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地元では食べられていなかった?奈良の高級伝統野菜「大和丸なす」の地産地消を目指す取組[Vol.2]

戦後まもない頃から奈良県大和郡山市(やまとこおりやま)三橋地区で栽培されてきた伝統野菜「大和丸なす」。高級食材として首都圏を中心に出荷されてきたこともあり、地元での食文化がありませんでした。せっかく美味しい野菜が地元にあるのだから、地元でも食べて欲しい、知名度を上げていきたいとの思いから、大和郡山市では10年前から「大和丸なす」の地産地消を進めようと取組を進めています。

地元でのさらなる認知・消費拡大を目指す活動の一環として、新たな販路を創出するべく産官学連携での「ピザバトル」を開催。コロナ前に実施していた開催日の試食では長蛇の列ができるほどの人気イベントとなっています。

今回はニッポンフードシフト推進パートナーの地元の大学生と一緒に伝統野菜の魅力を伝える取組について紹介します。


産官学連携イベント「ピザバトル」で伝統野菜「大和丸なす」の魅力を伝えたい

大和郡山市では、伝統野菜である「大和丸なす」を地元の人にも手にとって欲しいと販路拡大・知名度向上を目指し、地元スーパーのイオン大和郡山店さんと管理栄養士を目指す大学生が連携したピザバトルを開催されています。
ピザバトルを主催する大和郡山市 農業水産課 課長 春名 宏昭氏、大和郡山市 農業委員会事務局 局長 北川 徹氏に今年度のピザバトルについてお話を伺いました。

大和郡山市 農 業 水 産 課 課長 春名 宏昭氏(右)
大和郡山市 農業委員会事務局 局長 北川 徹氏(左)

【インタビュー内容】
そもそも産官学連携のはじまりは、2017年に大和郡山市の保健センターに実習にきていた奈良女子大学の学生さんの中に、「ヘルスチーム菜良」という管理栄養士を育成する奈良県の4大学(奈良女子大学、帝塚山大学、近畿大学、畿央大学)で構成されるボランティアサークルのメンバーがおられ、当時、地産地消に一緒に取組んでいた保健センターの担当者とともに「大和丸なす」を使ったピザの考案をお願いしたのがきっかけでした。
その考案したピザをイオン大和郡山フェアで販売して大変大好評だったことから、継続して「大和丸なす」を使用した商品開発などの取組を実施できないかと考え、2018年からヘルスチーム菜良対抗ピザバトルが始まりました。
元々、地産地消や食育活動を中心に取組んでいるサークルですから地元の伝統野菜である「大和丸なす」を使用したメニューの考案はサークル活動としてもマッチした内容ですし、なにより県内にある大学の学生さんが参加するコンテスト形式だと、多くの方を巻き込むことで盛り上がりも、注目度もアップすると考えたのです。
2018年は奈良女子大学、帝塚山大学、近畿大学が参加し、その翌年からは畿央大学も参加し、現在の4大学による開催形態になりました。
2024年のピザバトルは、ようやくコロナ前に近い形で開催でき、多くのお客様と直接対話をする機会を持つことができたことで、学生のみなさんもお客様の反応を肌で感じることができたのではないかと、私たちも嬉しく思っています。

審査員の方々からは、「年々、ピザのクオリティが高くなっていて、審査をするのが楽しみである」という話しを聞いていましたが、今年は史上初のデザートピザをはじめ、ソースに工夫を凝らしたレシピが充実していたので、順位を付けるのが大変難しかったのではなかったのかなと思います。
今年度のピザバトルでは、これまでにないデザートピザを作り、独創性が評価された帝塚山大学が最優秀賞を受賞しました。次いで、こだわりのオーロラソースが好評で1位と僅差だった畿央大学、こだわりのたらこソースが評判だった奈良女子大学、味だけでなくピザのネーミングセンスや立体感のある販促物が好評だった近畿大学と続く結果になりました。

審査の様子

伝統野菜「大和丸なす」を極める!各大学のバラエティ豊かな着眼点がピザバトルの醍醐味

「大和丸なす」を使ったピザのレシピを考案するこのコンテストでは、各大学毎年さまざまな切り口で「大和丸なす」を調理します。
今年度のピザバトルで開発したピザについて、参加した各大学の皆さまに特徴やこだわったポイントなどお聞きしました。

