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日本のお茶文化を発展させる企業のフードシフトな取組[Vol.1]

創業以来70年以上にわたり地元の契約農家さんと手を取り合い、日本の文化であるお茶を製造している鹿児島堀口製茶様。

茶の栽培(契約農家を含む約300ha)から荒茶製造、製品販売に至るまでの茶業一貫で経営され、アイデアを生み出す『発想力』と、実際の茶づくりに活かす『行動力』を原動力に、旧来の考えにとらわれず、常に新しい方法をお茶づくりに取り入れ、世界の高みを目指して走り続けていらっしゃいます。

今回は、ニッポンフードシフト推進パートナーの日本の素晴らしいお茶文化を継続・発展させる取組を紹介します。

新たな試みを常に行動力で示す鹿児島堀口製茶

「遊び心」「農業にエンターテイメントを」をモットーに、地元創生アグリプレナーとして地元活性化にも力を入れている代表取締役社長の堀口大輔氏に、会社の経緯、特徴、取組などについてお聞きしました。

鹿児島堀口製茶有限会社
代表取締役
堀口 大輔氏

【堀口社長 インタビュー内容】
私たち鹿児島堀口製茶有限会社は、1948年に大隅半島の志布志市でお茶の生産加工会社として創業し、現在では茶葉の生産から加工・販売までの一貫した経営に取り組む法人です。創業当時の鹿児島県は紅茶の生産が盛んでしたが、円高の際に海外輸入品との差別化が難しくなり、緑茶の生産を手掛けるようになりました。こういった経緯もあり、紆余曲折ありましたが、世界にも通用する競争力をつけるために規模拡大をすすめ、今では自社茶園と系列茶園を合わせて300haの茶園を管理しています。

また、1989年の法人設立に合わせて、販売会社の株式会社和香園も設立いたしました。鹿児島県の茶園面積は一貫して伸びておりますが、当時の市場の評価は静岡茶などに比べると品質が低く、静岡の技術を習いながら、またお客様の声を聴きながら改良を重ねて、ここまでたどり着いた経緯があります。直接お客様の声を聴くために、接点となる販売の重要性を早くから認識し、和香園の設立以前からお客様とのコミュニケーションを行っていました。この認識があったため「いい茶は、健康的な環境から生まれる。」という考え方を社内に定着させることができ、環境保全や有機への社会的な関心が高まる以前から化学農薬だけに頼らない栽培方法などを確立できたと思っています。

2016年頃からは実質的に社長業を引き継ぎ、新ブランドの立ち上げなど、新たな発想を取り入れながら、常にまずやってみる行動力を大切にやってきました。例えば最近の取組としては、Z世代のメンバーが中心となって開始した大隅のお茶を体験できる「大隅茶全」、茶農家の作業効率を飛躍的に向上させる「摘採支援システム」によるDX化、日本のお茶の可能性を広げる世界に向けた「和紅茶」の認知拡大など、社員と力を合わせて推進しているところです。

大隅のお茶を体験できる店舗「大隅茶全」

お茶による農業、地域、日本の発展への挑戦

茶農家の活動に留まらないお茶を起点にした様々な取組の成果についてお聞きしました。

1.大隅のお茶の全てを味わえる「大隅茶全」

【堀口社長 インタビュー内容】
鹿児島県大隅の地に、茶を求めて人が集う「大隅ティーナリー」をつくり、お茶の創作和食・コース料理の提供、新茶をはじめ季節に応じた様々なお茶の販売、茶摘み体験や茶焙煎体験ができるイベントの開催など、お茶の新たな価値を提供する取組をしています。また、お茶が日常の生活の中でほっと一息つける経験であり続けてほしいと思い、大隅半島のお茶の楽しみ方を味わい感じられる場所を提案したく、「大隅茶全(おおすみさぜん)」をオープンしました。Z世代の店舗運営メンバーもまだお茶や仕事に関する知識は浅いですが、固定概念なしで新しい自由な発想を取り入れながら、皆が成長できる場にしたいと思っています。

