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「おにぎり」を通して、日本食の魅力を再発見

今やブームといえるほどの「おにぎり」人気。この「おにぎり」を通して、日本の風土や食文化を再発見しながら、「おにぎり」を国内外に普及させていくことを目的に設立された一般社団法人おにぎり協会様。

「おにぎり」を「ファーストフード」であり「スローフード」であり「ソウルフード」であると定義し、お米をはじめとする、塩・海苔・具等、様々な食材からその産地の魅力を発信、おにぎりの世界的な認知拡大と日本人のお米離れ解決を目指した活動等を実施されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの日本の食文化を普及させる活動について紹介します。


「おにぎり」の地位向上のために

国内外に向けておにぎりの普及活動に努めているおにぎり協会様。代表理事の中村 祐介氏に協会設立の経緯や取組の特徴などについてお聞きしました。

一般社団法人おにぎり協会
代表理事
中村 祐介氏

【インタビュー内容】
仕事を通じて海外の方々と触れ合う機会が多かったのですが、日本の食文化として「おにぎり」について説明を求められた際、うまく説明ができませんでした。その時に、おにぎりに関する資料や文献を探したのですが、あまり良いものが見つからず、これほど身近な食にも関わらずスポットライトが当たっていないことに問題意識を感じました。
そこで、2013年頃に有志が集まり、おにぎりの情報発信を始めたのがこの団体のきっかけです。元々、私が大手新聞社系出版社の編集記者をしていたこともあり、当時から食関係でつながりのある雑誌の編集者や食関連の先生などが集まりました。シンプルにおにぎり好きの方から、おにぎりを通じた食育を考える方など、様々な人が集まり、それぞれが取組を行っています。現在、私自身もIT・デジタルマーケティング会社を経営しながら、10年近くおにぎり協会の活動も継続しています。田植えや収穫の時期は取材等が重なり大変なこともありますが、おにぎりにスポットが当たることに大変やりがいを感じています。

一般社団法人おにぎり協会のロゴ

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、難しい和食メニューが多く、広がり難い状況にあったと感じていました。そのような中、シンプルなおにぎりに興味を持ち始めた方が増え始め、同時にSNSの普及もあいまって、キャラ弁から始まったお弁当ブームがおにぎりへ移行、さらに「おにぎらず」がブームとなったことがおにぎりが注目される転機になったと感じています。「おにぎり協会」も初めは名前だけで笑われたこともありましたが、2015年頃には応援メッセージを頂けるまでになりました。

海外では昔からおにぎりに興味をもっている方々はいましたが、正確に名前まで把握されている状況ではありませんでした。イタリアのミラノ万博でイベントをした際、「おにぎり」ではなく、アニメで見たおにぎりを食べるシーンを覚え、現地ではそのアニメの名前で呼ばれていたこともあります。しかし、インターネットを通じて海外でも認知されるようになり、この10年で徐々におにぎりの名称も浸透してきたと感じています。

日本各地の多くの個人サポーターに当協会へ登録してもらい、中には海外からの登録もあります。最近では活動の認知も順次広がり、イベントを開催すると、2日で70組程度はすぐに埋まってしまう盛況ぶりです。おにぎりの種類や作り方などは各個人のスタンダードで成り立っている料理であるため、具材や握り方などの様々な「違い」をイベントで発見することに感動される方が多いです。誰もが知っている料理であるため、子供の食育イベントに呼ばれることが多く、障がいがあるお子さんでも食べやすく、楽しんで食べられる点が人気の理由になっていると考えています。

ミラノ万博で開催したイベントの様子

おにぎりを広める様々な取組

おにぎりに関する幅広い普及活動についてお聞きしました。

1.おにぎりに関する幅広いサポート

海外でおにぎりに関する事業を始めるには、日本との環境の違いがあり、いくつもの課題が生じます。そこで、当協会では海外進出のサポートをしています。初めておにぎりをつくる海外の方には、作り方マニュアルのサポートから始まり、炊飯器メーカーの紹介なども行っています。日本から海外進出を希望される比較的規模の小さな事業者様へは、日本の商社を紹介し、円滑に事業を開始できるサポートをしています。国内外で喫食機会をつくり、フィードバックをもらうなどもしています。

国内ではおにぎり店の開業がラッシュを迎えており、当協会のサポートも非常に忙しくなっています。例えば、一次生産者でおにぎりの事業を開始されたい場合は、商品販売の経験がないことがネックになるケースがあります。そこで、おにぎりの特徴をうまく出す企画方法、パートナーとの関係構築や仕入れ方法、販売ノウハウに関するサポートなどをしており、おにぎりに関することであれば幅広いサポートを行っています。

