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日本が誇る「お茶」から広がる、未来の農業の可能性[Vol.3]

和食の文化に欠かせない「お茶」を中心に、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現を目指し、ライフスタイルの変化に対応した新しいお茶の楽しみ方や商品を開発してきた伊藤園様。

「茶畑づくりから茶殻のリサイクルまで」の一貫した環境経営を行っており、独自の農業モデルである「茶産地育成事業」の展開や、茶系飲料製品の製造過程で排出される茶殻のリサイクルなど、持続可能な農業に向けた取組みに挑戦されています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの取組の第3弾として、新商品の開発や広告を担当するZ世代社員の今の業務や生活でのフードシフトな取組をご紹介します。


これまでの経緯や食や農への取組・想い

マーケティング本部で緑茶飲料の商品開発に携わる緑茶ブランドグループ 倉橋 悠太氏、商品の広告・PRに携わる広告宣伝部 飯尾 海氏に、入社の経緯、現在の業務や、食や農に対する想いについてお聞きしました。

株式会社伊藤園
マーケティング本部 緑茶ブランドグループ
倉橋 悠太氏

【インタビュー内容】
(倉橋氏)
2016年、SDGsがそれほどまだ認知されていない黎明期に、世の中へのSDGsの広げ方や活用の仕方についての研究を学生時代に行っておりました。就職活動の際には、何をやりがいとすべきかを考えた結果、衣食住の生活に寄り添うものに携わりたいと思い活動を始めました。また、自分の携わった仕事が目に見える「メーカー」に魅力を感じ、誰もが飲む「お茶」が決め手となり、当社への入社に至りました。学生時代に学んだことが直接業務に活かされているわけではありませんが、環境だけでなく、社会や経済にも関わるSDGsの広い視点で商品を見ることができています。

担当している商品
(左:お~いお茶 緑茶、中央:お~いお茶 新茶、右:さくら緑茶)

現在は、緑茶ブランドグループに所属し、「お~いお茶」を中心とした緑茶ブランドの商品を担当しています。具体的には、新商品開発をはじめとした「お~いお茶」ブランドのブラッシュアップを行っています。これまで緑茶飲料のメインユーザーは40代以上の方が中心で、私たちと同世代のお客様に向けた魅力の発信がなかなかできていないのが現状です。当社としても20、30代のお客様にも緑茶を飲んでいただけるよう、新商品の開発に取組んでいます。例えば、2月に若年層の女性をターゲットとして発売したさくらフレーバーの「さくら緑茶」の開発や、毎年発売している「新茶」のパッケージをアニメ調にして若い世代にも手に取ってもらいやすくする取組に携わりました。ありがたいことにこれら商品はターゲットのお客様から大変好評をいただきました。今回は期間限定の商品でしたが、得られたヒントを活かし、皆様に愛される「お~いお茶」の商品開発を行いたいと考えています。

株式会社伊藤園
マーケティング本部 広告宣伝部
飯尾 海氏

(飯尾氏)
学生時代は経済学部で環境管理会計を専攻し、CSRやCSVなど社会的な活動や環境を踏まえた経営について勉強をしていました。就職活動は、祖父が喉頭癌で食事ができない状態を見た際に、食事のできる素晴らしさを改めて感じたこともあり、食品会社へ入社したいという想いに繋がりました。将来的には専攻を生かせる財務や会計にも携わりたいとも思いますが、学んできたことは働くうえでの基礎知識として役に立っています。

広告を担当している商品
(左:お~いお茶 〇やか(まろやか)、中央:晴れのち曇り時々お茶、
右:月夜のお茶とまた明日)