「大隅茶全」のオープンに関わったスタッフ

2.「摘採支援システム」によるDX化

【堀口社長 インタビュー内容】
デジタルを利用して、情報の一元化と経営の見える化を行える「摘採支援システム」の活用にアグリテック企業等と連携して挑戦しています。お茶の摘採は2~3日の間に行い、これを逃すと品質が劣化し、商品が台無しになってしまいます。これまでは、各圃場の摘採時期を見計らい、各種商品を製造し、各国向けの製品管理および販売までの複雑な管理を紙ベースで行っていたため、大変な作業負荷、大きなストレスとなっておりました。そこで、栽培情報、製茶情報、製品情報の一元化を図ることによって、摘採時期を皆でリアルタイムに共有でき、作業効率を飛躍的に上げることができます。また過去情報の蓄積によって、栽培方法や製品の比較・分析から、品質を継続的に向上させることができます。このシステムを系列の工場や取引先などと共有できれば、トレーサビリティや日本のお茶の価値向上に繋がり、またこれが地域全体に広がれば、地域活性の一助になると考えております。
さらに来年は、この仕組みを広げて、フードチェーンの全てのプロセスをデータ連携基盤等を用いて、生産性向上、無駄の排除、トータルコスト削減、農作物・食品の高付加価値化、ニーズとシーズのマッチング等を実現しようとする、「スマートフードチェーンのお茶版」を進めて行きたいと思っています。

「摘採支援システム」で摘採時期を検討している様子

3. 世界に向けた「和紅茶」の認知拡大

【堀口社長 インタビュー内容】
国内では一人当たりのお茶の消費量が減り、それに伴いお茶の価格も下がり、農家や圃場面積が減る負のスパイラルが起きています。食料安全保障の点でもこの流れを変えていく必要性を感じており、まずは茶農家の経営がしっかり成り立つ環境が必須と考えています。この状況を打開する解決策の
一つが現状伸びているお茶の輸出にあると考えています。
今の海外市場は、既に認知されている抹茶や日本茶によって形成されていますが、次は「和紅茶」の認知を作り出して新たな市場を作り出したいと考えています。弊社の商品は独特な甘みや香りがあり、紅茶の各種アワードの獲得により食品業界の権威ある方々からも認められていることに加え、工場では量・質を担保できる生産ラインも構築できており、世界に打って出る最適なタイミングと考えています。また、今後はEUや北米の事業者などと販売提携を結び、現地のターゲット顧客に自分たちが直接価値を伝えられるような販売網も構築したいと考えています。弊社の取り組みが日本のお茶の輸出拡大の一助となり、日本のお茶の生産量を増やしていくきっかけになれば幸いです。父からも教えられた「日本のお茶は人々の心を豊かにする」という信念を大切にしており、是非世界の人々の心を日本のお茶で豊かにしていきたいです。

紅茶「べにふうき」

今後の日本茶の発展に向けて

新しい働き方、お茶による日本文化の発展、会社の発展について、今後の展望をお聞きしました。

【堀口社長 インタビュー内容】
地元創生アグリプレナーとして地元活性化にも力を入れておりますが、お茶は地域に根付いた産業であり、そこでの雇用や資材調達などによる地域内経済循環への寄与は大きいと考えています。また、東京からもオンライン等を駆使して就業できる新しい働き方を採用しており、どこからでも地方での就業ができることを示すことで、地方活性化の新しいモデルとなっていきたいです。

そのうえで、特に若い方たちに伝えたいこととして、お茶や農業の良さがあります。ご存じの通り、お茶は日本で伝統ある文化となっていますが、最近はなかなか伝える機会がありません。当社の商品や事業を通じて、農業やお茶の可能性、モノづくりの楽しさを若い方たちにも伝えていきたいです。

最近では世界の方々から当社のお茶について声を掛けていただく機会もあり、日本のお茶の可能性は非常に高いと感じているので、世界に向けてさらに推進していきたいです。そして、地方から世界で戦える会社として1,000億円の会社を目指し、今後も社員一丸となって行動力を示せる会社にしていきたいです。

『日本茶AWARD』粉末部門 審査委員特別賞を受賞した「あらびき茶」


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