1. 帝塚山大学 
ナスがフルーツに見えるピザ?史上初のデザートピザが最優秀賞に

帝塚山大学の松原 真理奈氏、藤本 詩織氏に、「ヘルスチーム菜良」の活動内容や2024年度のピザバトルについてお聞きしました。

帝塚山大学 ヘルスチーム菜良
藤本 詩織氏(左)、松原 真理奈氏(右)

【インタビュー内容】
帝塚山大学のヘルスチーム菜良には現在、管理栄養士を目指す学生を中心に40名ほどの学生が在籍しています。主な活動内容としては、子ども食堂での食育活動をはじめ、帝塚山大学の大学祭「虹色祭」でのブース出店や、企業とコラボした商品開発などがあります。ピザバトルもサークルでの大きな活動の1つとして、今年度は参加を希望した10名で挑みました。
今私たちは、3回生なんですが、実は去年もピザバトルに参加していて、今回で2回目の挑戦となります。ここ数年、帝塚山大学は最優秀賞をとることができていなかったので、今年こそは!という強い想いがありました。そこで、他の大学とは全然違う個性的で独創的なピザという視点で勝負しようと、デザートピザに挑戦しました。レシピの開発にあたっては、3つのコンセプトを設定して商品の試作を進めました。

コンセプトの1つ目は、甘じょっぱい新感覚なピザであることです。
これまでになかった新しい組合せとして、オレンジとナスを甘いシロップと煮立ててコンポートにしたものに、豚バラ肉を塩漬けにしたパンチェッタをトッピングし、新感覚と甘じょっぱい味付けを楽しめるように工夫しました。また、デザートピザという初めてのジャンルなので、全体的に食欲をそそるような彩りというのも考えながら作り上げました。
2つ目は、さっぱりクリーミーというコンセプトです。ピザを販売するのが6月という暑い時期なので、甘く重いものにはしたくありませんでした。そこで、コンポートにすることでさっぱりとした大人の甘さがありながら、さらにクリームチーズをとあわせることで爽やかなクリーミーさを表現しました。
3つ目は、自分へのご褒美ピザとして楽しんでもらえるような商品を目指したという点です。
普段デザートピザを食べる機会があまりない人に向けて、初心者の方でも手に取っていただきやすいような食べやすさ、というところにこだわりました。

実は、最初からデザートピザを考えていたわけではなく、初めは「大和丸なす」と合いびき肉のミートソース風のピザを試作していました。しかし、これまでにはないアイデアを求めネットなどでリサーチしていたところ、「ナスのコンポートというものがあるらしい」と知りました。実際に「大和丸なす」をコンポートにしてみたら意外と美味しくできあがり、さらには「大和丸なす」の肉厚で煮込み料理にも適しているという特徴も活かすことができる非常に相性が良い調理法だったんです。
その他のトッピングについても、大学の調理学の先生にアドバイスをもらいながら、使ったら面白そう!という食材を、とにかく試してみました。
レシピ開発においては、やはりこのトッピングを何にするかと、甘じょっぱい味を作り出すところが一番苦労した点ですね。人それぞれ味に対する感じ方が異なる中で、メンバー10人の意見をまとめて作り上げるのも難しかったです。そもそも、デザートピザの案には反対意見もあり、好きな人は好きだけれど、万人受けはしない、という難しさがありました。しかし、万人受けするものを作ってしまうと普通のものになってしまうので、イオンさんで行われた4大学合同の試食会で「デザートピザの発想は面白いね!」という反応をいただいたこともあり、デザートピザで頑張ることにしました。
さらに、4大学合同の試食会でのイオンさんからのアドバイスは、大変勉強になりました。例えば、「ピザのツヤ感が足りないから、お菓子の表面に塗るジュレ状のナパージュをのせてみたら?」という意見や、当初は生ハムをトッピングに使用していたのですが、「色味をもっと良くするためにトッピングは生ハムじゃなくてパンチェッタはどう?」など、具体的なアドバイスをいただきました。

試食会の様子

そういったプロの方々からアドバイスを参考に完成したのが、オレンジのさっぱり感と爽やかな香り、そしてそこに豚肉の旨味が凝縮されたパンチェッタをトッピングすることで、甘じょっぱい中にさっぱりさとクリーミー感を味わえるというテーマに合った組合せの『大和丸なすとオレンジのデザートピッツァ』です。

