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自然の力を引き出し、『草と共に生きる』社会づくり[Vol.1]

農業や緑地管理分野において、卓越したアイデアとそれをカタチにする技術力で、「Originality」溢れる業界初製品の開発を続けてきた株式会社オーレックホールディングス様。

新しい価値を持った農業機械の開発のみならず、さらなる農業発展に貢献する新規事業の創造にも取組み、農家の方の支援も長きに渡り、継続して推進されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの70年以上続く『草と共に生きる』取組を紹介します。

「農家の方を楽にする機械をつくる」からはじまった

昭和23年、戦後の深刻な食料不足という事態が続いていた時代。「文明の利器で農作業の改善をはかろう。」、「農家の方を楽にする機械をつくろう。」という想いからスタートした事業。「世の中に役立つものを誰よりも先に創る」を信条とした会社の歩みを代表取締役社長の今村健二氏にお聞きしました。

株式会社オーレックホールディングス
代表取締役社長
今村 健二氏

【今村社長 インタビュー内容】
当社は戦後3年目の昭和23年、食料を含め全ての物が不足していた時代に、私の父がによって創業しました。戦争から戻ってきた父は、まずは皆が食べるものを確保していくために「食料をつくる農業機械が必要だ」と考え、製品を手作りし始めました。次第に機械が売れ、工作機械を導入し、製品の高度化を図り、歯車を核とした耕運機や草刈機などの製品づくりにシフトしていきます。草刈機については、全国にローカルメーカーが既に多数ありましたが、2段変速ギアによる草刈り機能、バックギアの搭載、自動車のディファレンシャルギアの導入による左右のスムーズな旋回の実現など、他社よりも常に一歩先んじた製品開発を心がけて行ってきました。そして、次第に全国でも売れるようになり、今ではトップシェアを獲得するまでに至っています。

果樹園からはじまった草刈機の導入
草刈機が導入されはじめたのは、青森のリンゴ園、山梨のぶどう園、山形のサクランボ園など、全国の果樹園からでした。約45年前、果樹園では一般的に除草剤を使っていた影響で、土の表面がカチカチに固まってしまい、水や栄養が農作物に入りにくくなり土中環境に腐敗菌が多くなってしまうことが問題視されていました。しかし、草を生やす園地管理法である「草生栽培」が普及しはじめたことによって、草刈機が売れるきっかけとなりました。

草刈機1号機 オートモアー

歩みを止めない草刈機の改良
そうして、草刈機が使える広い場所には普及が進みましたが、どうしても手作業になってしまう場所もあり、手間がかかってしまうことが農家の方の悩みの種でした。そのような農家の方の課題に共に向き合い、長年に渡り様々な挑戦をしております。一例として田んぼの畦道の草刈りです。関東営業所で営業をしていた際に様々なニーズを聞いて回りました。関東・東北では穂に冷たい風が当たらないように高い位置まで水を張る必要があります。水を張るためには畦道が高くなり、その側面に生える草刈りが非常に大変だと教えてもらい、実際にそのきつさを体験させてもらいました。この畦道の草刈りについて、どのメーカーも開発に挑戦していませんでしたが、身をもって経験したこともあり、なんとか農家の方の役に立ちたいという思いで、長い年月をかけて、業界初となる畔道の上と側面を同時に草刈りできる機械を開発しました。

畦道を刈る草刈機の様子

お客様の要望をいち早く製品へ
もともとエンジニアだった私は、お客様から要望があれば、歯車のトランスミッションなどは自分で作り変えることができました。エンジニアが全国の営業所の現場で、誰よりも農家の方と草刈りをして不具合に直面しながら改善を繰り返すことが、これまでの成果に繋がった大きな要因と考え、「百見は一感に如かず」を座右の銘としています。開発社員には農業体験をさせていますが、これは農家の方の気持ちを体感することで、「百見は一感に如かず」を身をもって感じて欲しいからです。事業は売上をあげることが重要ですが、「体感」がないと「単に売れればよい」という思考に陥ってしまい、長続きしません。したがって、当社は、安全・安心な農産物づくりの一助となるような機械を誰よりも早く作り、「世の中の明るい未来づくりに貢献する」ことを忘れないように、常に社員にも伝えています。

