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食と健康を考え、約50年間ポテトチップスづくりに取組む食品メーカーが目指す未来[Vol.1]

1949年の設立以来、食品メーカーとして革新のDNAを受け継ぎ、自然の恵みを活かした、人々の健康に役立つ、様々なオリジナル商品を生み出してきたカルビー株式会社様。

「掘りだそう、自然の力。」をコーポレートメッセージとし、技術革新・生産性の向上を目的に先端技術も取り入れながら、生産者と二人三脚で、新しい農業のあり方を先進しています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの活動として、既存の農業や商品の形にとらわれない積極的な新しい挑戦について紹介します。


売上の6割を占めていたキャラメル事業から撤退し、スナック菓子メーカーへ

“カルビー”と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「ポテトチップス」ですが、設立当初は「キャラメル」が人気商品だったカルビー様。会社の設立や、成長の経緯として、どのような形でポテトチップスの代名詞となるようなメーカーへと育っていったのか、コーポレートコミュニケーション本部 本部長 駒田 勝氏にお聞きしました。

カルビー株式会社
コーポレートコミュニケーション本部 本部長
駒田 勝氏

【インタビュー内容】
当社は1949年に広島県で設立したのですが、当時はキャラメルなどの飴菓子を主力商品とする会社でした。初めてスナック菓子商品を発売したのは、1955年の「かっぱあられ(現在の「かっぱえびせん」)」でした。1960年代前半ごろまで、当社の売上の6割はキャラメルなどの飴菓子が占めていたのですが、残りの4割のあられの方が利益が出ている上に、競合も少ないことから、あられに注力することにしたのです。飴菓子から撤退することにより失う売上を補うための新商品として開発されたのが「かっぱえびせん」です。1964年に発売した「かっぱえびせん」は「やめられない、とまらない♪」のフレーズと共に一躍人気になりました。その後、日本で人気となった「かっぱえびせん」をアメリカのニューヨークで開催された国際菓子博覧会に出品する機会がありました。その際、創業者が街のグローサリーストアでポテトチップスが山のように積んで売られている光景を目の当たりにし、そこでポテトチップス市場への進出を決めたと聞いています。
1975年に新商品として「ポテトチップス」を発売。その5年後の1980年にはカルビーポテトという馬鈴しょ(じゃがいも)専門のグループ会社を設立するなど、飴菓子からスナック菓子メーカーへと大きく舵を切りました。

発売当初のスナック菓子商品
(左から、1955年発売 かっぱあられ、1964年発売 かっぱえびせん、1975年発売 ポテトチップス うすしお味)

カルビーグループの創業の精神は「未利用の食糧資源を活用すること」と、「健康に役立つ食品をつくること」です。その精神は、カルビーのDNAとして、廃棄されることが多かった小エビを使った「かっぱえびせん」や、主にでんぷんとして消費されていたじゃがいもを使った「ポテトチップス」に受け継がれています。
例えば、ポテトチップスを少しでも美味しく食べてもらいたい!という想いのもと、1983年に業界で初めてアルミ蒸着フィルム(プラスチックにアルミを塗布したもの)を層に組み込んだフィルムをパッケージに採用しました。アルミ蒸着フィルムを使うと、光を遮ることができる反面、フィルムの中が見えなくなります。『中身が見えないものは売れない』という小売業からの声に加え、コストが大幅に上がることから社内でも大きな反発があったようです。それでもお客様においしいものをお届けしたい、という強い意志で突き進んできました。
このような先進的な取組もあり、ポテト系スナック菓子においては70%を超える高い国内シェアを維持できているのだと思います。

現在発売しているポテトチップス商品

生産者からお客様まで、たくさんの人たちと一緒に作りあげるポテトチップス

ポテトチップスに適したじゃがいも栽培へのこだわりや、多くの年代の方に商品を楽しんでもらうための取組についてお聞きしました。

1.品質の安定したじゃがいもを調達するために

【インタビュー内容】
当社では「ポテトチップス」を発売した当初から原材料であるじゃがいもを、契約生産者さんと協力しながら調達しています。
農産物は市況によって価格や生産量が変動しますが、契約生産者さんとは「事前に取り決めた金額で収穫したじゃがいもを購入します」という約束をします。そうすることで、生産者さんの収入は安定し、当社はじゃがいもを必要な分仕入れることができる、というWin-Winな関係を築きながら取組んでいます。