『大和丸なすとオレンジのデザートピッツァ』とレシピ

販売会当日は、家族や友人が買いに来てくれました。その中にイオンでアルバイトをしている友人がいたのですが、他のお客様が私たちのデザートピザを持って歩いていると「それ、美味しいですよ!」と声を掛けたくなるくらい美味しかったと言ってくれたのが印象に残っていますね。
また、審査員の方々からは、コンポートすることで「大和丸なす」の持ち味である食感が失われるのではないか、味の想像ができないとの意見もありましたが、実際に食べてみたら非常に美味しくて驚いたというコメントをいただきました。昨年度の悔しさが原動力となり、独創性を求めて信じて進んできて良かったなと感じました。最終的に、ようやく最優秀賞を受賞できた時は、泣くほど嬉しかったです。
ピザバトルは、大変なことも多くありましたが、「大和丸なす」という伝統野菜に触れ、奈良県にはまだまだ知られていない美味しい食材がたくさんあることを知る機会となったので、参加できたことに意義を感じています。

最優秀賞を受賞した帝塚山大学の参加メンバー

2.畿央大学 
オーロラソースの配合にこだわった「大和丸なす」主役のピザで勝負!

畿央大学の陶山 晴香氏、大前 空夜花氏、薮田 真歩氏に「ヘルスチーム菜良」の活動内容や2024年度のピザバトルについてお聞きしました。

畿央大学 ヘルスチーム菜良
薮田 真歩氏(左)、陶山 晴香氏(中央)、大前 空夜花氏(右)

【インタビュー内容】
畿央大学のヘルスチーム菜良は、現在100名ほどのメンバーが在籍しており、将来食品開発をしたいと考えている学生やピザバトルに参加するために所属する学生など参加理由は様々です。
食品開発の他に、栄養教諭を目指しているメンバーによる子どもたちへの食育活動も行ったりしています。ピザバトルは1年間の活動の中で長い期間の取組として、サークルの中でも大きな活動となっています。
今回のピザバトルには、参加を希望する20人ほどのメンバーで取組みました。
イオンさんのような大きな企業と商品開発が経験できる機会は中々ないので、以前ピザバトルに参加していた先輩の話を聞いてぜひ出たいと思いがありました。

今年度のピザバトルでは、味の決め手としてオーロラソースを使用し、ボリューム感があって彩りが美しく、どこを食べても同じ味が楽しめる配置にもこだわったピザを開発しました。
特にオーロラソースの配合には強いこだわりがあります。ピザの王道と言えばマルゲリータなどのトマトベースを思い浮かべる方が多いと思いますが、そこにアレンジを加えた新しいソースができないかな?と考え、マヨネーズとトマトソースのオーロラソースを思いつきました。
オーロラソースは、ピザソースとしての珍しさはありましたが、どちらかというと子どもに人気のソースで、大人にはちょっと物足りないと感じる方もいるのではないか、より多くの方に楽しんでいただける味にできるように工夫が必要ではないか、と考えていました。そこから、私たちが一番苦労したオーロラソースの開発が始まりました。特に時間がかかったのは、子どもから大人まで美味しいと思えるソースの存在感の高め方と個々の素材の配合割合です。そこで、プロの視点としてイタリアンシェフにもアドバイスをいただき、「もっと旨味を出した方が良いのではないか?」という意見を参考に、旨味が強いイオンさんで販売されているトマトミックスソースにニンニクと塩を加えることで、旨味とパンチを引き出した味わい深い畿央大学オリジナルソースが完成しました。

しかし、ようやくソースが決まっても、実際にイオンさんで商品化するためには、イオンさんで取り扱っているメーカーのマヨネーズを使用するなどの制約もあり、さらにそこからも苦労がありました。使用するマヨネーズが変わるとソース全体の味も変わってしまうので、自分たちが元々開発したソースに味を近づけるために再び配合を試行錯誤し、かなり時間がかかりましたね。
最初に試作したソースが出来上がったのが12月、商品化に向けた調整をして最終的なOKが出たのは3月でした。長かったです。

