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日本のお茶文化を発展させる企業のフードシフトな取組 [Vol.3]

創業以来70年以上にわたり地元の契約農家さんと手を取り合い、日本の文化であるお茶を製造している鹿児島堀口製茶様。

茶の栽培(契約農家を含む約300ha)から荒茶製造、製品販売に至るまでの茶業一貫で経営され、アイデアを生み出す『発想力』と、実際の茶づくりに活かす『行動力』を原動力に、旧来の考えにとらわれず、常に新しい方法をお茶づくりに取り入れ、世界の高みを目指して走り続けていらっしゃいます。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの、外部専門家と共に新しい農業経営に挑戦するその取組を紹介します。


外部専門家とともに築く新しいCXOグループ

日本の農業を取り巻く事業環境が著しく変わる中、製品開発だけでなく常にその経営手法にも新しい方法を取り入れている堀口製茶様。喫緊の課題である人材不足に対しても、外部の複数の専門家をCXOグループとして迎え入れ、社内・社外の人財を存分に生かす新しい経営手法を試されています。本来、CXOは特定の業務における責任者を指しますが、堀口製茶様では「責任」だけではなく、「共に実現」する新しい形のCXOグループを作り、活動しています。
今回はその、CXOグループのメンバーである、堀口社長、テラスマイル 生駒氏、食農夢創 仲野氏、九州アイランドワーク 馬渡氏、エニシードコンサルティング 荻須氏に、このCXOグループが堀口製茶様をより活性化させる取組についてお聞きしました。

草取りの様子

【堀口氏 インタビュー内容】
農業分野において、高齢化や就農人口減少により厳しい経営環境が続き、大規模経営が求められる状況になっています。しかし、実現するためには様々な課題を解決していく必要があり、親族や社内の人材のみでは非常に困難という状況があります。そこで、堀口製茶では、外部のスペシャリストにCXOとして参画いただき、一緒に課題を解決していく新しい農業経営の形を作っていこうとしています。

CXOの皆さんとはほぼ同じタイミングで知り合い、初めの2~3年はそれぞれ個別でのやりとりが準備期間となって信頼性をもって、さらに異質の才能を混ぜるタイミングが来たと感じていました。そこで、CXOという立ち位置で事業に参画してもらうことで、効率的で、より本質に迫った連携ができると考え、今の形になりました。当社だけがメリットを得るのではなく、各CXOに対しても何かしらのメリットがあるよう、堀口製茶から情報を発信するなど、シナジー効果が創出されるように心掛けています。

組織マネジメントに関しては荻須氏、デジタルマーケティング戦略等は馬渡氏、地方創生・ネットワーキングに関しては仲野氏、スマート農業などの先端技術は生駒氏にお願いし、その他にも、他県での行政との連携サポート、海外展開におけるサポート等について、アドバイスをいただく事もあります。大事なポイントは、各メンバーから客観的視点と主観的視点を織り交ぜた知見をいただき、社内に近い距離感で連携を図ることで、従来の外部サポートという枠を超えた共創と効果が得られることです。まだ始まって間もない取組ですが、更に強化していきたいと考えています。

堀口製茶のCXOメンバーから見た堀口製茶と日本の農業

CXOのメンバーとして堀口製茶に携わることで感じる、堀口製茶の特徴、および日本の農業についてお聞きしました。

1.シームレスな情報共有による社外人財のフル活用

【仲野氏 インタビュー内容】
私は横浜に在住しており、農林漁業者とのネットワークや都心での販路拡大等をサポートをしています。2020年3月から関与していますが、コロナ禍以降はオンライン会議やメッセンジャー等を使って、常に情報共有をすることが可能となり、今の仕組みが機能する環境になったと感じています。

通常、経営支援をする場合には経営者との付き合いになりがちで現場がみえづらくなってしまいますが、今回のCXOグループでは様々な情報を社内・社外から得ることができ、多角的な支援が可能となりました。また、CXOの皆様の専門性を理解しつつ、自分の役割が明確化されたのも大きなメリットと感じています。大企業でもやっていない仕組みを構築し、私達が力を発揮できる環境があるのは堀口製茶ならではの取組だと思います。地方の農業分野においては、圧倒的に経営人材が不足していますが、外部の優秀な人財を活用している良い参考モデルになり得ると感じています。