「世の中に役立つものを誰よりも先に創る」取組の成果

これまでに着実に進めて来られた様々な「世の中に役立つものを誰よりも先に創る」取組の成果についてお聞きしました。

1.健康青汁づくりへの挑戦

【今村社長 インタビュー内容】
農業機械のみでなく、「食」に関する新規事業として、「青汁」づくりに取り組んでいます。一般的な青汁はケールや大麦若葉を主に原料としていますが、当社がトライしているのはすいおうからつくる「青汁」です。すいおうは葉っぱを収穫するためのさつまいもで、栄養価が高く、整腸作用を持っています。当社製品のユーザーの方が作っている作物で、生鮮野菜としてスーパーに並んでいます。しかし、すぐに鮮度が落ちてしまうため、鹿児島・宮崎では販売できますが、その他の地域では難しいという問題を聞いていました。そこで、粉末状にして「青汁」として開発に挑戦することにしました。これまで当社ではやったことの無い手法を取り入れながら販売していますので、試行錯誤が続きますが、農家の方や人々の健康に寄与できると考え、継続していきたいと思います。

すいおうを栽培している様子と「青汁」

2.畜産消臭システム Dr. MIST

【今村社長 インタビュー内容】
畜産地域である鹿児島・宮崎では、糞尿等に対する家畜の衛生管理は一つの大きな課題となっています。売上を大きく減らす家畜の病気への予防や対応には多大なリソースが必要とされ、農家の方には悩みの種なのです。そこで、様々な研究開発をしているパートナー会社が、高濃度ミネラル水がアンモニアを抑制することを発見し、家畜の糞尿にまくことで堆肥化を早めることを聞きました。そのパートナー会社から事業を譲り受けて「畜産消臭システム Dr. MIST」を始めることにしました。実証実験を半年行った結果、Dr.MISTウォーターを定期的に撒くと堆肥化に必要な放線菌が豊富となり、腐敗菌、病原菌を減らし、アンモニア濃度を激減させる結果を確認することができました。
衛生管理を怠ると、牛はアンモニアで目も開けられず、糞尿からわく吸血ハエをはらうために常時立っていなければならず、成長によくない環境になります。一方、Dr.MISTウォーターを散布した環境では、牛は横たわることができ、ストレスフリーにより肉が増量し、体重も増え肉の等級も上がることが実験でも分かり、成長に良い環境づくりを手助けできます。製品は高評価を得て、徐々に実績を上げられています。

Dr.MISTを散布している様子

3.14年かけた水田除草機

【今村社長 インタビュー内容】
農家の方の思いやこだわりに合わせて様々な選択肢を与えられるように、農業機械の開発に取り組んでいます。その中で、有機農家の方の手助けになるような活動にも注力しています。有機農家の方が抱える課題を調査した結果、除草が一番のネックであることがわかり、水田除草機の開発に着手することにしました。製品化までに14年かかりましたが、農家の方の声を直接聞けるような開発プロセスを構築し、常に農家の方の苦労を「体感」できるようにしてきたことで、担当したメンバーも最後まで諦めず完遂してくれたと思っています。

水田除草機「WEED MAN」

農家の方のよりよい環境をつくる「プラットフォーム」として

オーレックホールディングス様の今後の展望についてお聞きしました。

インタビューの様子

【今村社長 インタビュー内容】
国が「みどりの食料システム戦略」として打ち出しているように、化学肥料を減らしながら有機農産物を普及させていくため、当社としても草刈機等の製品普及をはじめとし、土づくりにも注力したいと考えています。長年の経験から、土中の菌の状態は作物に与える影響が大きいことが分かっており、土の状態をしっかり整えることで、作物の免疫力が強くなり、病気や虫への抵抗力が高まることが分かってきました。良い土づくりができると、薬をまく必要性がなくなり、減農薬に繋がると考えています。手間暇かかる有機農産物を増やすためにも、農家の方を下支えする健全な土づくりにおいて、当社がどのように関れるか、社内に有機チームを組成して研究開発をしているところです。そして、有機農業に関わる分野をより広げていき、各事業間で相乗効果を生むような体制を構築します。そして、農家の方のよりよい環境をつくる「プラットフォーム」となり、最終的にはお客様が多くのメリットを得られ、喜んでもらえるように事業を展開していく所存です。