イタリアンレストランでの試作の様子

そして、トッピングの主役である「大和丸なす」ですが、初めて実物を見た時はその大きさとずっしりとした重さにびっくりしました。実際に試食してみると想像以上に肉厚で、味も変なクセがなくてとても食べやすかったです。
そんな「大和丸なす」の食感を活かしたピザを作りたいと考えた結果、大きさと切り方にこだわりました。5㎝角の大きめの乱切りにすることで、ボリューム感と鮮やかな紫色を見せるようにして、さらに一度素揚げにすることでジューシーな肉厚さを味わえるように工夫しました。その他のトッピングに関しても、子どもでも食べやすいように苦みが少なく、色鮮やかな彩りのある野菜やシーフードを多く使用し、全体的にもボリューム感のある『オーロラソース使用!ごろっと大和丸なすと魚介の彩りピッツァ』が仕上がりました。

『オーロラソース使用!ごろっと大和丸なすと魚介の彩りピッツァ』とレシピ

何より私たちは、まだ1回生で食品開発の経験はなくゼロからスタートだったので、開発にあたって大事なことは何だろうとたくさん悩みました。
その中で「誰をターゲットに」、「何を食べて」、「何を味わってほしいか」と意識した結果、イベント初日に購入した方が「美味しかったので、もう一回買いにきました」と翌日にもう一度来てくださったり、メールで美味しかったと連絡をいただけたりした時は、嬉しかったです。あと、自分の家族も来てくれたのですが、食に厳しい両親や祖父も満足してくれたようで、やり切った感がとてもありましたね。
審査では惜しくも2位となってしまいましたが、実際に商品を作って販売する機会がないと知り得ないことや、多くの方に自分たちが開発した商品を食べてもらえる機会をいただけたことは、ピザバトルの大きな魅力であり参加して良かったと思っています。辛いことも多かったですが、楽しく成長できる機会にもなり、非常にありがたい時間でした。

試食販売会での様子

3.奈良女子大学 
「大和丸なす」のインパクトを活かした「和のピザ」はみんな大好きなたらこソースが決め手!

奈良女子大学の髙橋 美月氏に、「ヘルスチーム菜良」の活動内容や2024年度のピザバトルについてお聞きしました。

奈良女子大学 ヘルスチーム菜良
髙橋 美月氏

【インタビュー内容】
奈良女子大学のヘルスチーム菜良には、現在3回生が2名、2回生が6名、1回生が6名所属していて、計14人で活動を行っています。
学内での主な活動は、学園祭でのブース出展や、学内のカフェにおいてレシピを考案して販売したり、学外の活動では、近畿農政局のお弁当コンクールに参加したり、地域の子ども食堂で食育イベントを開催させていただいたりしています。

ピザバトルに関しては、リーダーとなる3回生の他に2回生が中心となって取組を進めていて、当日の試食販売には1回生も参加しました。
レシピの考案としてまずは、一人一案出し合うところから始め、そこから多数決でどんなピザにするか決めて、試作を重ねていきました。
案出しは、去年の1月くらいから始めたので、長期にわたって検討と試作を繰り返していましたね。
そんな試行錯誤して開発した今年度は、こだわりのたらこソースに「大和丸なす」、魚介の旨味と大葉のさっぱり感が味わえる『大葉香る大和丸なすとたらこソースの魚介ピザ』というピザで挑みました。

『大葉香る大和丸なすとたらこソースの魚介ピザ』とレシピ

「大和丸なす」の特徴的な肉厚な身の部分にたらこソースで魚介のうまみをしっかりと含ませ、美味しさが引き立つように仕上げ、ソースを重く感じさせないように、大葉でさっぱりとした香りを添えています。
たらこソースは、大人から子どもまで楽しめて美味しく味わえるようにと、具材と調味料、そしてその分量の試作を何回も重ねてきました。まずは、たらこのパスタソース単体を使うことから始め、いろいろなパスタソースを調べて、どのような食材を足していったらいいか検討しました。
普通のパスタソースだとオリジナル感がないので、そこからハラコや明太子、昆布茶、豆板醤、マヨネーズ、焼きたらこを入れるなど、ありとあらゆる試作を繰り返した結果、とても大変でしたが納得できるソースに仕上がりました。
私自身は、ピザバトルに参加して初めて「大和丸なす」について知っていたのですが、実際に試食してみると想像以上に肉質が緻密で、ジューシーで、甘く、柔らかかったです。
肉質が緻密なこともあるのか、油を吸いすぎないのが特徴かなと感じています。
私たちのレシピでも油を使用して炒める工程がありますが、そこでも油を吸いすぎることなく、「大和丸なす」の食感や香りをしっかり残すことができました。
ナスがメインのピザですから、炒める工程を挟んでも崩れたり、縮んだりしてほしくない点では、素材にも助けられましたね。