Chief Network Officer
食農夢創 代表 仲野氏

2. 農業の枠にとどまらない事業の拡張

【馬渡氏 インタビュー内容】
当社は堀口製茶との資本関係もあり、元々関係性が強く、CXOとして一緒に仕事をすることにまったく違和感はありませんでした。10年以上、チームラボやITベンチャーで経験を積んでおり、新規事業の立ち上げやデジタル領域にて様々な企業と共創して事業やサービスを作り出してきました。その経験を活かしたいと考えて、参画しています。

私は宮崎県出身で、祖母や親戚が農業を営んでいるのを長い間見ていたので、堀口製茶の農業への取組や事業の幅広さを見た際、大きな驚きを覚えました。特に、堀口製茶は永続的な企業を目指し、様々な「再投資」に重点を置いていることが、従来の農業と大きな違いとして挙げられると思います。これまで私が見てきた農業では、「設備や技術」など、投資する領域の狭さを感じていましたが、堀口製茶が考える投資領域は広く、可能性や面白さを非常に感じています。

一方で課題として感じるのは新しいことを始めるさいの組織づくりです。これまで触媒役(プロジェクトマネージャー)として様々な企業の担当者とWEBサービスやアプリを開発してきましたが、出来上がる成果物のクオリティは社内の担当者の能力に依存してしまうことが多いと感じています。
農業分野においては、人材不足に加えて、特にデジタルやデザインに関する知識や能力の差が生じており、農業の枠にとどまらない事業の拡張を進めるなかで、課題を感じることはありました。しかし、堀口製茶でデジタル人材を募集し、雇って体制を大きくするより、弊社がその役割を担い、順次インハウス化を進める事で開発スピードを落とさず、解決に向かっていると感じます。
デジタル分野は一例であり、様々な分野で人材不足が生じる可能性がありますが、堀口製茶のようにCXOとして社内メンバーに近い立ち位置で役割を担うことで、仕事の質、コスト、コミットメント等全てに関して大きな違いを生み、大変ユニークな解決策になると感じています。

Chief Marketing Officer
九州アイランドワーク 代表 馬渡氏

3. 組織のパフォーマンス最大化を目指して

【荻須氏 インタビュー内容】
優秀な社員を採用しても組織は優秀にならず、また、社員個々のパフォーマンスを上げることと、組織のパフォーマンスを上げることは別物です。この点について堀口社長に共感いただけたことが参画のきっかけとなりました。そして、「鹿児島発のお茶で世界を変え、幸せにしたい」という熱い想いに心を打たれて支援を決意しました。

それ以来、顧問として堀口製茶には時々訪問し、幹部や担当者の方々とお話をしてきました。そこで感じたのは、経営層の考えが管理職に伝わっているどころか逆の考えを持っていたり、管理職の考えと反した行動を社員がとっていることが散見されました。そこで私の役目としては、まず個々の社員が同じ方向のベクトルを持てる組織づくりだと感じています。そして、堀口製茶を世界企業にできるよう、個々のパフォーマンスを上げるとともに、組織のパフォーマンスを上げる支援に注力したいと考えています。

Chief Well-being Officer
エニシードコンサルティング 代表 荻須氏

4. 新しい農業経営のモデル

【生駒氏 インタビュー内容】
堀口製茶の経営スタイルは、農業に経営者という役割が顕在化した際の新しい形だと思っていて、堀口社長は新しい農業経営者のモデルになるべき人材だと考えています。従来、農業経営者は三国志の張飛のように豪傑なイメージがありますが、これからの経営者は皆をまとめて適材適所の人材を配置できる能力が求められます。

CXOグループに関しては、それぞれがリーダーなので、不安定な状況を共有し、経営目線で会話できる特徴があります。他のCXOの皆様もそれぞれの想いと人生があり、大変リスペクトできる関係です。皆様の知見を日々聞けることも、同じ船に乗るメリットです。

