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植物工場でレタスを生産!?未来の美味しいを創るメガファームの取組とは。[Vol.2]

1720年から続く農家を法人化し、全国の農家や企業とも連携しながら、「食と人と農業の未来のために 美味しい食の安心、安全、安定」を創り続けているのが株式会社舞台ファーム様。

最先端のテクノロジーを駆使した、食料供給システムの構築をはじめ、土壌開発を通した環境に優しい農業など、多様な視点から農業を発展・進化させる取組を追求されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーが独自の栽培システムで持続可能な新しい農業の未来を創る植物工場での挑戦について紹介します。


農業の課題を次世代型植物工場が解決していく

農家として300年以上の歴史を持つ株式会社舞台ファーム様。未来の美味しいを創るための新たなチャレンジとして、宮城県美里町に次世代型の植物工場「美里グリーンベース」を開設しました。この「美里グリーンベース」では6種類のリーフレタスを生産しています。この「美里グリーンベース」を建設するに至った背景には、農業における課題解決が大きなテーマとして横たわっていました。その農業生産における課題と課題解決方法について、未来戦略部の西古 紋氏にお聞きしました。

株式会社舞台ファーム
未来戦略部
西古 紋氏

【西古氏 インタビュー内容】
舞台ファームの代表である針生は、法人化をする前には自分自身が畑に出て、レタスの生産もしていました。このレタス栽培を始めとした農業がどれだけ大変なことかについては、農家を継いだばかりの20歳ぐらいの時に、「こんなことは辛くて続けていられない」と正直、思ったそうです。それから農家の跡取りとしてそういった課題感を持ちつつ、「農業で儲かる仕組みを作ることが大切だ」という思いを持ち続けていました。代表が一人の農家として、農業の厳しさを知っていることに加え、高齢化や異常気象などによる安定生産の難しさといった背景の中で、環境変数の少ない大量生産ができる仕組みが必要だと考えていました。

農業をビジネスと考えたとき、「味・安全・安定生産」が大きくネックとなってきます。美味しいことに加え、安全であることは大前提ではありますが、安定生産のことを考えると、近年の気候変動のほか、高齢化による農業の担い手不足など、非常に難しい現状があります。また、何かを充足するとどこかが足りなかったり、農業を続けるためにはトレードオフの関係が多々発生することがあります。そこで、この日本の農業の課題を解決するためにはフードシフトをしていかないといけないと考え、その結果として「美里グリーンベース」を建設するに至りました。

美里グリーンベース内部の様子

新しい形の農業を実現する「美里グリーンベース」は、様々な捉え方をされていると感じています。例えば、「一生懸命、汗水流して働いて作った農産物だからこそ、すごく美味しい」という考え方もあります。それでも「持続可能な農業」について考えたとき、これだけ大変な作業であっても薄利で、担い手もどんどん離れて耕作放棄地が増えている現状を見るにつけ、明らかに厳しい環境の中で持続可能な農業を実現するための一つの答えが「美里グリーンベース」だと考えています。

先端テクノロジーで環境負荷を低減していく「美里グリーンベース」

農業の課題解決方法として植物工場を作ることにされた舞台ファーム様。これまでになかった次世代植物工場である「美里グリーンベース」では、どのようなテクノロジーや取組が実現しているのでしょうか。

1.次世代植物工場を支える先端テクノロジー

【西古氏 インタビュー内容】
農業の課題を解決するために「美里グリーンベース」では先端テクノロジーを導入して生産性を上げる仕組みを構築しています。通常の植物工場ではスポンジを使用した水耕栽培が多いのですが、当社では土をぎゅっと固めて四角いサイコロ状の形にしたソイルブロックを使用する「舞台ハイブリッド土耕栽培」を行っています。このような栽培方法をすることで、レタスの生育が良くなる可能性がわかってきました。当社のレタスを一般的な植物工場レタスと比べてみると1.5倍から2倍程度、サイズが大きいのが特徴です。このサイズの大きさは土を固めていることによって根の張りに影響しているのではないかと考えています。

これについては、東北大学との共同研究で解明を目指しているところです。一般的な植物工場で行われているスポンジを使った水耕栽培の場合、根がスカスカとなりますが、土を固めた状態で育てる土耕栽培の方が植物の根の密度が濃くなります。狭い場所で育つ根の方がよく成長する傾向があるので、結果として「固めた土の方が、根が張ってよく育つのではないだろうか」「水や栄養の吸収率が良くなることが言えるのではないか」と仮説を立てています。「『美里グリーンベース』のレタスはなぜ大きいのですか」という疑問をきっかけに共同研究を始めたんですが、研究結果によってはこれから「野菜の生育のためには、土は固めた方がいい」という内容が定説になる可能性を秘めているんです。

ソイルブロックを使用した「舞台ハイブリッド土耕栽培」

2.環境負荷を低減する植物工場

【西古氏 インタビュー内容】
「美里グリーンベース」は環境に配慮した植物工場でもあります。キーワードとして「土・肥料・水・電気」があります。

まず土について、「美里グリーンベース」から出荷するレタスの約半分は工場で土を全部落としています。そのため、一度使った土に栽培に必要な栄養素をブレンドし、もう一度、レタスが育つ土の状態に戻す実証実験を行っています。土は地球上で有限な資源ですから、再利用する形を目指しています。

次に肥料と水については、工場内を循環する仕組みになっています。水がレーンを流れてレタスに散布される仕組みとなっていますが、散布後は肥料と水が混ざったものが浄化槽へと流れていきます。そこでもう一度、肥料と水に分離して再利用し循環型の仕組みを取り入れています。

また電気については、LEDだけでなく太陽光も取り入れることで、電力使用量を低減しています。そのほか、工場内のLED照明もソーラー発電でまかなおうと取組を進めています。

美里グリーンベースで実践されている環境負荷を低減する取組

農業が変わっていく未来

舞台ファーム様では、農業はエネルギー変換ビジネスへのチャンスになると考え、「農業はエネルギー会社だ」という考えのもと、「美里グリーンベース」に様々な最先端技術を導入されています。舞台ファーム様が考える、農業の未来についてお聞きしました。

美里グリーンベース

【西古氏 インタビュー内容】
当社の「美里グリーンベース」に対して、植物工場という言葉だけであまり良くないイメージを持たれている方もいるかもしれません。なので、「日本、いや世界で一番エネルギー効率の良い植物工場を作ってやろう!」という意気込みで取組んでいます。エネルギー消費を効率化できる植物工場であれば、農業は環境にいいんだというイメージを消費者の人たちにも広めていけることができると思っています。最近では「SDGs」や「エシカル商品」「ESG投資」など、エコに対する興味・関心が強い方々にこのような商品が選ばれる傾向があります。私たちとしては本質的に環境にいいものを提供しているからこそ、当社の野菜を選ぶ=SDGsなどに繋がっているんだ、ということを知ってもらいたいと思っています。

最新鋭のLEDでレタスを栽培する様子