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食の楽しさや地元食材の美味しさを伝えるZ世代の取組

これまでの様々な食に対する体験から、食の楽しさ、生産者の素晴らしさを知ったことをきっかけに、岡山県美作市古町へ移住した村上宙氏。

移住後、地元の有機食材にこだわった飲食店『OHAYO』を始められ、地域住民、生産者、地域外の観光客等との交流の中心地として、食と地域の良さを発信しながら、更なる発展的な地域づくりに取組まれています。

今回は、NIPPON FOOD SHIFT FES.兵庫にも登壇いただいたZ世代の村上宙氏の取組についてご紹介いたします。


食をきっかけに興味を持った農業

外国語大学に通いながら、次第に食や農に興味を持ち、飲食店を始めるに至った村上宙氏に、これまでの食や農業との接点、飲食事業を始めたきっかけなどについてお聞きしました。

村上 宙氏

【村上氏 インタビュー内容】
幼い時から父が飲食店を営んでおり、高校生の頃にはお店で飲食について教えてもらいながら手伝いをしてました。料理やお客様とのコミュニケーションを楽しみながら、当時から「食」に近い距離におりましたが、まだ生産者へ興味を持つまでには至っておりませんでした。

海外に興味があったことから、大学では英語を専攻しており、国際交流もできるインターン募集を見つけて、広島県梶谷農園のハーブ園へ行くことにしました。そこで、肥料まき、種植え、収穫など野菜づくりの基本を教えて頂き、いままで使っていた野菜について全く知らなかったことに衝撃を受けました。梶谷さんからは海外の文化、食の話など様々な分野のお話をきくことができ、また興味があることにはチャレンジした方が良いとアドバイスを頂き、生産者や農地などをより勉強したいと考えました。その後、1年間大学を休学し、様々な農家さんで勉強させてもらう機会を経て、大学を卒業した昨年の春に岡山へ移住し、飲食店を始めるに至りました。

収穫したみやまカブ

自然や農業体験から学んだ在来種の素晴らしさ

これまで携わってきた食や農について、特徴的な取組や印象に残った事についてお聞きしました。

1.全国の生産者のもとでの住み込み研修

【村上氏 インタビュー内容】
全国の生産者のところへ行き、研修をしてきた経験通して、野菜づくりの基本や難しさを実感でき、生産地や生産者の考え方の重要性や、農家さんの顔が見える野菜を使いたいと強く思うようになりました。料理を食べてもらう方にも、美味しさだけでなく、背景にあるストーリーを感じてもらえた方が、野菜にも興味を持ってもらえると思うため、非常に大切にしています。

ハーブや在来種の野菜を栽培している千葉県鴨川の苗目さんの農園での研修は、私の美作市への移住のきっかけとなりました。近くの山々は、木が多いために環境が悪くなっていましたが、農園の方々が木こりの役目も果たしており、自然環境の維持にも貢献していました。また、切った木を燃料にしたり、自然の山菜を採ったり、イノシシやシカの猟など、都会の生活からはかけ離れた体験をさせて頂き、とても刺激になりました。便利さから離れて自分の手で一からつくることの楽しさを覚え、自分の暮らしを見直し、岡山への移住を決断するきっかけとなりました。

他にも、長崎のオーガニック商品の直売所では、その地域の特徴を表現することをテーマに、在来種の野菜をメインで販売していました。普段目にしない紫色の大根などを見ながら、生産者の畑で収穫等も体験し、普段食べている食の意味は、その土地に由来していることを実感する経験をしました。

様々な種類のハーブ

2. 岡山県美作市での暮らし、『OHAYO』の取組

【村上氏 インタビュー内容】
美作市大原に移住された先輩の家に遊びに行った際に、とても気持ちの良い地域だと感じ、近くに美味しい野菜をつくる生産者の方々もいらっしゃること、様々な縁とタイミングが合ったため、移住をしました。冬場は寒く厳しいこともありますが、この地域での生活を楽しんでいます。過去に、長崎で小さなスペースを間借りして、飲食事業をやっていたこともありますが、本格的な飲食店はここが初めてです。初めから事業が軌道に乗るとは思わず、まずは自分のできることから始めて、お客様に喜んでもらえることを継続できればというスタンスで始めたので、特にプレッシャーは感じていません。冬の間は雪が積もり来店も難しくなるため、4月中旬から再オープンに向けて準備をしている最中です。また、自分の勉強も継続したいため、冬の期間は海外等へ行って様々なインプットをする期間に充てたいと思っています。

移住先での季節の風景
夏の梅干しづくり(左)と冬に実るフユイチゴ(右)

3. 国産食材100%カレー

【村上氏 インタビュー内容】
ニッポンフードシフトの兵庫イベントで、国産食材100%のカレーに挑戦しました。スパイスは国産に限らないと言われていましたが、沖縄でスパイスを生産されている方がいるということを聞いたことがあり、一度使ってみたいと思っていたことから、スパイスも国産を使いました。国産のスパイスは収穫してから時間が経っていないため、インドなど海外のスパイスと比較して味は少し優しいですが、香りが非常にフレッシュです。マルシェで提供した国産カレーでも、スパイスも含めて国産でできることに驚かれる方が多かったです。今回はカレー用スパイスとして使いましたが、今後はサラダなど様々な使い方にもチャレンジしたいです。

その他、在来種の野菜も使いましたが、形は均一ではなく、切り方や盛り付け方などの工夫は必要になりますが、持っている味は深みがありしっかりしています。その味の深みを多くの方に味わってもらいたく、お店でもできるだけ在来種を使っています。

イベントでは、ステージで共演した「堕天使かっきー」さんのカレーづくりに対する自由さに驚き、ミキサーでカレーやソースをつくる方法や、魚介やお肉などの組み合わせはぜひ参考にしたいと思いました。マルシェで出会った高知の食材を扱ったお店の「海藻のフリカケ」は、環境に対して問題意識を持ちながらつくられた商品であり、その背景・ストーリーに強い印象を受け、一度高知に行きたいと思う商品でした。沢山の方々が様々な想いや考え方で食や農に携わっているのを間近で感じることができ、私自身の刺激になり、大変良い経験になっています。

イベントの様子

今後の『OHAYO』の展開

今後の『OHAYO』の展望や、自身の目標についてお聞きしました。

裏庭の畑で作業する様子

【村上氏 インタビュー内容】
今後は今の場所で、農業を始めたいと思っています。今年は古民家で味噌や漬物を作りましたが、今後は飲食店という領域を超えて、来た方がワークショップ形式で食や農の体験をできるような場所にしていきたいと考えています。例えば、子供と一緒に畑で作った野菜を収穫したり、料理をすることで、子供達の食育に繋がるようなイベント活動もしていきたいです。自分のやりたい事を大事にしつつ、地元の方々や観光で来られる方々も含めて、満足してもらえるような商品・サービスを企画していきたいです。

また、元々あった海外への興味も生かし、美作市で生かせるような勉強を継続していきたいです。今はニュージーランドに非常に興味があり、一度勉強に行ってみたいです。自然が豊かで、子供の個性の尊重を重視したシュタイナー教育があるので、親和性が高い美作市で生かせるスタイルを見いだしたいと考えています。

美作市には様々な可能性が広がっていると感じており、自分自身の興味を掛け合わせて、これからも地域情報の交流拠点となるような場所をつくっていきたいです。


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