その後、当社にはカルビーポテト株式会社という原料部門が分離独立した事業会社ができ、日本全国にいる約1700戸の契約生産者さんと連携しています。カルビーポテトには実際に契約生産者さんとの橋渡し役を担うフィールドマンが約50名所属しているのですが、社員数は約200名の会社なので、4分の1がフィールドマンというわけです。(※数値は全て2023年度現在のもの)
じゃがいもは同一圃場で作り続けると「連作障害」が発生してしまうことから、安定した品質を維持するため4年に1度じゃがいもを作っています。冬の間に、「来年はどこの畑でどれくらいの量を作付けしようか」という計画をフィールドマンと契約生産者さんが一緒になって考え、種いもの品種から、植え付けの時期など相談しながら進めていきます。そして、芽が成長してきたらその様子を見て、「どこの畑の成長が遅い」とか、「病気になりそうだからこういう防除をしましょう」などのアドバイスをフィールドマンがしています。

フィールドマンと契約生産者さんの作業風景

実は当社では、個々の契約生産者さんの畑で穫れたじゃがいもを使用した生産者限定のポテトチップスを作っています。親戚や地域の人に「自分が作ったじゃがいものポテトチップスを食べてもらえる!」と、契約生産者の方に大変喜んでいただいていて、契約生産者さんと二人三脚で取組んでいるからこその商品だと思います。これからも契約生産者さんのニーズを満たしながら、「今後もじゃがいもを作っていきたい」と思ってもらえるようなモチベーションにつなげていけるよう、現場の声を大事にしていきたいです。

契約生産者限定のポテトチップスの例
(現在販売しておりません)

2.ポテトチップスのさらなる進化を探究

【インタビュー内容】
カルビーポテトでは20年ほど前から、ポテトチップスに適したじゃがいもの品種改良を研究しています。その中で「ぽろしり」というじゃがいもの新品種を開発し、品種登録から10年の節目を記念して、「ぽろしり」のみを原材料に使用した「ポテトチップス 今を味わう!しおとスパイス味/しおとバター味」「ア・ラ・ポテト 羅臼昆布しょうゆ味」というポテトチップスを発売しました。

ぽろしりを使用したポテトチップス商品
(現在販売しておりません)

これまでのじゃがいもの品種によっては、収穫時や貯蔵している際の衝撃などが原因で「打撲」と呼ばれる傷の発生が多くありました。この傷はポテトチップスになった際に色が変色してしまったり、食感が固くなってしまったりするため、手作業で取り除く必要がありました。この「ぽろしり」は、そういった傷ができにくいという特徴があります。さらに、じゃがいもの病気である「瘡痂(そうか)病」や根に寄生する害虫「シストセンチュウ」への耐性が強く、収穫量も多くなるというメリットがあります。現在では、カルビーが発売しているポテトチップスで使用するじゃがいものうち品種としては3番目の量ですが、今後はさらに増やしていきたいと考えています。契約生産者の方からも、早く「ぽろしり」の生産をしたい、という声をいただくこともあり、力を入れていきたい品種となっています。

カルビーポテトで開発した品種「ぽろしり」

3.Z世代と取組むポテトチップスを通した地域貢献

【インタビュー内容】
カルビーでは高校生をはじめとする若者との取組も数多く行っています。
例えば、宮城県大河原商業高等学校の先生が、地域の梅を使った商品を生徒と一緒に作りたいということで、もともと交流のあったじゃがいも生産者を通じて、当社に「梅を使った商品ができないか」との相談があり、地域事業部と連携して商品化しました。
そこから梅つながりで、毎年梅の開花時期に合わせて開催されている「全国梅サミット」において、福岡県の太宰府で梅を栽培している福岡農業高校の先生にも出会いました。そこでも梅を使った商品開発ができないかということで、福岡の商品開発担当者と生徒が1年をかけて商品化し、実際に店頭で販売しました。この取組は次の世代の生徒にまで受け継がれており、今年で11年目を迎えています。
このような取組を通して、高校生からも嬉しい声をたくさんいただきますが、当社の商品開発としても高校生目線での面白いフレーバーや、梅を使った商品でコアターゲットとした受験生へ向けたメッセージ「合格する梅(ばい)」など、ユニークなアイデアがでてくるため、非常に楽しく取組んできました。