現在は広告の業務に関わっており、緑茶のフルーツティー「晴れのち曇り時々お茶」や「お~いお茶 〇やか(まろやか)」など、若者向け商品の広告を担当しています。若い世代に、商品をどのように広めていくかについて頭を悩ませながら、人気インフルエンサーの活用や、若者の共感を得られそうなCMづくりなどに取組んでいます。「晴れのち曇り時々お茶」についてはSNS上で約2,500万回再生、「お~いお茶 〇やか」のCM好感度調査でも比較的上位の評価を得られるなど一定の手ごたえはありました。しかし、その結果がそのまま売上向上に繋がるわけではなく、今後は実際にお客様に手に取ってもらえるようなコミュニケーションを考えていきたいです。

若い世代にはもっと緑茶を飲んで欲しいのですが、様々な飲料やブランドの中から、当社の商品を選んでいただく難しさを日々実感しています。お客様は日々多くの情報に触れていて、価値観も多様化している中で、新たなコミュニケーション展開を通じて、商品のファンになってもらうことが当面の課題です。私が担当させてもらっているように、チーム内で若いメンバーが増えており、そのメンバーが積極的に提案できる環境があります。そして、「晴れのち曇り時々お茶」や「お~いお茶 〇やか」はその環境から生まれた良い事例の一つであり、これからもチャレンジしてより良い商品をお客様にお届けしたいと思います。

Z世代社員が取組むそれぞれのフードシフト

これまで携わったフードシフトに関る業務や、個人の取組についてお聞きしました。

1.体験イベントを通した日本のお茶づくり応援

【インタビュー内容】
(飯尾氏)
お客様とお茶の木の植樹やお茶をつくる体験などを通じて、日本のお茶を未来につなげる活動「お茶サポーター」を今年の6月~7月に鹿児島、埼玉で行いました。応募いただき当選されたお客様に、植樹、お茶摘み、お茶づくり体験に加え、植樹されたエリアで摘採された新茶(一番茶)をプレゼントする企画です。植樹したお茶の樹は、お茶が摘めるようになるまで5、6年かかるため、その大変さやお茶の持つ魅力・価値を知っていただき、食への興味を持っていただける活動だと思っています。私も鹿児島、埼玉にスタッフとして参加しましたが、お客様は想像以上にお茶に興味を持っていただき、沢山のご質問や楽しかった、また来年参加したいなどの感動のお言葉をいただきました。実際にお茶の産地で体を動かしてお茶に触れていただくことで、お伝え出来ることの幅が広がることを実感しました。このようなお客様の心を動かすことのできる体験の機会を今後も継続してつくっていきたいと思います。

「お茶サポーター」の活動
(左:お茶の木の植樹体験、右:お茶摘み体験)

(倉橋氏)
私も「お茶サポーター」に携わり、お客様の反応を実際に見ることで様々な発見がありました。フライパンでお茶の葉に火を入れた際はその香ばしい香りに驚かれたり、手でお茶の葉を丸める作業を楽しそうにしているお子さん達を見て、企画をやった甲斐があったと感じると同時に、実際に手にして体験することで、食や農への興味を持つきっかけになることを目の当たりにしました。アンケート結果でも、実際にお茶と触れ合える手もみの人気が非常に高く、体験が感動を呼ぶことが分かりました。

お茶づくり体験

2.業務を通じて変化した食への興味

【インタビュー内容】
(倉橋氏)
入社後に生産現場や加工現場に行く機会があり、生産に携わる方々が商品ひとつひとつにこだわりを持っていることを肌で感じられたことです。
当たり前に飲んでいた1本のお茶にも、販売に至るまでに様々な方の想いが詰まっていることを肌で感じることができ、これまで以上に商品に対する感謝の気持ちを持つようになりました。また、プライべートにおいて、食に対して価格だけでは選ばなくなり、なぜこの価格で売られているのかを考えて買うようになったのは、業務を通じて食品が製造される背景を自分の目で確かめることができたからだと思っています。

