見出し画像

地域に寄り添う持続可能な未来に向けた取組[Vol.1]

「楽しい、うれしい、おいしいの価値創造を通じ、お客様の心を豊かにする暮らしの元気パートナー」をグループビジョンに掲げ、関西を中心に百貨店や食品スーパーをはじめとする250を超えるリアル店舗を展開されているエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社様。

これからの時代に向けて、「地域の絆を深める」「地域の子どもたちを育む」「豊かな地域の自然を守り、引き継ぐ」という重点テーマを掲げ、サステナビリティ経営に取組まれています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの食や自然環境を通じて地域との絆を育む取組みについて紹介します。


地域社会になくてはならない存在を目指して

2007年、阪急百貨店と阪神百貨店の統合から、関西を基盤に成長してきたエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社様。経営企画室 サステナビリティ推進部に所属する吉田憲夫氏に会社の設立、成長の経緯、およびサステナビリティ経営に関する取組についてお聞きしました。

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
経営企画室 サステナビリティ推進部
吉田 憲夫氏

【吉田氏 インタビュー内容】
当社は、阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合をきっかけに、地域での圧倒的な1番店を目指し設立しました。梅田は西日本最大級の商業激戦区でもあり、これまでライバルであった阪急百貨店、阪神百貨店が、互いに競争しながらも補完する形で提携を進めてきました。当時は、消費スタイルの変化も著しく、郊外型の百貨店、食品スーパー、食料品宅配事業など、様々な業態で関西圏のマーケットシェアを拡大することを目標に取組を始めました。そして、地域社会にとってなくてはならない存在になりたいという思いを込めてH2O(水)と名前を付けました。百貨店事業、食品事業、商業施設事業の小売業をメインに、100年にわたって関西を基盤に成長してきた企業グループです。現在は、大阪府に157店舗、兵庫県に67店舗など関西エリアで約250店舗を運営しております。

阪急百貨店 阪急うめだ本店(左)と阪神百貨店 阪神梅田本店(右)

当社においても、サステナビリティやSDGsの機運が高まる中、2021年よりサステナビリティ推進室を設置し、サステナビリティ経営方針を策定しました。その中で、「地域の絆を深める」、「地域の子どもたちを育む」、「豊かな地域の自然を守り、引き継ぐ」の三つを重点テーマに定めました。小売事業は地域に根差した事業、地域の皆様に育てられた事業であり、また従業員自身も地域の住民であることから、「地域」は当社のキーワードとなっております。特に食に関しては「地域の絆を深める」というテーマを基に様々な取組を実施しております。

「フードロスゼロチャレンジ2022」表彰式の様子

サステナビリティ経営における持続可能な未来に向けた取組

サステナビリティ経営方針の重点テーマについて、主な取組内容や狙いについてお聞きしました。

1.売場を「産地」と「地域」の交差点に

【吉田氏 インタビュー内容】
食を通じて地域の絆を深める具体的な取組として、イズミヤの「さんさん市場」や阪急オアシスの「おひさん市」などがあります。そこでは地域の生産者の顔が見える野菜や果物の売り場を設けており、開店前から並ぶお客様や、「来店したら真っ先にこの売場に立ち寄る。」というお客様もいらっしゃり、鮮度がもたらす「つくる」と「食べる」の距離の近さを味わっていただいています。
また阪急うめだ本店では、期間限定で開催していた「Hankyu PLATFARM MARKET」を常設売り場とし、生産者の思いを伝え、いつでも繋がれる場としていきたいと考えております。
このような「産地」と「地域」が交差する場を設けることで、地域のお客様に生産者の息づかいを感じていただき、それが地域との絆を深める上で重要な役目を果たすと考えています。

「さんさん市場」(左)と「おひさん市」(右)

2. 食品廃棄ゼロエリアに向けた取組

【吉田氏 インタビュー内容】
環境省の受託事業として、兵庫県の川西市を中心に食品廃棄物削減をテーマにした実証実験を行いました。スーパーマーケットから発生する生ごみを堆肥に変え、その堆肥で栽培した農産物を再びスーパーで販売する取組です。生産者からは経済的な面を含め良い堆肥が得られると評価をいただき、消費者からはおいしいと評価をいただいています。店舗では、まだ食べられる廃棄物がこんなにも出ている、という事実を認識できたことが大きな成果でした。