試食販売では、実際食べていただいたお客様から「ナスとたらこって相性が良くて、美味しいね」と言っていただけたことが、とても嬉しかったです。

試食会と販売会の様子

私は奈良県の大和野菜の知名度アップに貢献したいと思ってピザバトルに参加しました。
大学での勉強を活かしながら、プロであるイオンさんや食品関係者の方に広くたくさんの意見をいただき、自分たちが求める理想の味などを追求していくことは本当に大変でした。
大量生産するにあたり材料や食材の調理まで考え直す必要も出てきて、食品として販売するためにはこんなにも準備が大変なのだと知ることができ、貴重な経験になったと感じています。
ピザバトルのおかげで、地元には伝統野菜がたくさんあるということを知り、そういったまだまだ知られていない食材に目を向けるきっかけになったので、今後もこの経験を将来に活かしていければと思っています。

4.近畿大学 
ネーミングセンスとお花をモチーフにしたトッピングが抜群!華麗なピザ

近畿大学の濵井 桃香氏に、「ヘルスチーム菜良」の活動内容や2024年度のピザバトルについてお聞きしました。

近畿大学 ヘルスチーム菜良
濵井 桃香氏

【インタビュー内容】
近畿大学のヘルスチーム菜良には、40名ほどのメンバーが在籍しており、大学の付属幼稚園生を招いたお芋ほりや、公民館で子どもたちへ向けた食育活動などを中心に取組んでいます。

今回のピザバトルには、6名で参加しました。私が参加した理由は、先輩方の話を聞いていて楽しそうだなと思ったことです。ですが、実際に取組んでみると時間的な制約があったり、長期間にわたる取組での大変さもあったり、正直とても辛くて、当初のとにかく楽しそうという気持ちからのギャップがありました。特に、イオンさんに提出する企画書には苦戦した記憶があります。
そんな大変なこともたくさんありましたが、近畿大学では、『タマゴたっぷり華麗(カレー)ピザ』という商品を開発しました。
開発にあたりまずは、「大和丸なす」に合う味付けは何か?を検討するところからスタートしました。
メンバー6人で一人一案ずつ出し、絞り込んで「カレー」という味付けにたどり着きました。
最初はカレーソースをベースにしたピザにトッピングとしてナスをのせたのですが、食感や味にまとまりがなく、イマイチでした。
そこで、ナスは火を入れるととろみがでるので、その特徴を活かしたカレーソースはどうかと思いついたのです。
そして、ベースはナスとひき肉と決まり、トッピングにも悩みましたが、カレーとなすでは色味がないので、彩りとボリュームを出したいとカラフルな野菜と卵をトッピングしました。
卵の輪切りは厚みが出るうえ、お花みたいにも見えるので、華やかさが出ます。
プラスアルファとして、味のベースがカレーであることとネーミングにも華やかさを出そう!ということで、このカレーと華麗をかけたキャッチーな名前を採用しました。

『タマゴたっぷり華麗(カレー)ピザ』とレシピ

先ほど、企画書に苦戦したとお話しましたが、中でも一番大変だったのは、限られた予算の中で、華やかさと一体感のあるピザを作ることでした。
イオンさんで行われた4大学合同の試食会では、元々カレー粉で味付けをするレシピだったのですが、実際試作するとスープカレーのようになってしまうという課題がありました。その際に、イオンさんから「カレールーには小麦粉が入っていてまとまりがよくなるから、カレールーを使ってみたら」とアドバイスをいただいたんです。予算を抑えながら、とろみまでつけられるということで、貴重な意見をいただいただけでなく、商品開発の奥深さを改めて知ることができ、予算内に商品を作っていく大変さも経験することができました。
やはり、予算や衛生面での厳しい制約がある中で、自分たちが開発した商品を取り扱っていただけることは、非常にありがたく思っています。
試食販売当日は、大学の友人が「頑張ってたから、買いに来たよ!」と声をかけてくれたり、ナス嫌いな子どもも美味しく食べてくれたりして、嬉しかったです。
カレーソースに混ぜたことで見た目にはあまりナスが見えないので、ナス嫌いな子どもの克服につながるのではないかな?と、サークルで取組んでいる食育にもつながるヒントを得られた気がしています。
今年度のピザバトルでは、販促物にも力を入れました。昨年度に参加した先輩方の販促物を参考に、より美味しそうに見せるために立体感のある販促物を約50時間かけて制作しました。みんなの予定が合わずに個別で少しずつ進めていたのですが、最後にはみんなの頑張りがひとつの作品になり、審査員の方からも評価が高く、イオン賞を受賞することができたのが嬉しかったです。