高校生と開発した地域限定商品「ポテトチップス合格する梅 はちみつうめ味」

他にも、全国で展開している「シンポテト」シリーズにおいては、昭和女子大学の学生との商品開発をしました。そもそも「シンポテト」は、一口で食べることができるカルビー最薄のポテトチップスとして、女性を中心に多くの客層から人気がある商品です。特に若い女性に楽しんで食べていただきたいとの思いから、若い女性の声を商品づくりに反映させるため女子大生との協業を企画し、「シンポテト 噂のハニーチキン味」を2023年3月に数量限定で発売しました。
またカルビーには栃木県 宇都宮市に研究開発拠点があり、そこでは毎年小学生からアイデアを募集するお菓子コンテストを10年以上にわたり開催しています。

このように常に大人・子供関係なく、消費者との距離を縮めて一緒に商品開発を進めていこうというカルチャーがカルビーにはあると思っています。

第13回「お菓子コンテスト」の表彰式の様子(上)と、
昭和女子大学の学生と開発した商品「シンポテト 噂のハニーチキン味」(下)
(現在販売しておりません)

お菓子から老若男女問わず楽しめる食の未来を目指して

自然の食材を活かした新商品の開発に留まらない、人々の健やかなくらしへの貢献に向けた今後の展望についてお聞きしました。

【インタビュー内容】
「じゃがいも」に次ぐ作物として、「甘しょ(かんしょ)」(さつまいものこと)や「豆」に注目をしています。 「甘しょ」については、国内最大級のさつまいもの取り扱いがある、グループ会社「カルビーかいつかスイートポテト」があります。同社のさつまいもの専門知識や技術と、カルビーグループがこれまで得たじゃがいもの品種開発や貯蔵技術などの資産を活用することで、甘しょ事業の拡大を図っていきます。また「豆」では、今後の大きな方針として「タンパク質の含量が高い新商品を発売していきたい」という目標を掲げています。豆は現在、海外からの輸入に依存する比率が高く、これらの原料の国産比率向上とそれを利用した製品化に機会があるとみています。
他にも、新たな国産食材として北海道産のレッドビートを使用した「CHIPS NEXT 北海道産レッドビート」「CHIPS NEXT レッドビート&フランボワーズ」を数量限定で発売しました。この商品で使用するビートは、じゃがいも栽培における連作障害の対策として栽培できる作物でもあり、じゃがいもを栽培していない間の作物も無駄なく使えるだけでなく、生産者さんも支えることができると考えています。

国産のレッドビートを使用した商品「 CHIPS NEXT 北海道産レッドビート」(左)と、
「CHIPS NEXT レッドビート&フランボワーズ」(右)
(現在販売しておりません)

30年前には「ポテトチップスなんて40歳超えたら食べない」といわれていましたが、その年齢はどんどん延びてきて、今では小学生からシニアまで、一緒に食べられるカルチャーに育ってきていると感じています。今後も年齢に関わらず、当社の商品を楽しんでもらいたいです。
カルビーグループ全体では、2030年に目指す姿として「NEXT Calbee &Beyond」という長期ビジョンを掲げています。2030年を目標年とし、成長領域に集中して投資を振り向けることで、収益性と成長性が両立する事業ポートフォリオへの転換を図ります。
特に2025年度までの3ヵ年変革プランを「Change 2025」として掲げ、国内コア事業の収益力強化とグローバル、新規領域での事業展開を強化します。カルビーグループは、創業の精神や企業理念のもと、経営を取り巻くさまざまな課題に立ち向かい、次なる成長への変革に踏み出してまいります。

カルビーを代表する商品