大使館や海外でのおにぎりの提供

2.おにぎりに関するセミナーや食育活動

広報活動として、おにぎりセミナーや、おにぎりを通じた食育などを国内外向けに行っています。先日は、おにぎりについて食育のオンラインセミナーを米国で行ったところ、 250名にご参加いただきました。源氏物語、北斎の絵におにぎりがでてくることや、日本の花見文化や弁当文化には欠かせないものであることなどを大変興味深く聞いていただきました。また、小麦に比べて水分量が多く、ごはんが冷めることで増加する「レジスタントスターチ」というデンプンによってダイエット効果があることなど、おにぎりの機能や効果などについても話しました。米国の方々は特におにぎりの機能性に興味深々でした。

国内では、食体験イベントを行っています。手洗いから始まり、「おにぎりは何粒のお米でできている?」、「おにぎりは2300年前からある?」などのクイズを交えながら、興味を持ってもらえるように進めています。おにぎりの握り方などの実用的なセミナーについては大人向けに行うことが多いです。おにぎり専門店のぼんごさん、宿六さんに、握り方を教えてもらうセミナーを企画すると、すぐに満席になるほどの人気ぶりです。また家族で参加できるプログラムもあり、コミュニケーションを豊かにするツールにもなっています。

和食メニューは一見難しいイメージがありますが、非常に分かり易いおにぎりは、和食文化を広く伝える役割を担っており、新たな和食の魅力を再発見するきっかけになるものと考えています。

食体験イベントの様子

3. おにぎり協会認定商品の展開

当協会では、おにぎりに関連する商品などに対して、認定証を発行しています。陸前高田市ブランド米「たかたのゆめ」をおにぎり協会認定商品として登録して東北の復興に繋げるなど、様々な商品の認定活動をしています。最近では、日清食品さんの「おむすび屋さんのまかないスープ」を認定したほか、おにぎりを包むのに使うホイルの認定なども行っています。また、子供食堂向けにおにぎりコンテストの審査員なども行い、小学生からの質問に答えることも活動の一環です。

認定証を発行したり、認定証商品(写真はサンホイルの場合)に認定マークを記載する

おにぎりはベースとなるコンセプトはあるものの、誰でも調理ができ、厳しいルールがないものとして広めていきたいと考えています。ITの世界でいうと、オープンソースのプラットフォームです。日本発祥のものであり、基本形はありますが、それに縛られない、誰もが自由に変化を加えることができるものがおにぎりです。例えば、香港のコンビニにあったザリガニおにぎり、ブラジルで食べたイチゴおにぎりなど、驚いたおにぎりは世界に沢山あります。形は様々ですが、大事なことは、日本発祥のおにぎりという認識が広まることと考えています。

香港の「ザリガニサラダおにぎり」と台湾の巨大おにぎり

今後のおにぎり協会の展開

おにぎりの更なる普及に向けて、今後のおにぎり協会の展望についてお聞きしました。

【インタビュー内容】
おにぎりに使うお米が、日本の課題になっている食料自給率の向上に寄与する点をしっかり訴求していきたいです。当協会だけでは限界があるため、おにぎりの具材等の生産地である自治体と連携し、「おにぎりサミット」を実施して更なる普及を目指した企画を考えております。各自治体、各生産者は課題を持っており、例えば具材となる良い野菜を生産しても低い認知度に困っていたり、地域経済が単品生産物に依存して不安定になっているケースなど様々です。一方で、米業界は長年多くのブランドが育っており、他の農業生産者の抱える解決ノウハウを蓄積している業界と考えています。そこで、課題を持った生産者と解決ノウハウを持った生産者が互いに情報を共有できるような枠組みを構築し、日本の農業や産業を前に進める取組にしたいと考えています。

一般社団法人おにぎり協会 中村 祐介代表理事(左)と南魚沼市 林 茂男市長(右)

2024年2月2日に東京でおにぎりサミットを開催する予定です。新潟県南魚沼市を中心に、新潟県村上市、和歌山県みなべ町、福岡県柳川市らが加わり、さらにその輪は拡がろうとしています。今年度はプロトタイプ的に行い、次回に繋げられるよう改善していく計画です。最終的にはおにぎりがラーメンやお寿司のようにグローバルで認知され、国内外からおにぎりサミットへの参加者が得られるように努めていきたいです。

おにぎりサミット参加自治体の名産品
左上:新潟県南魚沼市の米  右上:新潟県村上市の鮭 
左下:和歌山県みなべ町の梅 右下:福岡県柳川市の海苔

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