「大和丸なす」は、ピザバトルに参加して初めて知ったのですが、食べてみると厚みがあるので、食感がしっかりしていて、歯ごたえもあり美味しくて、このような伝統野菜があることに驚きました。
イオン賞の賞品として、「大和丸なす」をたくさんいただいたのですが、メンバーそれぞれのお家で美味しくいただきました。私の家ではごま油で揚げて、醬油、酢と生姜で揚げびたしにして食べました。やはり「大和丸なす」は、普通のナスと違って、揚げても形が残ったままでしたので、崩れずに食感を楽しみながら美味しく食べることができて、家族からも好評でした。
私は、ピザバトルに参加したからこそ「大和丸なす」を知ることができたので、他の学科の人たちにも共有することができたら、様々な面白いレシピが出てくるのではないかと考えていて、今後の「大和丸なす」の可能性も感じることができました。

審査員から高評価だった販促物とイオン賞を受賞した近畿大学の参加メンバー

今後のヘルスチーム菜良の展開

ヘルスチーム菜良における今後の展望について、各大学の皆さんにお聞きしました。

【インタビュー内容】
帝塚山大学
サークル活動を通して様々な食材と触れる機会がありますが、今回ピザバトルに参加することで大和野菜という伝統野菜に触れて、他にも「ヤマトポーク」というブランド豚など、奈良県には美味しい食材がたくさんあることを知り、勉強になりました。
これからは地域ともっと交流したいと思っていて、人とたくさん関わることができる子ども食堂や食育ボランティア活動に力を入れて、奈良県の美味しい食べ物を子どもたちに伝えていきたいです。
そして、色々な場でヘルスチーム菜良での活動をはじめ、食と健康の関わりや奈良の伝統野菜などを紹介して「買ってみよう!」と思ってもらえるような取組を続けていければと思っています。

畿央大学
こういった取組に参加したことで、地元の野菜を使った料理や商品が作られるというのは、生産者さんだけでなく地元の人も嬉しいんだなということを感じました。
これからも、「大和丸なす」だけじゃなく、奈良には美味しい野菜がいっぱいあるので、その野菜たちを使って他の地域でも地産地消を考えた食品開発に取組みたいと思っています。そして、その野菜が地元地域だけに留まらず、他のエリアにも浸透していったら嬉しいです。
ピザバトルに関しては、イオンさんだからこその細かなフィードバックをいただき、大きな学びを得たと感じています。
今年度は、「大和丸なす」を大きく使っている点を評価いただいたので、来年度は「大和丸なす」をもっと主役にできるようなピザを作っていけるように、ピザバトルにもっと力を入れていきたいです。そして、100人以上いる大きなサークルとして、より多くの学生がピザバトルに興味を持って参加してもらえるように工夫していきたいですね。

奈良女子大学
日本の伝統的な食文化なども残していくためにも、ヘルスチーム菜良の活動を通して、より多くの人に奈良県をはじめとした各地の食文化、健康的な食生活に興味を持ってもらえる活動を進めていきたいと思っています。
今後、健康志向はより高まっていくと思うので、野菜を使ったヘルシー志向の商品開発などを積極的に取組んでいきたいです。

近畿大学
これからも伝統野菜をたくさんの人に知ってもらえるように、食育はもちろんですが、食べ物の良さ、文化をたくさんの人に伝えていけるような商品開発に取組んでいきたいと思っています。
現在は、食育の一環として、子どもたちとお菓子を一緒に作ったりすることもあるので、そうした活動にも取り入れて、子どもたちに知ってもらう機会を作ることで、将来につながるように広めていきたいですね。
そして、他の府県からもお客様がきてくれる学園祭などでも、アピールしていきたいです。また、他の大学のヘルスチーム菜良とも協力して奈良の伝統野菜をもっと広めていきたいと考えています。