このような新しい農業経営のモデルを作ることに伴走したい想いで支援をさせてもらっています。

Chief Information Technology Officer
テラスマイル 代表 生駒氏

堀口製茶と日本の農業の未来

堀口製茶及び日本の農業の可能性や発展に向けた展開についてお聞きしました。

堀口製茶の緑茶

【仲野氏 インタビュー内容】
今後はどの業界も人材不足を補うために、外部人材の活用は重要になると考えていますが、なぜ必要なのか、外部に何をして欲しいかなどを明確に伝えることが必要です。そこが曖昧であったり、うまく意思疎通ができなければ、外部の能力をうまく生かせず、互いに良い結果を生みません。その点で、堀口製茶のCXOグループの仕組みは、他の農業法人や企業にとっても大変参考になると考えています。

農業分野の中で、堀口製茶が「元気印」となり、農業のイメージづくりをしていくことができるように支援していきたいです。従来のお茶の飲み方だけでなく、新しい食べ方・飲み方など様々な可能性に繋げる取組を堀口製茶が最前線に立って開拓していくことを支援し、それを全国の農業法人へ波及させ、最終的には日本の第一次産業を盛り上げたいです。そして大事なことは、「元気印」として発信しつつ、かつ会社の利益をしっかり出せるように支援することであり、それが私達CXOに課せられた任務と感じています。

【馬渡氏 インタビュー内容】
農業というフィールドの中で、堀口製茶が新しい農業分野での働き方を作り、そこで活躍できる人材が集結し、生きがいを持って仕事をしていく会社づくりの支援をしていきたいです。働き方改革等の課題が叫ばれている昨今ですが、お給料のために働くということ以上に生きがいを感じられ、かつ事業の発展を促す環境づくりができれば、今の課題の多くは解決できると考えています。そして、その解決モデルを堀口製茶で実現する支援ができれば大変嬉しいです。

茶畑での作業風景

堀口製茶・日本の農業の発展に向けた展開

【荻須氏 インタビュー内容】
私のミッション、そして私が思う堀口製茶の将来像は大変シンプルです。個人と組織のパフォーマンスを上げる支援をしながら、究極的には「この会社で骨を埋めたい」、「この会社で仕事をして人生が豊かになった」と社員や関係者の方が思えるような会社づくりのお手伝いをすることと考えています。

【生駒氏 インタビュー内容】
ほぼ全ての農作物流通が、「川下企業主体で規格・サイズ・品種・商品がルールメイクされる」代えがたい業界構造において、志布志の志を持った町から、農業法人がフードサプライチェーンをルールメイクできる、もしくはルールメイクを仕掛けられる会社になってほしいと思います。そして、20年後、堀口社長のお子さんに、「昔、お父さんは・・・」という話をいつかできるように支援を継続していきたいです。


【堀口氏 インタビュー内容】
社内のメンバーは、親族の経営陣や茶師、技術顧問など様々であり、個々の考えを汲み取って会社運営するのは至難の業です。私が目指す組織は、社内・社外を問わず、私が考える方向性に向けて推進でき、かつ個人が成長したり気持ちが前に向くように会社と個人の間にシナジー効果をもたらせることが大前提です。このCXOグループは、新しい農業経営の一つのモデルになればと思いますが、実践に難しさを感じる方もいるかと思います。しかし考えて不安になるようであれば、まずは行動してみることをお勧めします。また、基本的には自責思考を持って覚悟を持って進めなければ、何事も始まらず、いいわけばかりが生まれてしまいます。常日頃から自責の心を持ち、自分自身に問うことで、新しいものが生まれてくると自分自身にも言い聞かせて経営に臨んでいます。

今後、WEB3をはじめとしたデジタル技術の進歩により、世界がよりコンパクトで、スピーディになる中で、皆さんが心豊かに暮らせるために、安らぎを与えてくれるお茶を生かしたいと考えています。お茶で与えられる幸せは一部ではありますが、自分達が出来ることと出来ないこと、外部の方ができることなどの情報を共有し、皆が同じものを見ながら推進することで解決できることが多くあると経験できました。そして、同じように世界の人々が同じものを見て話すことができれば世界はより平和になると感じており、一つの成功モデルとなれるよう努力していきます。