(飯尾氏)
入社してから、茶農家の方々がどれだけこだわりを持ってお茶を作っているかを強く感じ、また初めて茶畑を訪れた際の、一面に広がる新茶の美しさはいまでも忘れられません。一方で、広告を通してその価値を伝えることは難しく、同時にもどかしさも感じています。 日常の中に当たり前に存在する“お茶”ではありますが、そこに詰まっている生産者の方の茶葉一枚にかける想いや、茶農家様と協力して茶畑からつくる当社こだわりの味づくりを感じてもらえるようなコミュニケーションを目指していきたいです。プライベートでは、スーパーなどの買い物の際に、以前より食品の原産地が気になるようになりました。その理由は、お茶に関わる業務で経験したことが影響していると感じています。

茶農家さんが作るこだわりの茶葉

3. 大学生と取組んだ新商品開発

【インタビュー内容】
(飯尾氏)
若者向けのお茶として開発した「お~いお茶 〇やか」は、あまり押し出してはいないのですが、実は、国産一番茶100%の商品です。この商品は、大学の研究室と連携し、学生と一緒にコンセプト開発から始めたのですが、彼らが茶畑で飲んで美味しいと言った一番茶をもとに味づくりをしました。この一番茶、お茶農家様は一番茶が売れないと経営が成り立たなくなるとおっしゃるほど重要です。しかし、一番茶の美味しさや価値はなかなか伝わりづらく、それができなければ茶業の発展もありません。今回の「お~いお茶 〇やか」は、若い世代の方々に一番茶を使ったお茶の魅力を、少しでも体験していただけるきっかけになったのではと思っています。一緒に商品開発をした学生も、もともとお茶を好んで飲んではいなかったのですが、この味わいならおいしくて毎日続けられるという意見でした。さらに商品名、パッケージデザイン、CMのコンテなども学生にアイデアを出してもらい、1年ほどかけて商品が完成。私も大学生と近い世代ではありますが、苦渋みのないあまみのあるお茶が飲みたいという発想は斬新でした。

また、SNS等で常につながっていたい世代と思っていましたが、一日の生活スタイルや感情の変化を探ってみると、想定よりもさっぱりしたドライな面があるなど、当社としてはこれまで気付いていなかった若い世代の感覚を発見でき、貴重な資産を得られる取組になりました。

商品開発で連携した大学生の皆さん

食や農に対する同世代へのメッセージ

インタビューにお答えいただいたお二人

【インタビュー内容】
(倉橋氏)
「お~いお茶」ブランドは緑茶飲料販売実績で世界No.1ですが、国内の清涼飲料水ブランド全体でみると、上位のブランドがあります。できるだけ早く清涼飲料水全体の中で上位に位置すること、即ちお客様により選択していただけるブランドになることが全社の想いです。その目標達成に向けて、日々の業務に努めていくことが当面の使命と感じております。

当社のみでなく、どの企業もこだわりを持って商品を手掛けていると思います。同世代の方々へは、どんな商品にしても、まずは手にして、試し、興味を持っていただく機会を増やしてもらいたいと思います。それが商品の価値を知るきっかけとなり、さらに皆さまにより興味をもって商品選びをしていただければ、農家様やメーカーのやりがいにも繋がると感じています。

(飯尾氏)
現在、若者向けの商品に携わっていることもあり、まずはお茶の良さ、おいしさを同世代の若者に広く伝えていきたいです。入社するまでは、私自身もお茶のこだわりやブランドにはあまり関心がありませんでしたが、業務を通じて感じた、茶葉1枚にかけるお茶へのこだわりや、繊細で奥深いお茶の面白さなど、お茶そのものの価値を伝えていけたらと思います。その結果、「お~いお茶」が皆様の生活に寄り添うブランドになりたいと思います。

同世代の方々には、一度色々なお茶を並べて飲み比べてもらいたいと思います。普段は1本選んで飲むことがほとんどだと思いますので、飲み比べることで、味の違いを発見でき、お茶への興味を持ってもらうきっかけになると考えています。そして、当社のお茶へのこだわりや美味しさを感じていただければ、大変嬉しい限りです。