生ごみから堆肥を作っている様子

同時に、地域の方々と環境配慮に対する意識や行動を変えるチャレンジも実施しています。地産地消や有機野菜など、他よりは少し値段が高いが、環境に配慮しているものとして、それでも買いたいと思う機運を高める事が重要です。例えば川西市で、家庭から出る廃棄物を堆肥にし、市が所有する花壇に使う取組を実施することで環境配慮に関する取組を実際に体験してもらっています。当社の従業員だけでなく、川西市市長にも参加していただき、積極的に情報発信を行い、地域の方にとって身近で目に見える形で実施しています。また、川西市の小中学生を対象に、食品ロスを削減するアイディアを募集し、優秀なアイデアについては、フードロスゼロカレッジという形でアイデア実現に向けて伴走も行いました。具体的には、中学1年生からのアイデアとして、家庭での食べ残しを使った料理やデザートのレシピづくりがありました。実際に友達を含めアンケートも取りつつ、家庭で残りやすい食材を使ったレシピ集を形にしていて、3月の発表会で紹介いたしました。

多くの成果が出始めたこの川西市の取組をモデルにして、他地域への展開を検討し始めています。

川西市の花壇での取組の様子

3. 大阪 森の循環促進プロジェクト

【吉田氏 インタビュー内容】
昨年、社会課題の解決を図る新たな公民連携のモデルを確立するため、大阪府と包括連携協定を締結したのをきっかけに、「大阪 森の循環促進プロジェクト」を進めています。大阪の3分の1は森や山が占めていますが、そこで運営している林業は非常に厳しい事業環境が続いています。森は適切に伐採・手入れすることで、新しい木を植えられる自然サイクルが回るため、まずはいかに木を使うかが非常に重要です。そこで、消費地に近い大阪の木材を当社グループ全体を巻き込んで積極的に使い、森林の環境を守ることで地域の自然を保護することを狙いとしています。

「大阪 森の循環促進プロジェクト」における森林研修の様子

具体的には、2022年9月の本社移転に際し、設置するテーブル等に大阪の木材を使用しました。その際は、木を切り倒して資材所に運ばれる現場の立ち合いから、工場でのテーブル製造に至るまで、ワークショップ形式で実際に当社の従業員が携わりました。一連の工程を実際に見ることで、木材に対する理解、使う必要性を肌で感じる機会となりました。例えば、夏場の木は非常に水分を含んでいて想像とは違っていたり、木材価格が安いために切り倒すだけで赤字になってしまう実情など、参加したメンバーからは様々な感想を聞きました。また、テーブルづくりに参加したメンバーはテーブルに自分の名前を書いたこともあり、ものに対する思い入れも違い、愛着も深まると考えています。今では簡単に手に入る木製製品について、実は苗を植えてから育つまでには50年~60年かかる木からできており、オーダーすればすぐに手に入るものではないことを身をもって感じる貴重な体験となっています。

小売業として、木材の利用は限られますが、店やオフィスの什器など、使える場所には積極利用するよう考えています。また、大阪の森の現状を伝える啓発活動を強化するため、例えば昨年行った林業ツアーなどを通して、更に多くのグループ従業員、地域の方々、児童などへ伝えられるように努めていきたいです。

ワークショップの様子

地域との絆をさらに深める今後の展開

サステナビリティ経営方針のテーマ実現に向けた今後の展望をお聞きしました。

市民を主体にみんなでつくり上げていくイベント「かわにし音灯り」の様子

サステナビリティ経営方針を定めて間もないこともあり、まずは3つの重点テーマを着実に動かしていく事が当面の目標です。定量的な目標も重要ですが、例えば食品リサイクル率は、現状の量を正確に把握する手順が必要であり、時間を要します。重点テーマの運用が安定されれば、2030年までに食品リサイクル率を70%まで向上する等の数値目標をクリアできるよう実行していく段取りをしております。大事なことは、生産者や食に関わる全ての方々を活性化し、元気にしていくことであり、そのためには生産者や地域の方々との繋がりをつくる取組を優先的に強化していきます。

具体的には、河内長野エリア、千里エリア、川西エリアなどをモデル地域と選定し、重点テーマを進めていく予定です。例えば千里エリアでは、千里中央公園という大きな公園で、自治体と連携して活性化を手掛け始めています。地域の方々と議論を重ね、あるべき公園の姿を検討しており、地域の課題解決に向けた良い事例になると考えています。このようなモデルをグループ全体で拡大し、各地域との絆を深められるように継続していきます。

モデル地域「千里中央公園」での取組の様子

大阪 森の循環促進プロジェクトで起こっていること-2022-
https://www.h2o-retailing.co.jp/ja/sustainability/theme-03/forest/main/016/link/forest.pdf