がほぼ100%である米の生産を今後も維持するためには、海外の方に日本の米の魅力を知って、評価してもらうことを通じて、お米の輸出につなげていくことが重要であると考え、お米・おにぎりを題材にして情報発信をするという結論に至りました。

ASPACでのブース出展に向けた準備の様子

別の委員会が日本酒やあられなどの米に関連するものを扱っていたのですが、加工品ではないおにぎりの提供というのは非常にチャレンジングでした。実際に海外で日本産のお米を使っておにぎりを提供するとなると、検疫の問題があるため、食材の仕入れ方法から検討する必要があります。最終的には、現地のレストランの協力を得られたことで、様々な課題をクリアすることができ、おにぎりの提供を実現することが出来ました。

海外ではまだおにぎりの認知度が低いため、当日は英語のチラシやインスタグラムの写真をパネル化したものを準備し、気軽にブースに立ち寄っていただけるように工夫しました。また、本当はおにぎりに具も入れたかったのですが、衛生面を考え今回は断念しました。海苔も、現地では人気の食材でしたが、好みが分かれる食材のため、今回は使いませんでした。結果的にシンプルな塩むすびとなりましたが、日本の米の美味しさを分かってもらえる一番の形になったと感じています。

外国人の方に向けておにぎりの試食配布をしている様子

合計で300個のおにぎりを配布しましたが、好評のため時間を区切りながら配布するほどでした。それでもすぐになくなってしまうほどの反響を得ることができ、日本食の人気度合いを実感しています。おにぎりを食べた方にはアンケートに回答いただいたのですが、海外の方の約半数はおにぎりを知らなかったことが分かり、おにぎりや日本の食文化はまだまだ海外に発信する余地があることを実感できました。また、「この塩むすびを、いくらで買いますか?」という質問には、日本で通常販売されている「塩むすび」よりも高い平均価格330円という回答で、新たな発見も得ることができました。(結果の詳細は下部参照)様々なチャレンジのあるテーマでしたが、おにぎりを題材にして、ブースにて配布まで実施したことに対して、日本JC内部では良い評価や驚きの声もあがりました。

【おにぎり試食後のアンケート結果】

3.食をテーマにした活動の評価と今後の展開

日本JCにおける「食」をテーマにした活動について、1年間の評価と今後の展望についてお聞きしました。

サマーコンファレンスの様子

【インタビュー内容】
安全な国確立委員会で年初に設定した目標は全て達成することができたので、国民の皆様に食料安全保障を始めとした最新の安全保障の理解を深められたと満足しています。「おにぎり」を切り口とした日本の米の情報発信の機会を通して、日本と海外のイメージのギャップを把握することができたため、今後はそのギャップを埋める施策を進めていきたいです。

単年で組織が変わるため、取組を継続する難しさはありますが、農林水産省における「ニッポンフードシフト」や「#食べるぜニッポン」などの素晴らしい取組と協働しながら、日本の「食」について理解を深められる取組を推進していきたいと考えています。一案となりますが、食の情報発信を効果的に行っていくには、組織内に食料安全保障をはじめとした日本の食料問題について担当する委員会を立ち上げることが良いと考えています。日本JCの会員も以前と比較して伸び悩んでおりますが、島根県隠岐諸島の海士町のように小さな地域でも全国に発信できる事例があり、「食」という面白いテーマを持つことができれば、各地の青年会議所などと連携し、全国への発信力を強化できる可能性はあると考えています。